背後
真島アキラが連れ去られたという情報は、瞬く間に警察内部を駆け巡った。
「現職警察官による連れ去りです!」
「警備へ紛れ込んでいた模様!」
捜査本部が騒然となる。
警察官による犯行。
最悪だった。
誰が敵なのか分からない。
現場の空気が一気に張り詰める。
「連れ去り車両を追え!!」
「全パトカーへ連絡!」
「検問を展開しろ!!」
無線が飛び交う。
警察組織そのものが揺れ始めていた。
その頃。
田中刑事のスマホが鳴る。
「……田中だ」
数秒後。
田中の表情が変わった。
「何だと?」
周囲の刑事達が一斉に顔を向ける。
「横浜市内の大学病院前で」
「乳児が置き去りで保護された」
部屋の空気が止まる。
「年齢は?」
『一歳前後』
田中はすぐに立ち上がる。
「吉井に繋げ」
数秒後。
『……もしもし』
「由美を連れて大学病院へ来い」
「春人が見つかった可能性がある」
一方その頃。
アキラを乗せたパトカーは、人気の無い高架下へ入っていた。
急ブレーキ。
そこで別の黒い車へ乗り換えさせられる。
アキラの両手には、すでに手錠が掛けられていた。
「おい……」
「これ、本当に警察署に向かっているのか?」
運転席の男は答えない。
ただ前だけを見ている。
車はそのまま、海沿いの倉庫街へ向かった。
やがて。
人気の無い倉庫前で停車してアキラを強引におろす。
その時。
スマホが鳴った。
警察官は震える手で電話へ出る。
「言われた通り……!」
「真島アキラを連れてきた!」
男は怒鳴る。
「娘は!?」
「娘はどこだ!!?」
電話の向こうの声は聞こえない。
やがて通話が切れる。
警察官は数秒、その場で固まっていた。
そして。
アキラを見ようともせず、車へ戻る。
「おい!!」
「待て!!」
アキラが叫ぶ。
だが。
車はそのまま猛スピードで走り去った。
静寂。
海風だけが吹いている。
「……くそっ」
アキラが周囲を見回す。
その時だった。
背後から、足音。
アキラが振り向こうとした瞬間。
ゴッ!!
鈍い音。
強烈な一撃が後頭部へ叩き込まれる。
視界が揺れる。
崩れ落ちる寸前。
ぼやけた視界の中に、一人の男が立っていた。
アキラの身体を引きずるようにして、倉庫の奥へ消えていった。




