第十二話:本蓮沼の攻防と、サ・バ・ンナ無き常盤台
文京国を力任せにねじ伏せ、ちくわ天皇を擁して「官軍」の旗を掲げたチーかま軍。
参謀・紋派の冷徹な盤面分析のもと、チーかま軍の膨張する野望は、ついに隣接する本蓮沼と、大将を失った常盤台エリアへと向けられた。
「文京はすでに我が手中にあり。朝廷の威光は北区にあり。残る反乱の芽を根こそぎ摘み取るぞ」
北区の本陣から、紋派の静かな命令が下る。
チーかま軍の圧倒的な軍勢は、まず本蓮沼の深き湿地帯へと侵攻を開始した。
「チーかまの狐どもめ……力づくで奪いに来たか!」
本蓮沼の主・陀下門は、泥に塗れながら重厚な太刀を引き抜いた。
「いい国をつくる」という泥臭くも揺るぎない信念のもと、本蓮沼の武士たちは地元の湿地を活かした足止めのゲリラ戦で抵抗を試みる。
しかし、朝廷をバックにつけたチーかま軍の兵糧供給は無限に近く、紋派の隙のない陣形展開の前に、本蓮沼の防衛網は一歩、また一歩と削り取られていった。
一方その頃――。
首領であるサ・バ・ンナが極秘裏に埼玉へ追放され、大頭目を欠いた常盤台エリアにも、チーかま軍の魔の手が迫っていた。
「くっ……! 兄上がおらぬ今、我らが常盤台と前野町を守らねばならんというのに……!」
前野町を拠点とする若き将・ゆるるは、常盤台の境界に防衛線を張りつつ、悔しさに歯噛みしていた。
サ・バ・ンナという絶対的な支柱を失った常盤台の兵たちは動揺を隠せず、チーかま軍の巧みな情報戦と圧倒的な威圧の前に、戦意を削がれていく。
「ゆるる様! 本蓮沼の陀下門殿より伝令! 『持ちこたえられぬ、引き際を見極めよ』とのこと!」
「……耐えるのだ! 追放されたサ・バ・ンナ兄上は、必ずどこかで生きておられる……! 今は滅びるわけにはいかん!」
北区から伸びるチーかま軍の影が、本蓮沼と常盤台をゆっくりと、そして確実に呑み込んでいくのであった。




