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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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【過去への扉】


 復元されたソルシアの探索は、想像以上に広大だった。



 都市部だけでも始まりの町の三倍の面積がある。さらに郊外には平原、湖畔、山岳地帯、地下迷宮が広がっている。裏世界の踏破率は──まだ8%。



「トワ。ソルシア、おっきい」

「ああ。表の世界と同じくらいある。──当分、歩くものに困らない」

「うれしい! セレスのおうち、ひろかったんだ」



 セレスは故郷の復元に嬉しそうにしていた。建物を覗き込んで、NPCに挨拶して、庭園の花を眺める。冬夜は急かさず、セレスのペースに合わせて歩いていた。



 都市の中央広場に、巨大な時計塔がある。復元されたばかりで、針はまだ動いていない。

 時計塔の入口に──石碑。



【「時間遡行の門」──この門をくぐると、ソルシア王国が栄えていた時代に遡ることができます】

【注意:過去の世界で行った行動は、現在の裏世界に影響を与える場合があります】




 時間遡行。過去のソルシアに行ける。




「トワ。むかしのソルシア、いける?」

「行けるらしい。──行ってみるか」

「いく! セレス、むかしのソルシア、みたい!」




 門をくぐった。

 光に包まれ──景色が変わった。




    ◇




 景色が違った。

 復元されたソルシアも美しかったが、過去のソルシアは格が違った。



 白い石造りの都市が。まるで黄金のように輝いている。噴水からは清水が溢れて、庭園には見たことのない花が咲き乱れている。街路には──人がいた。



 大勢の人。旅人たちだ。



 全員がフードを被り、杖を持ち、地図を広げながら歩いている。子どもも老人もいる。ソルシアは──旅人の王国だった。全国民が、旅人。



「すごい……みんな、たびびと」


 セレスが目を見開いている中、NPCたちが冬夜に声をかけてきた。


「おや、見慣れない旅人だね。どこから来たんだい?」

「未来の旅人か? 時間遡行の門を使ったんだね。──歓迎するよ!」



 過去のソルシアのNPCは、冬夜が「未来から来た」ことを認識していた。

 あるいは太古の昔から、【時間遡行の門】があったのかもしれない。



「未来の旅人さん。今日はちょうどいい日だよ。──【精霊祭】だ」



【精霊祭】―― ソルシア王国の祝祭。守護精霊たちを讃える祭りらしい。



 広場に向かうと、巨大な祭壇が設置されていた。そしてその周囲に、精霊たちが集まっていた。

 セレスと同じような小さな妖精がいるが、種類は違う。



 赤い髪で炎を纏った女の子。青い髪で水滴を垂らしている男の子。緑の髪で蔦を絡ませた子。金色の髪で雷をバチバチさせている子。



 火の精霊。水の精霊。地の精霊。雷の精霊。



 そして――銀色の髪で、鹿の角を持つ女の子。



 セレスの、過去の姿。



「あ。セレスだ。むかしのセレス」



 過去のセレスは──今のセレスよりも少し大きかった。手のひらサイズではなく、腕くらいのサイズ。そして片言ではなく、流暢に喋っていた。



「ようこそ、精霊祭へ! 今年も、皆さんの旅路を祝福しますね!」



 今のセレスが、過去のセレスを見て固まった。



「……セレスだ。むかしのセレス。おっきい。あと、しゃべるの、じょうず」

「……過去のお前は、だいぶ雰囲気が違うな」

「むかしのセレス、おとなっぽい。いまのセレスは、ちっちゃくなっちゃった」



 ソルシアが滅びた時に力を失い、小さくなったのだろう。片言になったのも、力の喪失によるものかもしれない。



「でも。いまのセレスのほうが、トワにすかれてる。たぶん」

「どちらのセレスでも、お前はお前だ」

「……えへへ」




    ◇




 精霊祭を見学しながら、過去のソルシアを歩いた。



 祭壇の前で、精霊たちが旅人たちに「祝福」を授けていた。火の精霊が旅人の武器に炎を纏わせる。水の精霊が旅人の傷を癒す。──精霊獣との一時契約だ。




【精霊獣の祝福システムが解放されました】

【過去のソルシアで精霊と交流すると、『精霊の祝福』を受けることができます】

【祝福の効果:一定時間、精霊の属性を武器やスキルに付与できます】




 火の精霊に近づいた。赤い髪の女の子──セレスと同じくらいの外見年齢に見える。



「おや! 銀月のセレスティアの契約者? ──珍しいね。セレスティアの祝福を受けてる旅人が、私のところに来るなんて」

「火の祝福を試してみたい」

「いいよ! はい、これ!」



 火の精霊が冬夜の手に触れた。手のひらから──炎が生まれた。




【火精霊の祝福を受けました:30分間、全武器に火属性が付与されます】




【果ての道標】を振った。



 剣の形──刃が炎に包まれている。

 弓の形──矢が火矢になる。

 槍──炎の穂先。

 杖──火球の魔法。



「すごい……武器が燃えてる!」



 過去のソルシアのモンスター──【氷纏いの巨兵 Lv90】が広場の外に出現した。

 精霊祭のイベントモンスターらしい。



 氷属性のモンスターに、火属性の武器。──相性が最高だ。



 三連斬。炎が氷を溶かし、巨兵の装甲が崩壊する。

 通常なら硬い氷の装甲が──火属性で突破できた。



 38,000──38,000──38,000。通常のダメージの三倍近い。属性相性のボーナスだ。




「おお!」

「すごい、あの旅人! 一撃で巨兵の装甲を!」



 過去のNPCたちが歓声を上げている。

 いつもの如く、セレスが肩の上で得意そうにしていた。



「トワ、つよい。むかしのソルシアでも、いちばんつよい」

「属性相性のおかげだ。俺の実力じゃない」

「でも、かっこいい」

「それは……まあ、ありがとう」



 火の精霊が飛んできた。



「すごい力を持っているね! ねえ、あなたの名前は?」

「トワ」

「トワ、いい名前! ──ねえ、今度は水のイグアも試してみなよ。湖の方にいるからさ!」



 水の精霊イグア。地の精霊テラ。雷の精霊ライト。──四人の精霊と祝福を交わせる。



 今までのトワの戦闘は「物理と無属性」が基本だった。でも精霊の祝福があれば──属性戦闘ができる。火、水、地、雷。状況に応じて属性を切り替える。【果ての道標】の武器切り替え+属性切り替え──変数が爆発的に増える。



 新しい「戦い方」が増えた。


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