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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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旅人の砦


 密林の探索は三日間続いた。



 その間に〈翠蛇の牙〉は二度、旅人たちに襲いかかってきた。




 一度目は十二人での奇襲。しかし、トワの【見聞録】が接近を即座に感知し、カインとゼクスが闇討ちで先手を取り、ソラの空中部隊が上空から制圧射撃を加え──結果的に、三分で壊滅した。




 二度目は二十人での正面突撃。アストレアの五人のタンクが旅人たちの前に壁を作って、レナの剣撃とリゼの魔法で敵勢を粉砕した。トワは、一歩も動かなかった。仲間だけで片付いた。




〈翠蛇の牙〉のギルドマスター──「ヴェノム」というLv88の盗賊が、フォーラムに怒りの投稿をした。




【ヴェノム】翡翠の密林は俺たちの縄張りだ。トワだろうが誰だろうが、邪魔するやつは全員潰す。




 フォーラムの反応は冷淡だった。




 ──「初心者PKギルドがイキってて草」

 ──「トワに5秒で8人倒されたギルドが何言ってんだ」

 ──「ゼクスとアストレアとソラとレナが護衛してるところに突っ込むのは自殺行為だろ」

 ──「BCOのオールスターチームじゃねえか」

 ──「初心者狩りしかできないギルドが、何をイキってるの?」

 ──「ヴェノムさん、自分より弱い相手にしか勝てないんでしょ」

 ──「みんな辛辣で草」




 さらに、旅人の集いのメンバーがフォーラムに投稿した。




【感謝】トワさんと護衛チームのおかげで安全に密林を探索できました【旅人の集い】




 ──「護衛してくれるの最高だった」

 ──「セレスちゃんが可愛すぎて、探索に集中できなかった」

 ──「トワさんが旅人の手記を分けてくれた。神過ぎるだろ」

 ──「〈深紅の牙〉のレナさんが旅人を全員助けてくれた」

 ──「ゼクスさんが怖かった(褒め言葉)」

 ──「アストレアさんの盾が頼もしすぎた」

 ──「ソラさんの空中パトロールで安心感が段違いだった」

 ──「これ、BCOの最強プレイヤー全員集合じゃん」

 ──「トワの人望が半端ない」




 冬夜はフォーラムを閉じた。人望という言葉が何度も出てくるが、自分ではまだよくわからない。




    ◇




 密林の探索から、更に三日後の夜。



 密林の中央部に巨大な古木があり、その根元に洞窟があった。トワが【見聞録】で発見した安全地帯だ。



 ここを「旅人の砦」として仮拠点にした。護衛チームと旅人たちが集まって、焚き火の周りに座っている。



 トワは砦の隅で、マーサのレシピで料理を作っていた。密林の素材で新しい料理が作れないか試している。




「トワさん、何作ってるんですか?」



 旅人の集いのメンバーの一人──名前は「ユキ」。Lv1の旅人の女性プレイヤー。旅人歴二ヶ月。トワに憧れて旅人で始めたらしい。



「密林の果物を使ったジュース。効果は不明だが、たぶん何かバフがつく」

「料理もできるんですか!? すごい……。あの、私にも教えてもらえませんか?」

「料理スキルは霧底の森のNPCから習得できる。──だが、そこに行くにはまず霧底の森を踏破しなければならない」

「うぅ、まだ銀月の草原も全部歩けてないです……」

「焦るな。二年かけた俺が言うのだから、間違いない」

「はい……!」



 セレスが料理の鍋の縁にちょこんと座って、中身を覗き込んでいた。



「トワ、これおいしい?」

「まだ完成してないぞ」

「あじみ、あじみ」

「味見はするな。どうせ、気づいたら全部なくなってるパターンだろ」

「ちょっとだけ!」

「『ちょっとだけ』? 前は鍋の三分の一を飲んだのにか?」

「……ちょっとだったもん。ほんとに、ちょっと」

「やれやれ……仕方ないな」



 レナが焚き火の向こうから声をかけてきた。



「トワさん! 密林のフィールドボス、明日挑む?」

「ああ、密林の奥にいるはずだ。倒せば世界地図の欠片が出る可能性がある」

「うちのメンバーも参加していい?」

「もちろんだが、旅人たちは安全な場所で待機させろ。ボス戦に巻き込むわけにはいかない」



 ユキも手を挙げた。



「あの! 私たちも何かできませんか? 戦闘は無理ですけど……」

「何か……か。それなら、料理を作ってくれ。ボス戦の前に全員にバフをかけたい。密林の素材で作れる料理のレシピを教える」

「はい! やります!」




 旅人の集いのメンバー四十人が、料理係として働き始めた。密林の果物を集め、トワが教えたレシピで料理を作る。



 四十人の旅人が料理を作る光景は、なかなか壮観だった。Lv1の初期装備の旅人たちが、鍋を手に真剣に料理している。




「焦がした!」

「火加減! 火加減弱くして!」

「え、これ塩じゃないの?」

「それ砂だよ!」

「どうやったら間違えるんだ、それ?」

「ここまで来ると才能だな」

「だから、早くしないと焦げちゃうって!」

「料理の品質が【最低】!? これ、食ったら死ぬんじゃないか?」

「現実世界でも何らかの健康被害が出そうな色をしているぞ……」

「俺たち、本当に料理作れるんだろうか」



 なかなかにカオスだったが、楽しそうだ。

 セレスは料理の監督をしていた。鍋から鍋へ飛び回り、味見と称して少しずつ食べている。




「これ、おいしい。こっちは、しょっぱい。これは……うん、ダメ」

「セレスちゃんが品質管理してくれてる!」

「妖精の味見係さま!」



 セレスのお腹がまた丸くなっていた。味見しすぎだ。

 トワは焚き火のそばに座って、その光景を見ていた。


 四十人の旅人。護衛の仲間たち。焚き火の明かり。密林の夜。


 一人で歩いていた二年間には、なかった光景だ。


 まあ……悪くない。


 いや、もうその言葉では足りない気がする。




「セレス」

「なにー?」

「楽しいな」



 セレスが鍋の縁から顔を上げた。大きな目がきょとんとして、それからぱあっと光った。



「トワがたのしいっていった! はじめて!」

「……そうか。初めてか」

「はじめて! セレスうれしい! たのしいって、いいことば!」



 セレスがトワの頬に飛んできて、ぎゅっと抱きついた。冬夜は声に出して笑った。


 密林のフィールドボス討伐は、いよいよ明日だ。


 

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