第76話 集団失踪事件
俺たちが、交易都市ヌスポに滞在して三週間。
それはすなわち、高級娼館のマダム・エルミアルダに、帝国の情報屋ギルドとの『繋ぎ』を依頼して三週間が経過したことを意味する。
大分時間が経った気がするが、この世界の情報伝達の遅さを舐めてはいけない。
三週間という時間では、未だに依頼の内容がマシークの下に届いていないと考えるべきだ。
ヌスポの街から、マシークのいるルースオマの街まで、およそ一カ月くらい。
これは、密入国のルートを使っても「最低でもこれくらいはかかる」という目安でしかない。
もしも密入国が見つかれば、そのままお縄を頂戴するのは必至。
そうなると、情報の伝達が途絶した事実を知ることさえ、数カ月先にもなりかねないのだ。
あまりに不確実な情報伝達手段、必要とする時間の多さに、愕然とする思いだった。
そして、必要な時間は往復の時間だけではない。
俺が調べてほしい情報をすでに掴んでいれば、すぐに返答が来るだろう。
しかし、もしもそれから調査、情報収集をするとしたら?
帝国の情報屋ギルドから届けられる情報は、早くて三カ月先。
下手すれば半年、一年にもなるのだ。
これこそが、俺が情報屋ギルドという組織を、特に重視している最大の理由だった。
とにかくこの世界では、情報のやり取りには時間がかかる。
初めからある程度の情報を抱えている情報屋ギルドという組織は、それだけで非常に大きな価値があるのだ。
窓枠に腰掛け、アンニュイに空を眺める。
秋を感じさせる雲が流れるのを見つめ、ほぅ……と溜息をつく。
「暇だ……。」
俺が思わず零すと、テーブルを拭いていたベリローゼが苦笑する。
俺たちは、エルミアルダに依頼してからずっと、部屋に閉じ籠っていた。
いや、完全に閉じ籠っていたわけではないのだが、やることがない。
そのため、適当にトレーニングをする以外は、部屋に籠っていたのだ。
「…………金策はできたから、稼ぐ必要はないんだけど。傭兵の仕事ができないと、やることがなくて困るな。」
俺は、エルミアルダの忠告を聞き、傭兵の仕事を自重していた。
共和国の情報屋ギルドからマークされていたという事実は、それなりに驚きだった。
知らなかったとは言え、山賊退治で評議会の邪魔をしたのは間違いない。
そして、今では二つの収容所を襲撃したという事実もあるため、目立つ行動は控えているのだ。
もっとも、こうしてダラけていられるのは、活動資金に目途がついたのが大きい。
エルミアルダに四本のドワーフの剣を売り、二千万超を手に入れた。
ここからレイン、ベリローゼにしていた借金を返済。
ついでに、これまであげていなかった給金を二百万ずつ支払った。
二人が俺に仕えるようになって二年以上。
まったく支払っていませんでした。
しょーがないだろ!
ティシヤ王国から人が消えて、税収がないんだよ!
だからこそ、生活の面倒をみることだけが、俺の主君としての矜持だった。
そのなけなしの矜持さえ、二人に借金することで崩れ去ったわけだが。
とはいえ、ドワーフの武器や防具を大量に手に入れたことで、とりあえずこれまで通り生活を支えることができる。
そして、多くはないが給金も払ってあげることができた。
これでギリギリ、俺の面目も立った。…………立ったよな?
レインは、これまで共有の魔法具の袋しか持っていなかった。
俺が譲ったやつだ。
しかし、俺とベリローゼの勧めで、最近自分用を購入した。
使用者登録をした、レイン専用の魔法具の袋だ。
これで現在、俺たちは五つの魔法具の袋を所持していることになる。
専用の魔法具の袋が、俺、レイン、ベリローゼの分。
そして、収容所からかっぱらって来た、武器や防具の入った軍用と思われる魔法具の袋が二つだ。
この軍用の袋も、現在は俺の管理だ。
ぶっちゃけ邪魔でしょうがないが、そこは文句を言っても仕方ないだろう。
中身の武器や防具は、扱いとしてはすべて俺の総取り。
山分けとか、そういう話にならないのは有り難い。
収容所襲撃を手伝ってもらったメッジスとウラコー、カンザロス、ホーマーには、最初の取り決め通りに報酬を支払う。
つまり、情報だ。
襲撃で金目の物を手に入れたからって、分けてやる義務はない。
依頼者である、俺の物になるのは当然の話だ。
まあ、カンザロスは現地で大剣を手に入れているし、メッジスとウラコーには兜を譲った。
他にも、それぞれ剣を一本ずつあげたので、これで十分だろ、ということだ。
ホーマーは遠慮していたが、一応の護身用としてダガーを一本と、鎖帷子を譲った。
お裾分け程度ではあるが、こうしてボーナス代わりに分け与えること自体が稀なので、みんなも特に文句は言わない。
そして、レインとベリローゼ。
二人にはいくらでも与えてもいいと思っているくらいだが、二人は俺の家臣だ。
何より、盟い合った仲でもある。
必要なら必要な分だけ渡すつもりなので、現在は自分で使用する分と、予備の分を渡してあった。
これで俺たちは装備が強化され、資金も潤沢になった。
ちなみに、エルミアルダに剣を売った代金は、一部を共和国の通貨にしてもらった。
共和国の通貨は、ペイル。
帝国の通貨であるシギングと、ほぼ等価だ。
十万シギング≒十万ペイル。
なぜニアリーイコールかと言うと、現在は帝国と共和国に微妙な距離感があるため、共和国では若干シギングが弱くなってきたからだ。
元々、共和国の評議会は「帝国の通貨の共和国内での使用禁止」を打ち出していた。
ところが、いきなりそんなことを言われても国民は困るので、無視して使い続けた。
むしろ共和国の通貨を貯め込み、積極的に帝国の通貨を使っていたくらいだ。
しかし、最近になって市場に変化が出てきた。
ペイルに対して、シギングが弱くなってきたのだ。
これまでは、千ペイルだった物は、千シギングでも買えた。
しかし、徐々にこれが崩れてきた。
ペイルなら千でいいが、シギングなら千では売らない。
十シギングや二十シギング、余計に払え、といった店が出始めたのだ。
こうした店自体は以前からあるのはあったが、気に入らなければ違う店で買えばいいだけ。
しかし、最近ではそうした店がかなり増えてきた。
こうした事態は、俺からすれば予想の範疇ではあるが、少々困ったことになった。
共和国に滞在する必要があるので、いくらかはペイルで持っていた方がいいだろう。
いつシギングの価値が暴落するか分からないので、ペイルを持つのは構わない。
だが、いつまで共和国に滞在するか分からないので、どの程度ペイルを持つべきかなかなかに判断が難しい。
まあ、金や銀の含有量を考えれば、どちらの通貨でも極端な暴落は考えにくいが、少々面倒なことになったのは確かだ。
いっそ全額ペイルで受け取り、帝国に戻る時にシギングに変えれば、レート次第で大儲けか?なんてことも思い浮かぶ。
ただ、リスクを負って為替取引で稼がなくても、高値で売れるドワーフの装備があるので、今のところは余計なことは考えず、必要だと思う分だけペイルで持つことにした。
もしも帝国に戻る時、シギングが大暴落しててくれれば大儲けではあるが、開戦して帝国が勝てばペイルが大暴落する可能性もある。
先のことなど分からないのだから、あまり極端なことはしない方がいいだろう。
現在、俺の所持金は八百万シギングと三百万ペイル。
少なくとも数カ月は共和国に滞在する見込みなので、ちょっと多めにペイルを持っておく。
宿に滞在し、外食ばかりの生活だと、これでも「一年もたせるのは厳しいか?」くらいの金額だ。
(どこかに、部屋でも借りようかなあ。)
エルミアルダの部下、ターラッツォに頼めば何とかしてくれるかもしれない。
ちょっと本気で、滞在の間に住む部屋を考えるのだった。
そうしてポケ~……と空を眺めていると、ピイがこちらにやって来るのが見えた。
ピイは空でゆったりと旋回し、再びこちらに向かう。
また旋回してはこちらに向かう、という行動を繰り返した。
俺は視線を下の大通りに移し、遠くを眺める。
通りを行き交う人の中に、こちらに向かって駆けてくるレインの姿を発見した。
「…………随分と早いな。」
レインは最近、カンザロスに稽古をつけてもらっている。
カンザロスは『なんちゃら流』とかいう剣術を修めたらしい。
師範を務めていたとかではないが、ある程度を修めたところで、独自の戦い方になった。
傭兵稼業に足を踏み入れ、実戦で磨いてきた剣術は、なかなかのものだ。
俺も何度か手合わせしたが、ちょっと【加速】を使わないと勝てそうにない。
レインの盾を使った戦い方の練習に、丁度いい相手だった。
そんなレインの稽古だが、街の中では剣を振り回せる場所がないため、街の外に出て練習をしている。
いつもは、夕方までみっちり稽古をしてもらっているのだが、まだまだ西の空が赤くなるような時間ではなかった。
「何かあったのでしょうか。」
ベリローゼも窓から外を見て、呟く。
「結構な慌てっぷりだし、何かあったんだろうな。メッジスたちが取っ捕まったか?」
「あの、リコ様……。」
俺の不謹慎すぎる冗談に、ベリローゼが渋い顔になる。
「まあ、推測しなくてもすぐに答えが来る。水を用意しておいてやってくれ。あと、タオルな。」
「はい。」
そうしてベリローゼがテーブルにタオルを用意し、水も用意する。
運動後の喉が渇いた時って、水をがぶ飲みしたくなるよな。
しばらく待っていると、ピイが真っ直ぐに飛んできた。
俺が外に腕を伸ばすと、バサバサバサッと羽ばたきながらピイが止まる。
「お帰り。そんなに慌ててどうしたんだ?」
「ピイピイ。」
ピイを膝に乗せて羽を撫でていると、ドタバタと階段を駆け上がる音が聞こえてきた。
「リコッ!!!」
バンッと勢い良くドアを開け、血相を変えたレインが部屋に飛び込む。
「いくら何でも慌て過ぎだ、レイン。いいからまず、水を飲め。それから、ゆっくり汗を拭く。落ち着いてから、何があったか報告しろ。」
「それどころじゃないのよっ!」
そう言いつつ、水は飲むレイン。
一気に飲み干すと、鬼気迫る表情で俺の方にやって来た。
本当に、メッジスたちが教会にでも捕まったか?
レインは、俺の前に来ると、荒い息を整える間もなく報告する。
「村人が……、丸ごと消えたらしいの。」
「………………? 消えた?」
その報告に、俺は思わず訝し気な表情になってしまうのだった。
■■■■■■
レインの拾ってきた噂は、共和国内のある村で起きた事件だった。
ネタ元はカンザロスで、そのカンザロスも昨夜酒場で小耳に挟んだだけの、与太話だ。
稽古の休憩中、こんな話があったぜ、とちょっとした話題に上がったそうだ。
何でも最近、ある村で住人全員が消えるという事件が起きたらしい。
村に荒らされた形跡はなく、テーブルには食べかけの食事まで出ていたという。
飼われていた家畜まで綺麗さっぱり消えた、集団失踪事件だった。
この集団失踪事件は、その村と取引のある行商人が、村に立ち寄ったことで発覚した。
人っ子ひとり姿を消した村に、その行商人は恐ろしくなって、すぐに別の町にある官所に駆け込んだというわけだ。
俺は足を組んで椅子に座り、正面に座るレインを見る。
「……………………なるほどね。」
「なるほどって! 村人が丸ごと消えたのよ!? これって……!」
ティシヤ王国から、人が消えたのと同じ。
レインは、そう考えているのだろう。
俺は興奮気味のレインを、手で抑えるようにゼスチャーする。
「まず……すぐに知らせに来たのはいい判断だ。よくやった。」
「……はい。」
俺が存外に冷静なのを見て、レインはやや困惑気味だ。
俺がずっと探し求めていた答えが、見つかるかもしれない。
レインはそう考え、急いで報告しなくては、と街の外から駆けて戻ったのだから。
正直言えば、その期待は俺にもある。
だが、だからこそ、目を曇らせてはいけない。
先入観を捨て、正確に二つの事象を比較する必要がある。
「人が忽然と消えた。食事中の人が突然消えたかのように、テーブルに食器も出しっぱなし。これは、俺もティシヤ王国を回って、散々見てきた。」
「はい。」
「そして、個人が単に失踪したという話ではなく、村という単位で消えるというのも、ティシヤとの共通項と見ていいだろう。」
「はい。」
今分かっている事実を、一つずつ確認する。
「とはいえ、単に集団失踪しただけの可能性も排除できない。何らかの理由により、村を放棄した。……案外、国の計画でその村の住人を丸ごと移住させた、なんてことも有り得なくはない。」
「………………。」
「それと、王国で国民が丸ごと消えたのと、村の住人が消えたのが、まったく同じ現象とは考えにくいな。」
「そうでしょうか? 私には、同じようにしか思えないけど……。」
レインの言葉に、俺も頷く。
「同じようなメカニズムで起きた現象と考えることはできる。ただ、まったく同じではなく、何らかの差異はありそうだ。」
規模の違いに引っかかりを覚えるが、それでも似たような現象であるのは間違いない。
だが、俺には明らかな違いが気になっていた。
「それと、家畜も丸ごと消えていたらしいが……。ティシヤでは家畜は残されている。」
「そうなのですか?」
ベリローゼの確認に、俺は頷く。
「すべてが残されていたかは、確かめようがないけどな。半分が消えていても、後から見ただけの俺では気づかないだろ?」
「確かに、そうですね。」
俺が見たのは、飼われていた家畜が柵の中で餓死しているところだ。
そこから言えることは「家畜は消えていない、若しくはすべてが消えたわけではない」ということだけ。
こうしたことを挙げていくと、少し冷静になってきたレインが肩を落とす。
「そっか……。何だか、私の勇み足だったみたい。」
ちょっとだけ、レインがしょんぼりしている。
そんなレインに、俺はニッと笑う。
「何を言っている? 大手柄だぞ、レイン。」
俺がそう言うと、レインがきょとんとした顔になる。
「これまでまったく手掛かりがなかったのに、似たような現象が発生した。徹底的に調べるに決まってるだろ。」
俺は、テーブルに置いた手を、無意識に強く握り締めていた。
その手を顔の前までもっていくと、ゆっくりと開く。
「ようやく見つけた手掛かりだ。すぐに動くぞ。」
沸々と湧き上がる逸る気持ちと興奮に、俺の声は微かに震えてしまうのだった。
■■■■■■
「待った待った、ちょっと待てって。いきなりそんなこと言われても困るぞ。」
レインから話を聞いた俺たちは、早速メッジスたちが泊っている宿に行くと、近いうちにヌスポの街を出ることを伝えた。
だが、話を聞いたウラコーが難色を示した。
「別に困りはしないだろ? 情報屋ギルドに帝国からの情報が届くのは、どんなに早くてもまだ一カ月は先だ。俺は、あと二カ月くらいはかかると思ってる。さすがにそれまでには戻ってくるさ。」
「そうは言っても、リコたちに何かあれば、どうやって俺らはその情報を手に入れればいいんだ?」
「じゃあ、情報が届いたらここにも届けるように手配する。それならいいだろ?」
そう提案しても、メッジスとウラコーは顔を見合わせ、渋い顔をする。
そんなやり取りを聞いていたカンザロスが、腕を組んで溜息をついた。
「……俺が昨夜聞いた、あの噂話か? あんな話に、何でリコがそこまで興味を示すんだ?」
俺の事情を知らないカンザロスたちからすれば、行動の理由が分からず困惑するのも無理はないだろう。
しかし、これは俺にとって最重要事項だ。
そして、その理由をレインやベリローゼ以外に教えるつもりはない。
「別に……。やることがなくて腐ってるくらいなら、ちょっと足を延ばすくらい大したことじゃないだろ?」
明らかに誤魔化していることが分かっても、どうやって口を割らせればいいか思いつかず、カンザロスは肩を竦める。
俺は、メッジスたちに相談に来たわけではないのだ。
いきなり姿を消しては悪いと思い、報告に来ただけ。
俺は席を立つと、ドアに向かった。
「今すぐ出るってわけじゃない。これから情報屋ギルドとコンタクトを取って、この件について分かってることを教えてもらうつもりだ。一日二日はかかるだろうから、出るのはその後だな。」
おそらくターラッツォは、情報を持ってはいない。
マダム・エルミアルダの娼館に問い合わせ、マダム・エルミアルダは共和国の情報屋ギルドに問い合わせる。
そうやって、ギルドが掴んでいる情報を取り寄せる必要があるはずだ。
俺が、帰るぞ、と目配せすると、ベリローゼがドアを開けた。
レインは、俺の後ろを黙ってついて来る。
「待て……。」
俺が部屋を出ようとした時、背中に声をかけられた。
振り返ると、声をかけたのはメッジスのようだ。
メッジスは席に着いたまま、鋭い視線を向けていた。
「…………何だ?」
そう聞き返すが、メッジスは答えない。
まだ、何かを考えているのだろう。
俺は内心溜息をつくが、あえて明るい表情を作った。
「そう心配するな。暇潰しにちょっと見て来るだけだよ。」
そんな気休めを言い、踵を返そうとする。
「俺も……、行くぞ。」
「……………………………………………………はあ?」
突然のメッジスの宣言に、呆気に取られる。
メッジスの言っている意味が、一瞬分からなかった。
「何、言ってんだ? お前には関係のない話だろ。」
「ただの暇潰しなんだろう? 暇してるのは、俺たちだって同じさ。」
メッジスの提案に、ウラコーがにやりとする。
「そう……だな。どうせヌスポにいたって、やることなんかねえし。」
「それは、確かにそうですね。」
ウラコーの言葉に、ホーマーまで賛同し始める。
「ふざけんな。暇潰しなら自分たちで探せよ。」
俺がこめかみをぴくぴくさせながら言うと、メッジスがわざとらしく身体を延ばし、そっぽを向く。
「くぁあー……暇だなぁ、ちょっくら謎解きでも行くかー。」
「おお? それなら丁度いいのがあるぜ? 何でも、どっかの村で村人全員が失踪したんだと。」
「へー、そいつは不思議だなぁ。調べてみるのも面白いかもな。」
こ、こいつら……!
メッジスとウラコーが、これ見よがしに三文芝居を始めやがった。
それを見て、ホーマーとカンザロスが苦笑している。
いや、カンザロスは肩が震えているな。
笑いたいのを我慢して、堪えている顔だ、あれは。
「リコ……どうするの?」
「リコ様……。」
ついてくる気まんまんのメッジスとウラコーに、レインとベリローゼが戸惑う。
俺の額には青い筋が浮かび、ぴくぴくと震えていることだろう。
「…………そうか。なら、気をつけて行って来いよ。俺たちは別の暇潰しを探すが、せいぜいミイラ取りがミイラにならないように気をつけな。」
「何だそりゃ。どういう意味だ?」
聞き返すメッジスに、俺は凶悪な笑顔を見せる。
「集団失踪事件を追って、自分が失踪者リストに載らないようにってことだよ。ああ、帝国じゃもう失踪者扱いか。」
俺がそう言うと、メッジスが顔を引き攣らせた。
ウラコーが若干引きながらも、文句を言ってくる。
「何だよ、一緒に行けばいいじゃねーか。手伝ってやるぜ?」
「いらねーんだよ! いい子にして、ヌスポで待ってろ!」
「腕っこきが同行してやるって言ってんだぜ? 泣いて喜ぶところだろ、そこは!」
「ああ、泣きそうだね! 引っ掻き回す気まんまんのおっさんどもに絡まれて! いいから、大人しくしてろ!」
その後、「連れてけ」「ついてくんな」の言い合いは数時間に及んだ。
しかし、暇を持て余したメッジスとウラコーは本当にしつこかった。
俺たちがこっそり出発するのを防ぐため、宿を見張ると言い出すに至り、最終的には俺が折れることになった。
やりにくくなるから、絶対に嫌なのに……。




