03
俺と姉ちゃんは医者に改めて挨拶する。
この病院は、姉ちゃんの大学とその上司の関連した病院で、電話で指示されてこの病院へ運んだのだ。場所も一番近かったし、大きな総合病院だから、安心だろう。
医者は彼女の状態を説明した。
命に別状はなく、脳波も正常。もうすぐ意識を取り戻すだろう、とのこと。
良かった……。
僕は心からほっとした。
医者に許可をとり、病室にはいった。
点滴につながれた女武者は、まだ目をつむっている。
着ていた装束は病院服に着替えさせられ、静かな寝息をたてている。
年は僕より少し年下だろうか。端正な顔立ち。
若手女優のなんとかというのに似ている気がした。
俺と姉ちゃんは、病室の椅子に座る。
今日会ったことを説明する。
「うん、なるほど、お前の説明からすると、彼女はこの時代の人間ではなく、お前がその過去から連れてきてしまったんだな。」
僕はゆっくりうなずいた。
「それより姉ちゃん、やっぱりあれって、タイム……スリップ?タイムマシンなのか?」
「それは、私の口からは言えないな。」
姉ちゃんはスマホを取り出し、なにか操作している。
誰かとSNSで連絡を取っているようだ。
不安でたまらなかった。
自分に何が起こったかの疑問もあるが、この少女がこれからどうなるのか心配でたまらなかった。
姉ちゃんは、病室の隅の籠の中に入っている、彼女の持ち物を見た。
装束の他に、赤い絹袋がおいてある。
「この絹袋は彼女がもっていた物か?」
「ああ、車のなかに落ちてたから多分そうだよ。」
弘子は絹袋から何かを取り出した。
「横笛……」
弘子は笛に施された装飾を見て難しそうな顔をしている。
弘子はまたスマホを取り出し、何やら調べだした。
「姉ちゃん、タイムマシンはなんであの時代のあの場所に飛んだんだ?」
「……。」
「またすぐ動かせるんだろ?タイムマシン。」
「……。」
「この子は誰なんだろう。やっぱり元の世界に戻してあげたほうがいいのかな?それとも……。」
姉ちゃんは質問には答えず、少女の顔と着ていた装束、それと横笛をかわるがわる凝視している。
「信太朗、今、私の研究室の上司と連絡を取った。近くにいるので30分ほどで来てくれるそうだ。」
「え?なんで?」
「すべてはうちの所長から説明させる。それまで彼女のそばにいてやろう。」




