爆発
事件発生から2日目の昼1時。
あれ以来、タケルからの電話はなかった。
警察も情報不足で何も動けないでいる。
伊藤家には、重苦しい静寂が漂っていた。
由美はソファで眠っていた。
いや。
眠っているというより、気絶に近かった。
目の下には濃い隈。
呼吸も浅い。
精神も体力も、限界だった。
その時。
バンッ!!
玄関が勢いよく開く。
白木刑事が駆け込んできた。
息を切らしている。
「今、連絡入りました!」
「山下公園に、不審なベビーカーが置いてあるとのこと!」
「形状から春人くんのベビーカーと同一のものと考えられます」
その瞬間。
田中が立ち上がる。
「……っ!」
椅子が激しく音を立てる。
「よし、すぐ向かえ!」
「所轄には絶対近づかせるな!!」
山下公園。
海沿いの遊歩道。
観光客も多い場所だった。
現場へ到着した刑事達は、すでに集まり始めていた野次馬を押し退けながら進む。
少し離れた場所で、所轄警官が青ざめた顔でベビーカーを指差していた。
「……あれです。中をのぞいたんですが、人形みたいなものが見えて」
ベビーカーは、公園の中央付近にぽつんと置かれていた。
山根刑事が唾を飲み込む。
「よし……とりあえず確保するぞ」
もし春人くんが中にいるなら、一秒でも早く――。
刑事が一歩踏み出した、その瞬間。
バンッ!!!
爆音。
ベビーカーが爆発して宙をまった。
火炎と黒煙が一気に噴き上がる。
「うわぁっ!!」
山根刑事は衝撃波で吹き飛ばされ地面へと倒れる。
周囲は一瞬で騒然となった。
山根刑事は警察官に抱えられながら、震える声を漏らす。
「……危なかった」
「もし中の人形をつかんでいたら……」
伊藤家。
無線から怒号が飛び交う。
田中は報告を聞きながら、机を強く叩いた。
「わかった……」
低い声。
「タケルのやつ、警察にも邪魔はさせないって事かよ……!」




