第十八話:法王の裏切りと、兄弟連合の火蓋
江戸川の激戦から息を吹き返し、チーかま軍を撤退に追い込んだ本蓮沼の陀下門と前野町のゆるる。
激戦を終えたばかりの傷ついた兵たちを休ませ、束の間の安息を得ていたその時——西の静寂を破り、突如として大軍の蹄音が轟いた。
「今ぞ! 都の均衡が崩れた今こそ、我ら成増が天下に名乗りを上げる時! 疲弊した敗者どもを揉み潰せ!!」
高物見を決め込んでいたはずのちくわぶ法王であった。
「煮込むほどに味が染みる」と豪語していた策士は、激戦直後でボロボロになった本蓮沼と前野町を狙い、蓄えに蓄えた自警軍勢を一気に解き放ったのだ。
「な……ちくわぶのジジイめ! この泥沼の窮地を狙って牙を剥くとは、どこまで卑劣な……ッ!」
傷が癒えぬまま太刀を構える陀下門だったが、あまりの兵力差と突然の奇襲に防衛線は一気に瓦解寸前へと追い込まれる。ゆるるも必死に陣を立て直そうとするが、成増の怒涛の物量に押し潰されそうになっていた。
だが、その非道な報せは、すぐさま江戸川から戻りつつあったサ・バ・ンナのもとへと届いた。
「なに……!? ちくわぶ法王が、戦いが終わったばかりの陀下門殿とゆるるを襲撃しただと……!?」
サ・バ・ンナの全身から、青いオーラとともに天地を揺るがすほどの激怒が立ち上る。
「常盤台を守り抜き、ボロボロになりながら戦い抜いたゆるるを……俺の家族を踏みにじるか、ちくわぶのジジイィィっ!!」
サ・バ・ンナは海底民族の精鋭を率い、電光石火の速度で前野町へと大急ぎで向かった。
成増の軍勢がまさにゆるるの本陣へと押し寄せようとしたその瞬間、空中から突如として一筋の巨大な青き雷撃が降り注ぎ、成増の前衛部隊を吹き飛ばした。
「そこまでだ、成増の奸賊ども!!」
煙の中から姿を現したのは、深海の鎧を纏い、怒りに瞳を燃やしたサ・バ・ンナ第一王子。
「あ……兄上……ッ!」
血に濡れた刀を支えに膝をついていたゆるるの目に、熱い涙が溢れ出す。サ_バ_ンナは即座に弟の肩を抱き寄せ、力強く頷いた。
「よく耐えたな、ゆるる。……ここからは俺と貴様の時間だ。兄弟の絆を、あの欲深きジジイに見せつけてやるぞ!」
「はいっ……! 兄上と共に、どこまでも!!」
激怒したサ・バ_ンナ第一王子と、前野町を守り抜いた弟・ゆるる。
ここに伝説の「ときわ台・前野町・兄弟連合軍」が正式に結成された。
「チッ、 埼玉の化け物の帰還はもう少し後と踏んでいたのだが...........」
高物見の余裕を完全に失い、狼狽するちくわぶ法王に対し、兄弟連合と海底民族、そして泥臭く立ち上がった陀下門の混成部隊が、怒涛の大反撃を開始するのだった。




