《地下墓所》
大聖堂の地下。カレンが紋章に手を触れた。
【聖王の血脈を認証──聖光の地下墓所を開放します】
「権限は返却したが、血は変えられない。──わたしがカレンである限り、この扉は開くのだ」
【聖光の地下墓所に入場しました】
【地下墓所踏破率:0%】
【推奨レベル:Lv93以上】
メンバーは七人と一匹。トワ、セレス、ルーナ、ゼクス、アストレア、タマキ、カレン。シロ。ハルには聖都の防衛を任せた。
暗い。壁の光石が青白い光を放っている。白い石の棺が、壁沿いにずらりと。
「ルミナリアの歴代の王と、聖騎士の墓だ」
アストレアが棺の前で足を止めた。
「聖騎士も──眠っているんですね。帰りに、ゆっくり見たいです」
「無事に帰るまでが遠足だ。今は、目の前のことに集中するぞ」
「了解です、トワさん」
まだまだマップは白紙だ。一歩ずつ、埋めていく必要があれう。
セレスが鼻をひくひくさせた。
「トワ。──なにか、くる」
【墓所の守衛兵 Lv93 HP:100,000 ×4体】
千年以上前のデザインの鎧。墓の正規の守衛。
「通路が狭い。棺を壊さずにやる。武器は──弓と短剣だ」
セレスの月光が通路を照らした。先頭二体が突撃型。後方二体が槍投げ型。
トワの弓が、盾兵の頭上を越える放物線で、後方の槍兵の関節を射抜いた。天井すれすれ。棺にも壁にも当たっていない。
「この狭さで、放物線で撃ち分けるのか」カレンが呆れたように言った。
ゼクスがルーナの夜の影から飛び出し、盾兵の背後に短剣を突き立てる。
四体処理。棺に傷ひとつなし。
「次の分岐。どっちだ」
「みぎ。──みぎのほうが、あったかい」
「精霊の温度センサーか。見聞録より正確そうだ」
「セレスはけんぶんろくよりすごい。──はい、ろんぱ」
「セレス、それは論破じゃない気が……」
「だめ、ろんぱ」
「……」
「トワ、なにか、いって」
「言わせなくしたのは、セレスじゃないか……?」
◇
奥に進むと棺がなくなり、【本棚】が現れた。これは──新しい敵だ。
【記録の守り手 Lv95 HP:130,000】
分厚い古書が宙に浮いて、ページから光の文字弾が飛んでくる。
「本が、敵!?」タマキは驚きを隠せなかった。
「研究論文で殴ってくるモンスター……知的な暴力だな」ゼクスが避けながら言った。
カレンが見聞録で文字弾を解析した。
「文字弾の中身──【深淵】に関する論文の一節だ。読もうと思えば、読めるだろう」
「いやいや、読んでる場合か!」
「すまない。──つい、旅人の癖が」
トワが弱点を読む。「背表紙だ。本の背中が薄い」
回り込んで三連斬。本がページを撒き散らして崩壊した。
【ドロップ:深淵研究の断片(情報アイテム)】
断片を読む。
【深淵への入口は、三つの層の交差点に存在する。光と影と夜──三つの力を同時に注げば、裂け目が開く】
「光、影、夜──全部揃ってるな、俺たち」
「揃うように旅をしてきたのかもしれませんね」タマキが言った。
「また同じことを言ってるぞ」ゼクスが指摘した。
「いい台詞だから、何度でも言います」
「開き直るな」
薄暗い墓所の中を、慎重に、必要な恐れを抱きながら歩んでいく。




