第三話:偽りの官軍、千代田を呑む
千代田の街道が乱戦の泥沼にハマる中、紋派の冷徹な指揮によって作られた「わずかな隙」を、チィは見逃さなかった。
「今よ! 本隊、アタシに続けッ!」
チィ率いる精鋭部隊が東軍の包囲を強行突破し、千代田の朝廷屋敷へととなだれ込む。
「ひ、ひえぇぇっ!? な、何事だ!?」
屋敷の奥でガタガタと身を縮め、怯えていたのはちくわ天皇であった。
その眼前で、モ・ト・ハ・チィは優雅に、しかして圧倒的な圧力を伴って跪く。
「お命をお助けに上がりました、ちくわ天皇陛下。これより我らチーかま軍が、朝廷を脅かす東軍の賊どもを討ち払ってご覧に入れます」
「へ……? 賊……?」
戸惑うちくわ天皇をよそに、チーかま軍は手早く朝廷屋敷を完全掌握。すぐさま屋敷の屋根高くに、朝廷の正統を示す「錦の御旗」をズラリと掲げさせた。
その光景は、外で激闘を繰り広げていた東軍連合の視界に嫌でも飛び込んでくる。
「な……ッ!? 錦の御旗だと!?」
常盤台の武士サ・バ・ンナは絶句した。
ちくわ天皇を味方に抱き込んだチーかま軍は、一瞬にして「朝廷を守る官軍」となり、対する自分たちは「朝廷に刃を向ける賊軍」へと仕立て上げられたのだ。
「チーかまの奴ら……最初からこれが狙いだったか!」
激昂する本蓮沼の陀下門も太刀を振り下ろすが、官軍となったチーかま軍の士気は跳ね上がり、逆に東軍の足並みは「賊軍」の汚名によって完全に崩壊した。
「全軍、撤退だ! これ以上は無駄死にになる!」
サ・バ・ンナの悔しさを孕んだ叫びとともに、東軍連合は蜘蛛の子を散らすように瓦解。千治の乱は、チーかま軍の圧倒的な勝利と、朝廷の完全掌握という形で幕を閉じたのであった。




