拉致
事件発生から4日目
真島アキラ邸。
アキラは、どこか高を括っていた。
警察から事情は聞かされている。
タケルが誘拐犯になって自分を殺そうとしてることも。
だが。
アキラの中では、どこか現実感が薄かった。
――どうせ、そのうち捕まる。
タケルの行動は確かに異常だ。
だが、警察相手に永遠に逃げ切れるわけじゃない。
そう思っていた。
「……はぁ」
アキラはソファで煙草を弄びながら、大きく息を吐いた。
そしてゆっくり立ち上がる。
「どちらへ?」
監視役の刑事が聞く。
「トイレだよ」
アキラは面倒臭そうに答えた。
刑事は小さく頷く。
数分後。
トイレのドアが開く。
アキラが出てきた瞬間。
ガシッ。
突然、警察官がアキラの腕を掴んだ。
「っ!?」
アキラが驚く。
警察官は低い声で言った。
「今すぐ来てください」
「警察署へ移動します」
「は?」
アキラは眉を顰める。
「おい、急に何だよ」
「説明しろよ」
だが警察官は答えない。
そのままアキラを強引に外へ連れ出した。
「おい!!」
「離せって!!」
アキラは抵抗する。
だが相手の力が異常に強い。
そのまま玄関を出され、パトカーへ押し込まれる。
バタン!!
ドアが閉まる。
その頃。
別室にいた監視担当の刑事が、ふと違和感を覚える。
静かすぎる。
刑事はトイレへ向かった。
ドアを開ける。
誰もいない。
「……っ!?」
刑事は即座に窓を見る。
その瞬間。
一台のパトカーが、もの凄い速度で門を飛び出していくのが見えた。
「まずい!!」
刑事が叫ぶ。
パトカーの中。
アキラはシートへ身体を押し付けられながら怒鳴った。
「おい!!」
「なんでこんな飛ばすんだよ!!」
「説明しろ!!」
すると。
運転席の警察官が、ふるえる手で拳銃を取り出した。
カチャ。
黒い銃口が、アキラへ向く。
「……黙って大人しくしていろ」
低い声。
アキラの表情が凍る。
その警察官の目は。
明らかに普通じゃなかった。
本気だ。
アキラは初めて、自分が本当に狙われている状況にいる事を理解した。




