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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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精霊の宴


 ソルシアの封印が完全に解除されてから一週間。



 復元されたソルシアは賑わっている。だが、冬夜の目的はソルシアの完全踏破だ。封印が解けたことで新たなエリアが開放されている。裏世界踏破率は89%。残り11%の未踏エリアがある。




 その日、セレスがいつもより上機嫌だった。角がぴょこぴょこ揺れて、肩の上で落ち着かない。



「トワ。きょう、とくべつなひ」

「何かあるのか?」

「せーれーのうたげ。──ソルシアがめざめたおいわい。せーれーたちが、あつまる」




 精霊の宴。過去のソルシアで見た「精霊祭」だ。封印が解けた今、精霊たちが自らの意志で祝宴を開く。



 ソルシアの中央広場に向かうと──既に、精霊たちが集まっていた。

 火の精霊ヒノ。赤い髪の女の子が、手のひらの上で小さな炎を生んでいる。




「おー! セレス! 久しぶりー! 千年ぶり?」

「ヒノ! ひさしぶり!」



 水の精霊イグア。青い髪の男の子が、水の球を宙に浮かべている。



「セレスティア。元気そうだね。随分とまあ、小さくなったけど」

「ちっちゃくなったけど、セレス、げんき!」



 地の精霊テラ。緑の髪の女の子が、足元に草花を生やしている。穏やかな顔つきだが──どこか不安そうだ。終始そわそわとしている。



「セレス……帰ってきてくれたんだね。よかった……」

「テラ! ないてるの?」

「泣いてないよ……ちょっと、嬉しいだけ……」



 雷の精霊ライト。金色の髪の子が、指先から雷をパチパチさせている。元気が良い──というより、落ち着きがない。身体が時々びくっと痙攣している。



「セレスー! おかえりー! あっ、ビリビリしちゃった、ごめん!」

「ライト、だいじょうぶ? ちょっとふあんてい?」

「大丈夫大丈夫! ちょっとね、調子悪いだけだから!」



 四精霊がセレスを囲んで騒いでいる。手のひらサイズの妖精が五人集まっている光景は、なかなか壮観だった。



 タマキが横で感動している。



「精霊が五人も……! 可愛い……! みんな、可愛い……!」



 ゼクスが腕を組んで眺めている。



「精霊にも個性があるんだな」



 冬夜はセレスたちの再会を見守っていた。千年ぶりの再会。精霊たちは時間の感覚が人間とは違うのかもしれないが──それでも、嬉しそうだ。




 しかし、冬夜はふと気づく。



 五人ではない。過去の精霊祭では、精霊は──もっといたはずだ。火、水、地、雷、そして月のセレス。五属性。それでも過去のソルシアで見た祭壇には……六つの台座があった。



「セレス。精霊は──五人だけか」



 セレスの動きが、一瞬止まった。

 他の四精霊も、ぴたりと黙ったままだ。



「……」

「セレス?」

「うん。──いまは、ごにん。でも、むかしは──ろくにんだった」



 六人目。



「もうひとり……いた。でも、いまは……いない」



 セレスの角が、少しだけ暗くなった。



「そのはなしは──あとで。きょうは、おいわい。たのしいひ」



 無理に笑った。冬夜は──それ以上聞かなかった。今は。




    ◇




 精霊の宴は、華やかだった。



 精霊たちがそれぞれの力で祝福を撒く。ヒノが空に花火のような炎を打ち上げ、イグアが水の虹を作り、テラが花畑を一瞬で咲かせ、ライトが稲光で空に文字を描いた。



「ソルシア おかえり」



 ライトが描いた稲光の文字が、夜空に光る。集まっていたプレイヤーたちから歓声が上がった。



「すごい……精霊のイルミネーションだ……!」

「セレスちゃんの仲間がこんなにいたんだ!」

「BCOにこんなイベントがあったとは……圧巻だな」



 セレスも月光で空に模様を描いた。銀色の月が、ぷかんと夜空に浮かぶ。



「トワ。きれい?」

「きれいだ」

「えへへ」



 タマキが精霊たちに近づいて、おやつを配っていた。精霊たちが群がっている。



「タマキちゃん、おやつくれるの!?」ヒノが目を輝かせた。

「はい、どうぞ! 精霊さんたちも食べるんですね!」

「食べる、食べる! お腹減ったよ!」

「ヒノはいつもお腹減ってる」イグアが呆れている。

「セレスも!」



 セレスがタマキの手からクッキーを奪い取った。



「セレスちゃんは、何も変わってないね」タマキが笑った。



 ここには、弟子のハルも来ていた。精霊たちに興味津々で、テラに話しかけている。



「テラさん! あなたの力で地面を治せるんですか!? わたし、浄化薬で地形を治してきたんですけど──」

「うん……わたしの力で地面は元気にできるよ。でも……最近、治せない場所があるの……」



「治せない場所?」ハルが首を傾げた。



「封印の瘴気とは……違う感じがする。もっと冷たくて、もっと深い……。わたしの力が、届かないの……」



 冬夜は、テラの言葉を聞き逃さなかった。



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