「欠片」
翌週。
ギルド王座決定戦の優勝報酬が配布された。
〈深紅の牙〉全員に称号「王座の戦士」が付与され、限定装備の素材が配られた。そして──
【優勝報酬:未踏エリア「天蓋の遺跡」の先行解放権が付与されました】
【「天蓋の遺跡」は通常解放まで90日間、優勝ギルドメンバーのみがアクセス可能です】
天蓋の遺跡。新エリア。
トワはセレスと一緒に、そのエリアに足を踏み入れた。
セレスは二日間の睡眠で完全に回復していた。目覚めた時の第一声は「おなかへった」で、冬夜は安心した。
天蓋の遺跡は──空にあった。
巨大な岩盤が空中に浮かんで、その上には古代の建造物が並んでいる。岩盤と岩盤を繋ぐ光の橋。目下には雲海が広がっていて、遠くには二つの月が浮かんでいた。
「トワ! そら! そらのうえ!」
セレスが両手を広げてくるくる回っている。角がきらきら輝いている。
【「天蓋の遺跡」に進入しました】
【このエリアはあなたが最初の踏破者です】
空の上の遺跡。雲の上に広がる、忘れられた世界。
──まだ、こんな景色があったのか。
冬夜は立ち尽くした。何千時間もBCOを歩いてきたが、この景色は、初めて見る種類の美しさだった。地上とも、地下とも、森とも砂漠とも……空だ。空の上の、世界だ。
歩き出した。光の橋を渡り、浮遊する岩盤を飛び移り、古代の建造物を探索する。
壁画があった。星砂の廃都と同じ──ソルシア王国の壁画。でも、ここの壁画は星砂のものより古い。王国の創成期を描いているようだが……。
壁画の内容を【見聞録】が翻訳する。
【「ソルシア王国は、空から始まった。最初の旅人は空を歩き、地上を見下ろし、世界の全てを知ろうとした。その旅人は言った──『世界の果てに、答えがある』」】
世界の果てに、答えがある。
ソルシア王国の創始者は旅人だった。空を歩いた旅人。世界の全てを知ろうとした旅人。
──自分と、同じだ。
遺跡の最深部に辿り着いた。巨大な広間。天井が開いていて、空が直接見える。星が近い。
広間の中央に──光る台座。
台座の上に、欠片があった。
【世界地図の欠片(3/7)を入手しました】
三つ目。残り四つ。
セレスが飛んできて、台座の横にちょこんと座った。
「トワ。また、ひとつ」
「ああ。また一歩、近づいた」
「せかいのはて、もうすこし?」
「まだ遠いな、残り四つだ。それに全エリアの踏破率を100%にしないと、最終試練にも入れない」
「じゃあ、あるこう」
「ああ。歩こう」
セレスがトワの肩に飛び乗った。
天蓋の遺跡を見回す。まだこのエリアの踏破率は5%にも満たない。浮遊岩盤はまだ無数にあり、見たことのない建造物が雲の合間に点在している。
歩く場所がある。見たことのない景色がある。集めるべき欠片がある。
トワはセレスを肩に乗せて、天蓋の遺跡を歩き出した。




