第十三話:屈せぬ防衛線と、深海の狼煙
チーかま軍による本蓮沼と常盤台エリアへの攻撃は、日を追うごとに苛烈を極めていた。
「押せ! 一気に呑み込め!」
北区から怒濤のごとく押し寄せるチーかま軍。しかし、泥と湿地を知り尽くした陀下門は、幾度となく陣形を組み直しては粘り強く敵の突撃を押し戻す。
「ハッハハ! この泥こそが我が城壁! チーかまの軟弱な兵どもに、本蓮沼の根性を叩き込んでやるわい!」
一方、サ・バ・ンナを欠く常盤台を守るゆるるも、兄の残した精鋭部隊とともに前野町の険しい地形を活かした死守命令を下していた。
「一歩も退くな! 兄上が戻られるその日まで、この防衛線は絶対に死守する!」
参謀・紋派の計算をも狂わせる、両陣営の凄まじい意地と泥臭い防衛戦。チーかま軍は圧倒的な物量を誇りながらも、この二つのエリアを完全落城させることができず、戦況は底なしの泥沼(無限耐久)へと突入していった。
――その頃、都の地下深く。江戸川海底都市の荘厳な神殿にて、サ・バ・ンナは海底民族の兵たちとともに、着々と牙を研いでいた。
「地上では陀下門殿とゆるるが、チーかまの怒濤を喰い止めているはずだ……」
サ・バ・ンナの眼前には、海底都市の特殊な技術で鍛え上げられた青く輝く甲冑と、深海の高圧に耐えうる巨大な槍の山が積み上げられていた。海底民族の長が、サ・バ・ンナの肩を力強く叩く。
「準備は整ったぞ、サ・バ・ンナ。我ら海底の軍勢、いつでも地上へ解き放てる」
「感謝する。チーかま軍が足立や江戸川の自治区へ矛先を向け、自らの戦線を極限まで広げ切ったその時こそ……俺たちが地下から浮上し、逆襲の狼煙を上げる瞬間だ!」
地上で耐え続ける者たちと、地下で力を蓄える者たち。
引き絞られた弓の弦のように張り詰めた緊張感の中、反撃の時は刻一刻と近づいていた。




