倉庫
事件発生から4日目の夜
本牧埠頭。
海風が、重く吹いていた。
海沿いの巨大な倉庫群の前へ、パトカーが到着する。
赤色灯が、暗い港を不気味に照らしていた。
田中刑事は車を降りるなり、周囲を見回す。
すでに現場へ到着していた若い刑事が駆け寄ってきた。
「このエリアの倉庫は全部で十六棟です!」
「かなり広いです!」
田中は舌打ちした。
「片っ端から見ていくしかないか……」
「応援は?」
若い刑事は苦い顔をする。
「大和市の捜索から連続ですからね……」
「到着かなり遅れてるみたいです」
田中は低く息を吐く。
「仕方ない」
その時。
吉井が無言で時計を指さす。
「時間がない。手分けするぞ」
「そっち頼む!」
吉井は振り返らず手だけ上げる。
巨大な倉庫群。
一棟調べるだけでも、相当な時間が掛かる。
静まり返った港。
田中は一棟目の屋上を調べていた。
その時だった。
視界の端を、人影が横切る。
「……っ!?」
女だった。
「由美か!?」
田中は即座に踵を返す。
「待て!!」
だが由美は止まらない。
由美は走っていた。
息を切らしながら。
本牧埠頭の倉庫。
その言葉を聞いた瞬間、直感したのだ。
――あそこだ。
昔。
タケルと何度も忍び込んだ、使われていない倉庫。
夜景を見に行った。
海を見た。
キスをした。
タケルは必ず、そこにいる。
由美は全力で走る。
やがて。
古びた倉庫が見えた。
由美は息を切らしながら、ゆっくり顔を上げる。
その瞬間。
屋上。
月明かりの中に。
一人の男のシルエットが浮かんでいた。
子どもを抱いている。
伊藤タケルだった。
由美はフェンスの裂け目をこじ開け敷地に入る。
そして、4階のさらに屋上まで駆け上がる。




