第六話:知謀の影 〜北区・チーかま軍本陣〜
千代田の朝廷を「保護」し、都の主導権を握ったチーかま軍。
しかし、その本拠地である北区の本陣は、勝利の余韻に浸るどころか、どこか異様な熱気とバタバタ感に包まれていた。
1. 豪華絢爛? 総大将のこだわり
北区の本陣。
特注の豪華な座椅子に深々と腰掛け、上等なチーズを片手にワイングラスを傾けているのは、総大将モ・ト・ハ・チィである。
「ちょっと紋派! この本陣のカーテン、金の縁取りがされた赤色にならないかしら? 都を制したアタシたちの本拠地なんだから、もっと華やかさが欲しいわ!」
豪快かつ気品(?)溢れる態度で指示を飛ばすモ・ト・ハ・チィ。
彼女の強さは、圧倒的なカリスマ性と、一度決めたら突き進む実行力にある。だが同時に、非常に形から入るタイプでもあった。
「チィ様……カーテンの色よりも、まずは文京国を攻め滅ぼした後の補給路の確保と、千代田への駐留部隊の配置転換が先決です」
整った顔立ちに一切の感情を出さず、淡々と書類の山を処理しているのは参謀・紋派。
チーかま軍の勝利の裏には、常にこの男の冷徹な計算と隙のない実務能力があった。
2. チーかま軍の特殊兵器と「チーズ問題」
チーかま軍の強さの秘密は、圧倒的な資金力と、北区特有の技術で作られた「チーかま兵器」にある。
兵士たちが身に纏う甲冑は、しなやかでありながら刀を通さない特殊練り物構造。さらに、矢の先端には粘着性の高い特製チーズという名の粘着剤が塗られており、敵の動きを封じるのだ。
「報告! 伝令です! 千代田に駐留している部隊から『あまりにも寒く役務が進まない。朝廷を「保護」したのなら薪や炭ぐらい運んでこい!』と苦情が来ております!」
部下の報告に、チィは思わずグラスを叩き割った。
「はあ!? なによあいつら!保護したって暖を取る用の材料を上げるなんて一言も言ってないわ! 紋派、何か言い返してやりなさい!」
「……『暖を取る用の薪の費用は朝廷側で負担せよ』と返信しておきます」
冷酷なまでに理詰めで対処する紋派。
3. 覇王の背中と、参謀の憂慮
騒がしい本陣の奥で、モ・ト・ハ・チィはふと地図を見つめた。
「まあいいわ。文京を潰し、ちくわ天皇を押さえた。これでアタシたちが天下の主よ。……でも紋派、埼玉へ追放したあの男……サ・バ・ンナだったかしら? 本当にあれで良かったの?」
紋派は手を止め、静かに返した。
「処刑すれば東軍の残党が暴動を起こすリスクがありました。ですが、あの男の目には死んでいない火があった。だからこそ、二度と這い上がれない『未開の地・埼玉』へと追放したのです。あそこで野犬の餌になるのが関の山でしょう」
「ふん、ならいいわ! さあ、次は品川のペンネのババァにどうやって意地を見せてやるか……宴の準備をしなさい!」
高らかに笑うモ・ト・ハ・チィ。
一見、完璧に見えるチーかま政権だが、その足元には「朝廷の扱い」と「追放した男の存在」という小さな破綻の芽が、静かに生え始めていた。




