前日
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王座決定戦の前日。土曜日。
冬夜は午前中に洗濯を済ませ、昼から蓮と会った。大学近くのファミレス。
「明日だな」
「ああ」
「観戦チケット取ったぞ。コロセウムの最前列」
「おい、まさか来るのか?」
「当たり前だろ。幼馴染が世界大会に出るんだぞ」
「世界大会じゃない。ギルド対抗戦の──」
「同じだよ。BCOの頂点を決める戦いだろ?」
冬夜はコーヒーを啜った。
「……ゼクスが、索敵を封じると言っている」
「聞いた。フォーラムで大騒ぎになってる」
「封じられたら、今までのようには戦えない」
「だろうな。──で、お前はどうすんの?」
「仲間と一緒に戦う」
蓮がハッと目を大きくした。
「……お前が『仲間と一緒に』って言うの、初めて聞いたかも」
「そうか?」
「そうだよ。二年間ソロでやってた男が。……変わったな、お前」
「変わってない。歩いていたら、隣に人がいただけだ」
「それを変わったって言うんだよ」
蓮は感慨深気に、メロンソーダを啜りながら、
「あ、そうだ。宮瀬さんから連絡来たぞ」
「は?」
「明日の観戦チケット、もう一枚取れないかって。お前の試合を見たいんだと」
「宮瀬が? BCOをやっていないのに?」
「お前のこと、応援したいんだろ。──てか、お前まだ気づいてないの?」
「何に」
「……いいよ。自分で気づけ」
冬夜は首を傾げた。蓮はそれ以上何も言わなかった。
宮瀬にメッセージを送った。
冬夜:「蓮から聞いた。観戦に来るのか?」
宮瀬:「え、バレた? 来ちゃダメ?」
冬夜:「ダメじゃないが、これは以前言った、ゲームの中の話だ」
宮瀬:「久坂くんの大事なことだから、見たいの。ダメ?」
冬夜は少し考えた。宮瀬がBCOの中の自分を見る。「トワ」としての自分を。
なんだか気恥ずかしい気もするが……拒む理由は、特に見つからない。
冬夜:「蓮と一緒に来い。チケットは蓮が持っている」
宮瀬:「ありがとう!! 頑張ってね!!」
蓮が向かいでニヤニヤしていた。
「何だその顔は」
「いや、別に」
◇
夜。最後の練習。
コロセウムの練習場に五十人が集まった。明日の準決勝に向けた最終調整。
トワは全員に【旅人の祝宴料理】を配った。在庫は十皿分。明日の本番用に五皿。残りを今夜の練習で使い切る。
練習はスムーズだった。十日間の積み重ねが効いている。索敵なしパターンでも、カインの偵察班が機能し、レナが独立判断で攻撃部隊を動かせるようになっていた。
練習後、レナがトワのところに来た。
「トワさん」
「なんだ」
「明日、私──前より強くなってると思う。トワさんと一緒に戦ってから、色々考えるようになった。敵の動きを見るとか、味方の位置を気にするとか。前は何も考えずに突っ込んでただけだから」
「それは俺のおかげじゃないだろ。お前が、自分で考えた結果だ」
「でもでも、きっかけはトワさんだよ。──明日は、トワさんの力になれるようにする」
「ああ、期待してる」
レナが顔を赤くした。
「え、期待!? トワさんが期待って言った!? みんな聞いた!?」
「聞いた」とカインが後ろから。
「聞きました!」とミコトも。
「……別に珍しいことじゃないだろう」
「珍しいよ! トワさんの辞書に『期待』って言葉があると思わなかった!」
セレスがトワの肩からレナに向かって小さく叫んだ。
「トワは、やさしい! みんな、しらないだけ!」
「セレスちゃん! それ名言!」
トワは黙って歩き出した。明日に備えて、今夜は草原を少しだけ歩いて、早めにログアウトする。
セレスが肩の上で丸くなった。
「トワ。あした、がんばろうね」
「ああ」
「セレス、ぜったい、トワをたすける」
「頼む」
明日──この景色の先にある「まだ見ぬ場所」を手に入れるために、戦う。
トワは一足先にログアウトした。
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