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見破る男  作者: パンジ
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21/22

真実

バンッ!!


屋上の扉が勢いよく開く。


由美は息を切らしながら立ち尽くした。


月明かり。


海風。


錆びた鉄の匂い。


その中央に。


伊藤タケルは立っていた。


春人を抱いたまま。


屋上の縁に立っていた。


そして。


三メートルほど離れた場所には、真島アキラが転がされていた。


手足を縛られ。


口元から血を流しながら。


長い沈黙。


誰も動かない。


ただ。


由美とタケルだけが、互いを見つめ合っていた。


最初に沈黙を破ったのはアキラだった。


「由美!!」


「早く縄を解いてくれ!!」


「頼む!!」


だが。


由美は微動だにしなかった。


その時。


バンッ!!


再び屋上の扉が開く。


田中刑事だった。


田中は即座に拳銃を抜き、タケルへ向ける。


「伊藤タケル!!」


タケルの目が鋭くなる。


「近づくな!!」


タケルが吠える。


「もし近づいたら、子どもを落とすぞ!!」


その声に、田中の動きが止まる。


春人はタケルの腕の中にいる。


少しでも刺激すれば。


本当に落ちる。


田中は銃を構えたまま動けなかった。


海風だけが吹く。


由美の目から涙が零れ落ちる。


「タケル……」


「私は、どうしたらいいの……?」


掠れた声。


タケルは静かに答えた。


「由美」


「僕の要求は、一つだ」


タケルの目が、真っ直ぐ由美を見る。


「命を助けたかったら」


「この子の本当の父親を殺せ」


沈黙。


由美はゆっくり頷いた。


「……わかったわ」


田中の顔色が変わる。


「おい!!」


由美は静かにアキラの方へ歩いていく。


アキラが青ざめる。


「お、おい!!」


「何する気だ!!?」


「やめろ!!」


「頼む!!」


「殺さないでくれ!!」


田中が叫ぶ。


「よせ!!」


だが。


由美はアキラの前で止まった。


そして。


ゆっくりタケルの方へ向き直る。


由美は、ただタケルを見つめていた。


涙を流しながら。


タケルは静かに聞く。


「……これが」


「真実なんだね?」


由美は、ゆっくり頷いた。


「タケル、あなたを殺すわ」


長い沈黙。


やがてタケルは。


そっと春人を由美へ渡した。


春人の小さな目が、由美を見つめる。


由美は震える手で春人を抱き締めた。


その瞬間。


糸が切れたように、タケルは静かに後ろへ倒れた。


「タケル!!!!!」


数秒後。


ドシャァァン――!!


海へタケルが落ちる音だけが響く。


田中が屋上の縁へ駆け寄る。


「馬鹿野郎ッ!!」


だが。


暗い海の中に、タケルの姿は見えなかった。


由美は春人を抱き締めたまま、崩れ落ちた。


泣き声だけが、夜の港へ響き続けていた。

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