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友達の山田くんには秘密がある  作者: 片山絢森
クラスメイトも色々ある

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15/43

田中は山田が気に食わない‐4


 もうやめよう。

 敗北感に苛まれながら、田中は唇を噛みしめた。


 田中は山田に敵わない。

 認めたくはなかったが、それは真実だった。

 そもそも、スタート地点から違っていたのだ。


 田中は目立たないようにしていたが、山田は本当に目立たなかった。

 田中は一発逆転を狙ったが、山田は狙っていなかった。

 田中は悪目立ちしたが、山田は普通に目立っていた。


 認めよう。

 山田は目立たない男だった。

 ――そして、田中よりはるかに目立つ男だった。


 いつもは影が薄いけれど、ここぞという時には活躍する。それが山田だ。

 たとえ目立っても態度を変えず、次の瞬間には気配を消す。田中がそうなりたいと思っていた存在そのものだ。自分が認めただけの事はある。偉そうで申し訳ないが、断言する。山田はすごい。


 そして自分は……認めたくないが、単に目立ちたいだけの男だった。


 目立たない事に突出したい? 存在感がない山田が腹立たしい? よく考えろ、そんな事はなかった。


 田中は山田よりも目立ちたかった。

 彼より活躍し、クラスのみんなに話しかけられ、輝かしい青春を歩みたかった。

 それが分かった今、理不尽な怒りは消え失せている。

 ただ、ひどい自己嫌悪があるだけだ。

 カーテンの影で落ち込んでいると、誰かが入ってくる気配がした。


「……だから、違うっつーの!」

「いいっていいって。認めろよ峯田、それは愛だ」

「愛だよな」

「殺すぞお前ら!」


 物騒な事を言いながらやってきたのは峯田くんのグループだった。今日も顔に絆創膏を貼りつけている。


「あれ、なんか落ちてる」

 息を殺していると、彼らのひとりが何かを拾い上げた。


「なんだ、宮園のパスケじゃん」

「あいつ、マジでよく物落とすよな。峯田と同レベルの不幸体質」

「一緒にすんな!」


 彼らが拾ったのは宮園さんのパスケースだった。近くに鞄が置いてある。どうやら、何かの拍子に落ちてしまったらしい。

 そのまま机に戻すのかと思ったら、峯田くんがにやりと笑った。


「いいこと思いついた」

 パスケースを持ったまま、彼は後ろの席へと歩き出した。行き先は山田の机だ。


「えー峯田、さすがにちょっと引くわそれ」

「女の子に意地悪すんなよ。山田はいいけど」


 いいのかよ。

 内心で突っ込んだが、口には出せない。


「うっせえな、黙ってろ」

 いいんだよと言いながら、峯田くんがパスケースを山田の机に放り込んだ。中がどうなっているのか知らないが、パフンと乾いた音がする。


「何度も山田が活躍したのは、あいつの自作自演だった。名案だろ?」

「うっわドン引き」

「オレも引いた。峯田サイテー」


 口々に言いながらも、それ以上止めるつもりはないらしい。ものすごく悪いやつらではないけれど、お世辞にもいい性格はしていない。

 そのうちの片方が、「お祓い行っとけよ峯田」と、おちゃらけたように口にした。


「あーあ、ほんとに歪んでる」

「愛をこじらせると面倒だよな。ヤンデレっていうらしい」

「ツンデレじゃねぇの?」

「殺すぞお前ら!!」


 にぎやかに話しながら、彼らが歩いていってしまう。

 カーテンの影から抜け出すと、田中はごくりと息を呑んだ。


 どうしよう。

 この場合の選択肢は二つだ。

 ひとつは何も知らなかった事にして、成り行きに身を任せる。山田は大変な事になるだろうが、自分はノーダメージだ。


 もうひとつは真実を明らかにして、山田の疑いを晴らす事。

 峯田くんには恨まれるだろうが、指紋を調べれば一発だ。山田はノーダメージな上、宮園さんにも感謝される。


 ……だが、自分は再起不能なダメージを負うだろう。峯田くんはクラスの中心人物 (イケメン)であり、自分は戦闘力ゼロの陰キャである。彼に睨まれたら、おそらくこのクラスでは生きていけない。


 どちらもあんまり乗り気になれない。特に二つ目のは絶対嫌だ。峯田くんに恨まれるのは怖い。

 それなら、別の選択肢を見つけなければ。

 もうひとつの選択肢は――。

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