↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/28

第九話:前野町の葛藤と、若き将・ゆるる

チーかま軍が都を掌握し、世に言う「チーかま政権」が打ち立てられた頃。

常盤台の目と鼻の先、前野町(まえのちょう)を拠点とする若き将・ゆるるは、鋭い眼光で机上の地図を見つめていた。

「またチーかま軍からの検地(税の徴収)の知らせか……。都を牛耳った途端、つけ上がりおって」

ゆるるは、千治の乱で敗れ消息を絶ったサ・バ・ンナの弟であり、現在は前野町の精鋭部隊を束ねる類まれなる武芸の天才であった。

本来ならば、兄の仇を討つべく今すぐにでも北区のチーかま軍本陣へ打って出たいところである。しかし、彼の手元にあるのは前野町の一軍のみ。朝廷を傘に着たチーかま軍の圧倒的な物量と、参謀・紋派の隙のない包囲網を前に、迂闊な挙兵は前野町の全滅を意味していた。

「若君! 北区の境にてチーかま軍の巡視兵が増加しております! 我ら前野町に対しても、日増しに圧力が強まっておりますぞ!」

側近の訴えに、ゆるるは深く溜息をつく。

「分かっている……。だが、今戦えばチーかまの思うツボだ。兄上……サ・バ・ンナ兄上は、埼玉の地で命を落とされたのか、それとも……」

ゆるるの胸を締め付けるのは、チーかま政権の横暴さへの怒りと、行方不明となった兄への強い思い、そして「前野町の民をどう守るか」という重い苦悩であった。

「……耐えるのだ。チーかま軍が朝廷と摩擦を起こし、綻びを見せるその時まで。我ら前野町の刀は、決して錆びさせはせん」

兄の面影を胸に抱き、静かに刃を研ぐゆるる。

この男がのちに、埼玉から生還した兄と運命の再会を果たし、「ときわ台・前野町連合」としてチーかま政権を激震させることになるとは、まだ誰も知る由がなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。