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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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ギルド対抗戦(vs蒼穹の翼)


 ギルド対抗戦の告知を、トワは今一度読み返していた。




 【シーズン最終戦「ギルド王座決定戦」開催のお知らせ】




 ──シーズン上位4ギルドによるトーナメント形式。優勝ギルドには「未踏エリア先行解放権」を付与


 ──先行解放エリアには「世界地図の欠片」が含まれることを確認しています




 冬夜はスマホの画面を見つめた。



 世界地図の欠片。現在2/7。残り五つのうち一つが、ギルド王座決定戦の優勝報酬エリアにある。


 つまり、優勝しなければ欠片が手に入らない。少なくとも、先行解放が終わるまでの長い期間、あの一つには手が届かない。


 歩いて見つけるのではなく、勝ち取らなければならないものがある。


 フォーラムは沸騰していた。




 【速報】王座決定戦の優勝報酬に「世界地図の欠片」──トワが動くぞ】




 ──「これ、トワは絶対出てくるだろ」

 ──「欠片を集めてるのトワだけだからな」

 ──「深紅の牙、現在シーズン三位。あと一つ勝てば上位4に入る」

 ──「だが四位のラインに黒翼騎士団がいる」

 ──「ゼクス vs トワ、ギルド対抗戦で実現するのか……」

 ──「これは本気でやばい戦いになるぞ」




 レナからメッセージ。



 レナ:「トワさん、告知見た? 王座決定戦!」

 トワ:「見た。明日の試合は落とせない」

 レナ:「うん。絶対勝つ」




    ◇




 翌日。ギルド対抗戦、第三戦。



 〈深紅の牙〉vs〈蒼穹の翼〉。



 マップは高低差のあるフィールド。

 崖、塔、浮遊する岩盤。空中戦特化の〈蒼穹の翼〉にとって有利な地形だ。



 〈蒼穹の翼〉のギルドマスターは「ソラ」。Lv90の風魔法使い。飛行スキルを駆使し、空中から制圧射撃を行う「空の女王」と呼ばれるプレイヤーだ。



 試合前、トワはパーティ全員に【旅人の祝宴料理】を配った。



「これ、食べてくれ」



 レナが料理を見て目を丸くした。



「綺麗……! これトワさんが作ったの?」

「ああ。全ステ+10%とCT20%短縮がかかる。三十分持つ」

「CT短縮!? これがあれば突進の回転率が──」



 バルトが腕を組みながらうなずいた。


「大きいな。だが、相手は空中だ。CT短縮があっても空には届かない。──トワ、作戦はあるか」

「一つだけ。敵の指揮官ソラを、地上に引きずり下ろす」

「どうやって?」

「俺が囮になる。ソラは高火力の風魔法で地上を制圧する。つまり、最大の脅威である俺を狙うはずだ。俺が動き回って注意を引いている間に、カインがソラの背後に回れ」



 カインが目を細めた。



「空中にいるやつの背後を取るのは難しいぞ。飛行スキルで逃げられる」

「逃げられない。ソラが俺を狙って詠唱に入った瞬間──風魔法は詠唱中に方向転換ができない。その隙を突け」

「詠唱中の方向転換不可……どうやってわかった?」

「俺の持っているアイテムだ。【砂時計のレンズ】で過去の攻撃パターンを解析できる。ソラの魔法を一発食らえば、次の詠唱パターンが読める」



 一発食らう。HP360のうち、どれだけ削られるかわからない。だが、



「トワが囮で被弾前提って、大丈夫なの?」


 レナが心配そうに言った。


「【旅路の糧食・改】がある。動いている限り回復する。一発なら耐えられる」


 バルトが顎に手をやった。


「リスクはあるが、他に手段がない。──やるか」

「やる」



 ミコトが配信を開始した。




『皆さんこんばんは! ギルド対抗戦、〈深紅の牙〉vs〈蒼穹の翼〉です! 今日の注目は空の女王ソラ選手 vs 地上最強の旅人トワ選手! 空と地の戦いです! 視聴者数──六十万!』




  > きた! 王座決定戦の切符をかけた一戦!

  > 深紅の牙があと一つ勝てばベスト4入り

  > 蒼穹の翼はマジで厄介。空中からの魔法が凶悪

  > トワは空に手が届くのか?




 【ギルド対抗戦 開始 ── 制限時間30:00】




〈蒼穹の翼〉が即座に飛んだ。五十人のうち三十人が飛行スキルや高台ジャンプで空中に展開。弓と魔法の雨が降り注ぐ。


 地上の攻撃部隊が足止めされる。頭上からの射撃を盾で防ぎながら進むしかない。



「上からの射撃がキツい! 盾が持たない!」

「ヒーラー、回復追いつかない!」


 バルトが指示を出す。


「攻撃部隊、無理に進むな! 岩陰に隠れて態勢を立て直せ! ──トワ、頼んだ!」


 トワはフィールドの中央に走り出た。遮蔽物のない、開けた砂地。

 空中から見れば──格好の的だ。


「……あら。旅人が出てきたわ」



 空中のソラがトワを視認した。白い魔法使いのローブが風にはためいている。



「Lv1の旅人。フォーラムで有名な人ね。──でも、空の前では地上の王も無力よ」



 ソラの手に風の魔法が集まる。詠唱開始。空気が渦を巻き、真空の刃が形成されていく。



 ──来る。



 【見聞録】が詠唱パターンを読み取る。だが、飛行中の魔法使いのパターンは地上と違う。射角、風の影響、高度補正──変数が多すぎて、予測精度が低い。




 【予測精度:42%──回避困難】




 42%。普段の戦闘では95%以上の精度で回避してきた。これは──読みきれない。


 それでも、構わない。最初の一発は食らう前提だ。


 ソラの風魔法が放たれた。【エア・スラッシュ】、真空の刃がトワに向かって放出される。



 避けきれない。左腕をかすめた。



 HP360のうち、120が削られた。残り240。──一撃で三分の一。痛い。



 だが【旅路の糧食・改】が回復を始める。走り続ける限り、毎秒HP回復。



 そして──【砂時計のレンズ】が起動した。



 直近3秒間のソラの行動が、巻き戻し再生される。詠唱モーション、手の動き、魔力の流れ、射角──すべてが時間軸に沿ってスローモーションで再現された。




 【解析完了:風魔法の詠唱パターン・射角補正データを取得】

 【次回以降の予測精度:89%】



 ──一発で、ここまで読めた。



 ソラが二発目の詠唱に入った。



 今度は読める。詠唱開始0.8秒後に右手が上がり、1.2秒後に真空の刃が形成され、1.5秒後に射出。射角は仰角35度、風補正で2度右にずれる。



 射出。



 トワは左に二歩。刃がすぐ横の砂地を切り裂いた。完全回避。



「──避けた?」



 ソラの声に驚きが混じった。



「一発目は当たったのに、二発目を完全に回避している……? なぜ?」



 三発目。四発目。すべて回避。トワがフィールドの中央を走り回り、ソラの魔法を全て避けながら注意を引きつけ続ける。



 ソラのフラストレーションが溜まっているのが見える。最大火力の魔法が、一人の旅人に当たらない。



「──もういい。こうなったら、接近して叩くまでよ!」


 ソラが高度を下げた。地上五メートルまで降下し、至近距離から高密度の風魔法を叩き込もうとする。



 ──詠唱に入った。接近しての大魔法。詠唱中は方向転換ができない。



 その瞬間──影が動いた。



 カインが、塔の屋上からソラの背後に飛んだ。空中で短剣を抜き、ソラの背中に──



「くっ──!」



 ソラが被弾。詠唱中断。飛行が乱れ、高度が落ちる。



 落ちてきたソラに向かって、トワが弓を構えた。



 必中の精密射撃。空中で体勢を崩したソラに、三連射が突き刺さる。




 4,800──4,800──4,800。




 ソラが地面に叩きつけられた。



「嘘──この私が、落とされた──!?」



 そこへレナの攻撃部隊が殺到する。指揮官を失った空中部隊は統率を失い、一人、また一人と地上に降ろされていく。



 だが〈蒼穹の翼〉は粘った。残った空中部隊が旗の周囲に集結し、防空陣形を敷く。上空からの射撃で地上部隊を寄せ付けない。



 時間が経つ。15分。20分。旗に近づけない。



 レナが悲鳴を上げた。



「上からの射撃が厚すぎる! 近づけない!」



 バルトも焦りを隠せない。



「時間切れだけは避けたい。時間切れは残HP判定になる──空中で被弾が少ない敵が有利だ」



 トワはフィールドを見回した。旗の上空に敵が密集している。地上からでは射線が通らない。



 ──上から行けないなら、下からはどうだ。



 フィールドの地形を【見聞録】で再確認した。旗の設置場所は丘の上。丘の内部に──洞窟がある。小さな入口が丘の裏側にあり、マップにも表示されていない自然洞窟だ。



 トワは旅人として、地形の隅々まで見ている。全エリア踏破率を上げるために、こういう小さな洞窟も全部歩いた。



 トワ:「バルト。丘の裏側に洞窟がある。丘の内部を通って、旗の真下に出られる。空中からは見えない」

「……マップに洞窟なんて表示されていないぞ!?」

 表示されていないが、あるんだ。【見聞録】で確認済みだ」


 バルトが一瞬黙り、それからにやりと意味深長な笑みを浮かべた。


「お前、このマップも隅々まで歩いてたのか」

「地図は全部埋める主義だ」

「分かった……信じよう。レナ、少数精鋭で洞窟ルートだ。トワと一緒に行け。残りは陽動で空中部隊の注意を引きつけろ!」



 トワ、レナ、カイン、ミコトの四人が丘の裏に回り込んだ。

 入口は草に隠れた小さな穴だった。一人ずつ屈んで入る。セレスがトワのフードの中に潜り込んだ。



「トワ。ここ、くらいせまい」

「少しくらい我慢しろ」

「む……セレス、がまんする」

「いい子だ」



 洞窟は狭く暗いが、三十メートルほどで上に抜ける。地面を掘るような形で、丘の頂上──旗の真下に出た。



 頭上には空中部隊がいる。だが、全員が南──陽動部隊の方を向いている。真下は死角だ。



 穴から飛び出した。


 旗まで、五メートル。



「なっ──下から!?」



 空中部隊が気づいたが、その頃には既に遅かった。



 レナが旗に走る。カインが飛び降りてくる敵を短剣で迎撃する。ミコトが弓で空中から降りようとする敵を【曲射】で牽制する。



 トワはレナの前に立ち、降り注ぐ矢と魔法を──弓、槍、杖、剣と武器を切り替えながら全て捌いた。0.17秒の高速切り替え。飛んでくる魔法を杖で相殺し、矢を剣で弾き、隙間に弓で反撃する。



 3秒間の防衛。



 レナの手が旗に届いた。




 【〈深紅の牙〉が〈蒼穹の翼〉の旗を奪取しました】




 【勝者:〈深紅の牙〉】

 【試合時間:24分31秒】




『勝ちました!! 〈深紅の牙〉、四連勝!! 王座決定戦のベスト4入り確定です!! 最後の洞窟ルートは──もう何と言っていいかわかりません! 地図を全部歩いてる旅人じゃなきゃ見つけられないルートでした!!』




  > 24分の激戦!!

  > 洞窟ルート!? あんなところに穴あったのか!?

  > マップに載ってない洞窟を知ってるトワ

  > 「地図は全部埋める主義」ってこういう時に効くのか

  > 空の女王を一度地上に落として、最後は地下から旗を取る。上下反転の攻略

  > トワの3秒間の全武器防衛がやばすぎた

  > 四連勝! ベスト4入り! 王座決定戦だ!!

  > 対戦相手は……抽選だよな

  > 黒翼騎士団が来たら熱い




 ソラがトワのもとに歩いてきた。



「負けたわ。──まさか、地下から来るとは思わなかった」

「空が強いなら、空を避ければいいだけの話だからな」

「簡単に言うわね。でも、それができるのはあなただけよ。地図を全部知っている、旅人だけ」



 ソラが手を差し出した。



「フレンド申請してもいい? あなたの旅に、少し興味が出たの」

「構わない」

「ありがとう。──王座決定戦、頑張ってね。私は観客席から応援するわ」



 ソラが去った後、レナが駆け寄ってきた。



「トワさん、またフレンド増えた! ソラさん、BCOのトップランカーだよ?」

「強い相手と戦うと、なぜかフレンドが増える」

「それはトワさんの人柄だよ」

「人柄ではない。戦った結果だ」

「同じだよ」



 セレスがフードから顔を出した。



「トワ、つよいひと、みんなトワのこと、すき」

「好きとは違うと思うが」

「すき。セレスが、いちばんしってる」



 セレスがどや顔をしている。冬夜は反論する気力が湧かなかった。




    ◇




 ログアウト後。


 フォーラムの速報スレッドを確認した。ギルド対抗戦の最終結果。



 【シーズン最終順位(ベスト4確定)】



 1位:〈聖銀の盾〉── 5勝0敗

 2位:〈黒翼騎士団〉── 4勝1敗

 3位:〈深紅の牙〉── 4勝1敗(得失点差で3位)

 4位:〈鉄壁のファランクス〉── 3勝2敗




 【王座決定戦トーナメント組み合わせ】




 準決勝第一試合:〈聖銀の盾〉 vs 〈鉄壁のファランクス〉

 準決勝第二試合:〈黒翼騎士団〉 vs 〈深紅の牙〉



 冬夜の指が止まった。




〈黒翼騎士団〉。ゼクス。




 準決勝の相手が──ゼクスだった。

 ゼクスからメッセージが来ていた。



 ゼクス:「対戦表を見たか」

 トワ:「見た」

 ゼクス:「ようやくだ。──戦場には味方が50人、敵も50人、合計100人いるが、お前のことは見つけてやるぞ、必ず。そして今度こそ、お前の索敵を封じる手段を用意した」

 トワ:「どういう意味だ」

 ゼクス:「当日のお楽しみだ。──次は、負けない」




 索敵を封じる手段。



 トワの最大の武器は【見聞録】による全域索敵だ。ギルド対抗戦でのトワの貢献は、個人の戦闘力よりも情報戦にある。それを封じるということは──



 冬夜は天井を見つめた。



 ──準備が必要だ。ゼクスが何を仕掛けてくるか、わからない。だが、わからないものに備える方法は一つしかない。

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