【四つの戦場】
ソルシア全域に展開された封印の兵は──想像以上だった。
各エリアに百体以上。全て光属性。聖騎士、弓兵、魔導士、槍兵──バリエーションが豊富で、連携して動く。個体のレベルはLv90前後。単体なら上級プレイヤーで対処できるが、数が多い。
◇
南部──レナ&カイン
「多いな」カインが短剣を抜いた。
「多いけど──〈深紅の牙〉を舐めないでほしいな!」
レナが剣を構えて突撃した。ここでギルド対抗戦で鍛えた連携が活きる。レナが前衛で敵を引きつけ、カインが影から急所を突く。リゼの魔法が範囲攻撃で複数体を巻き込み、マルクの回復が前衛を支える。
しかし、いくら倒しても──光の粒子が集まり、再生する。
「再生する!? 倒したのに!」
「封印が生きている限り、兵は何度でも復活するらしいぞ」カインが舌打ちした。「つまり──トワが中央の楔を抜くまで、俺たちは永遠に戦い続けるしかない」
「上等!」レナが笑った。「トワさんが楔を抜くまで──一歩も通さない!」
◇
東部──ミコト
『東部の状況を実況します! 封印の兵が百三十五体! 〈聖銀の盾〉東部隊と共同で防衛中です! ──視聴者数、八百万を超えました!!』
ミコトは配信しながら弓を射っていた。【鷹の目】で敵の位置を把握し、ただの配信者でないことを、正確無比な速射で見せつけていく。伊達に配信者をやっていない、情報共有は得意だ。【鷹の目】で得た情報は、間髪入れずにチャット欄に打ち込んだ。
「ミコトさんの配信が作戦指示になってるぞ!」
「配信見ながら戦うの新しすぎる!」
『三時方向に弓兵二体! 盾部隊、前に出てください! ──はい、そこです! 今!!』
配信者の実況が、そのまま戦場の指揮になる。ミコトにしかできない戦い方。
◇
北部──ハル&ヴェノム
「旅人の集い、全員配置完了! 浄化薬の散布準備できてます!」
ハルの合図で、二十人の旅人たちが、北部の雪原に散開している。
全員Lv1だが、ハルの指揮によって、類を見ない連携力を発揮していた。
「ヴェノムさん! 三体、左から来ます!」
「わかった、ここは俺に任せろ!」
ヴェノムが影の短剣で光の兵士に斬りかかった。元Lv86の盗賊のプレイヤースキルは、たとえLv1だろうが旅人クラスになっても健在だ。影属性の短剣が、光の鎧を切り裂く。
「旅人の集い、地形安定化開始! 浄化薬を散布して、戦闘エリアの【侵蝕】を抑えて!」
旅人たちが動く。ジャガーノート戦で根を斬り、裏世界で記憶断片を集め、病んだ地形を治してきた旅人たち。──戦闘力はないが、戦場を整える力がある。脇役魂は、誰にも負けていない。
「ハル、お前──立派な指揮官だな」
ヴェノムが光の兵士を蹴り飛ばしながら言った。
「師匠に教わりました!」
「トワか……あいつの弟子は、どうしてこうも真っ直ぐなんだよ」
「弟子じゃないです、仲間です! ──でも、たまに師匠って呼んじゃいます!」
「クソ、こんな時にのろけんじゃねえ……!」
「のろけてません、事実を――」
「言っているだけ、ってか? ったく、どこまでも師匠に似てきてやがるぜ……!」
◇
西部──ソラ&バルト
「風よ!」
ソラの風魔法が、光の兵士の隊列を吹き飛ばした。西部はアストレアの祈りで侵蝕が消えたばかり。
しかし、再び光の兵士が現れ、蘇った大地を蹂躙している。
「ここは……俺が、守る」
バルトが大盾を構えた。〈深紅の牙〉のギルドマスター。Lv90の重戦士。
「トワに任されたんだ。──死んでも、通さん!!」
各ギルドの有志──剣士、魔法使い、僧侶、弓使い。旅人以外のプレイヤーも、ソルシアを守るために集まっていた。
◇
中央へ──トワ、セレス、ゼクス、アストレア、タマキ
五人は、ソルシア中央区画に向かって走っていた。
道中にも光の兵士がいる。だが、五人の前に立ちはだかるには、格が足りなかった。
トワの影銀の剣が光の騎士を両断する。ゼクスが影の中から槍兵の首を刈る。アストレアの聖剣が弓兵を薙ぎ払う。
三人が前衛で道を切り開き、タマキが回復を飛ばし、セレスが月光で影を守る。
もちろん中央に近づくほど、光が強くなる。空気が白くなる。影が薄くなる。
「影が──消えかけている」
ゼクスの影潜りが不安定になっていた時、セレスが【覚醒形態】になった。
「【銀月の揺り籠】全力展開。──ゼクス、わたしの月光の範囲から出ないで」
「了解した!」
セレスの月光が五人を包む銀色の繭になる。白い光の中に、銀色の安全地帯。
中央区画に突入した。




