第十一話:地下水路の導きと、深海都市への旅立ち
未開の地・埼玉の果て。
サ・バ・ンナと固い盟約を結んだ海底民族の長は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、凍りついた荒野の岩肌を槍の柄で強く叩いた。
ゴゴゴ……と激しい地鳴りとともに、岩壁が大きく割れ、巨大な地下空洞への入り口が姿を現す。そこからは、見たこともない湿った温風と、濃厚な潮の香りが吹き出してきた。
「陸の武士サ・バ・ンナよ。我らが本拠地……深海の都へ案内しよう。チーかま軍を打ち破るための真の武力は、そこにある」
「深海の都……埼玉の地下に、そのような場所があったとはな」
サ・バ・ンナは驚きを隠せない。海底民族の導きに従い、暗闇の地下空洞へと足を踏み入れると、そこには都の者たちが誰も知らない巨大な地下水路網が広がっていた。
「この水路は、埼玉と都(23区)を隔てる大河『荒川』の真下を貫いているのだ。地上を通ればチーかま軍の巡視兵に見つかるが、この闇の地下水路を使えば、奴らの目を完全に盗んで都の地下を縦断できる」
闇の中に広がる青白く光る発光サンゴの灯りを頼りに、一同は地下水路を南下していく。頭上からは、地上を流れる荒川の雄大な水鳴りがゴロゴロと響いていた。
赤羽、足立、葛飾……地上ではチーかま政権の兵たちが目を光らせている地下を、サ・バ・ンナたちは密かに、そして着実に進んでいく。
そして数日の旅路の果て――。
地下水路の出口が開けると、そこには都の東端・江戸川区の地下深くに広がる、息を呑むほど壮大な『海底都市』が広がっていた。
透き通る青い水に包まれ、古代の建築物と美しいサンゴ礁が聳え立つ異世界の光景。
「……ここが、我らが誇る『江戸川海底都市』だ」
サ・バ・ンナは、眼前を満たす圧倒的な青い光と海底都市の威容を見上げ、握りこぶしを強く握りしめた。
「凄い……! ここで力を蓄えれば、必ずや常盤台を取り戻し、チーかま軍を叩き潰せる……!」
反撃のための壮大な冒険は、いま始まったばかりであった。




