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友達の山田くんには秘密がある  作者: 片山絢森
クラスメイトも色々ある

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みどりはちょっと抜けている‐5


    ***



 異変が始まったのは午後の事だった。


「あれ、財布がない」

 気づいたのはお昼時だ。パンを買いに行こうと思ってポケットを探ったら、あるはずの財布が消えていた。


「ねえ、誰かあたしの財布知らない?」

「え、やだ、落としたの?」

「さっき購買行ってきたから、その時まではあったんだけど……」


 おかしいなあと首をひねる。その時はノートを買ったはずだ。移動教室の途中だったので、急いでポケットに突っ込んだのは覚えている。

 勘違いかと思い、鞄の中を探してみる。だが、やはり財布はなかった。


「もしかして、盗まれたとか?」

 誰かが口にしたセリフに、どきっとする。


 そんなはずはないと思ったけれど、実際、財布はない。

 一気に血の気が引いた後、じわじわと顔が熱くなる。あの中には全財産が入っている。あれをなくしたら、しばらく何も買えなくなる。それ以上に、誰かの悪意だと思ったら、急に怖くなってしまった。

 どうしようと思っていると、奏ちゃんが駆け出した。


「途中で落としたのかもしれないよ。あたし、探してくる!」


 彼女は移動教室の時も一緒にいたから、どこを通ったのか知っている。女の子の友情は儚いというけれど、奏ちゃんは例外だ。いつでもみどりを心配して、みどりの事を守ってくれる。

 出そうになった涙を飲み込み、みどりはぎゅっと手を握った。


 ふと背後を見ると、オタクの田中くんが挙動不審になっている。

 いきなり床に伏せて、ゴキブリのようにカサカサしている。何をしているのか分からなかったが、追及するのも怖いのでやめた。なんかほんとに、なんなんだろう、彼。


 彼の心情を理解する心の余裕はなかったので、見なかった事にする。田中くんはいつまでもカサカサしていた。


 財布はその後、自販機の影から見つかった。

 どうやら購買の脇に落ちていたらしい。見つけたのはクラスメイトの男子だった。

 ごく平凡な、特徴のない少年だった。



    ***

    ***



 続く事件は翌日だった。

「やだ、教科書がない」


 確かに入れたはずの教科書が、机の中から消えていた。

 この間ははっきりしなかったけれど、今回は違う。確実に、教科書は机に入れてあった。

 友人達はまた? とか、何してんのよと言って笑っている。みどりだって他人事なら、同じように笑ったかもしれない。

 ――でも。


「勘違いってことはない? 他の場所も探してみよう」


 奏ちゃんに言われ、みどりはうん、と頷いた。嫌がらせよりその方がいい。思い違いの方がずっといい。祈るような気持ちで鞄を探し、机の中を総ざらいする。

 だが、教科書はなかった。


「どうしよう……」

 おろおろしていると、わっと小さな歓声が起こった。


 どうやら慌てるみどりを見かねて、誰かが教科書を見つけ出してくれたようだ。

 見つけてくれたのは知らない男子生徒だった。なんかどこかで見たような気がするけれど、忘れてしまった。同じクラスなのにごめんねと思う。みどりは人の顔を覚えるのが苦手だ。


 差し出されたのは確かにみどりの教科書だった。名前もちゃんと書いてある。お礼を言って受け取ると、彼はうん、と頷いて離れていった。


「よかったね、みどり」

 奏ちゃんが息をつく。


 教科書はロッカーの隅に置かれていた。まるで誰かに置き忘れられたように。

 みどりもほっとしていたが――それ以上に冷や汗が流れた。


 だって、みどりは確かに机に入れた。

 間違えてはいけないと思って確かめたから覚えている。教科書は机の中にあった。そして、みどりは動かしていない。絶対に、絶対にだ。

 だとすれば――答えはひとつ。


 誰かがみどりの机に触れた。

 悪意を持って、教科書を移動させたのだ。

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