【記憶のかけら】
裏世界の探索を続けて三日目。
星図を三枚集めた。地形変化の予測精度が上がり、五分間のうち「安定しているエリア」が読めるようになってきた。
安定エリアを渡り歩きながら、ソルシア王国の遺跡を調べていく。
崩れた宮殿の奥で──新しい発見があった。
【ソルシアの記憶断片を入手しました】
アイテム名:【記憶断片】
種別:キーアイテム。
効果:集めると、ソルシア王国の歴史が再生される。裏世界の安定化にも寄与する。
「記憶断片を集めると、裏世界が安定する……?」
「壊れかけの世界を修復できるかもしれない」
セレスが断片を見つめた。
「これ……ソルシアの、おもいで。みんなの、おもいで」
記憶断片に触れると──映像が流れた。
ソルシア王国の風景。色鮮やかな街並み。旅人たちが行き交う市場。笑い声。音楽。──かつて栄えた文明の、幸福な記憶。
「きれい……」タマキがじっと見つめている。
「これが、ソルシアだったんですね……」ハルは目を潤ませていた。
セレスは、泣いていた。声を出さずに、透明な涙を流していた。
「セレス、おぼえてる。これ、みんな、わらってた。たびびとが、いっぱい、あるいてて。──たのしかった」
冬夜はセレスの頭を撫でた。
セレスは冬夜の指を両手で握った。いつまでもずっと、離さなかった。
◇
記憶断片を集めるたびに、裏世界の地形変化が穏やかになっていった。五分だったサイクルが十分に。十分が二十分に。
安定すると──裏世界でしか見られない景色が現れた。
セピア色だった空に、色が戻り始めた。壁が修復され、花が咲き、水が流れる。ソルシア王国が──少しずつ蘇っている。
「トワ。ソルシア、なおってきてる」
「ああ。記憶を集めれば、この世界は元に戻るかもしれない」
「もとにもどったら──ソルシアに、またひとがくる?」
「来ると思う。裏世界が安定すれば、通常のエリアとして実装されるかもしれない」
「じゃあ──ソルシア、またにぎやかになる」
「ああ。──お前の故郷が、また旅人で溢れる」
セレスの角が──ぽわっと光った。嬉しさと、懐かしさと、少しの寂しさが混ざった光。
「セレス、それ、いちばんうれしい」
その時、ノクスの声がどこからか聞こえた。
「──記憶を集めているのか。旅人」
「ああ。お前から忠告をもらったが──忘れられるべき場所なんてない」
「……そうか。ならば──もう一つだけ教えてやる。この世界の中心に、【最後の記憶】がある。それを取り戻せば、ソルシアは完全に蘇る。だが……」
「だが?」
「【最後の記憶】の前には、私がいる。【記憶の番人】としてな」
ノクスとの戦いが──待っている。
「お前が本当にこの世界を歩く価値のある旅人なら──私の前に来い。この世全ての記憶を持って」
ノクスの声が消えた。
新しい目標が見えた。ソルシアの記憶断片を全て集め、裏世界を完全に修復し、ノクスの前に立つ。
「行くぞ」
「うん!」セレスが叫んだ。
「行きます!」ハルが拳を握った。
「行こう」タマキが微笑んだ。
「付き合おう」ゼクスが肩をすくめた。
「もちろん!」レナが跳ねた。
十人の仲間と、一人の妖精と。
壊れかけた世界を──歩いて、修復して、蘇らせる。




