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友達の山田くんには秘密がある  作者: 片山絢森
クラスメイトも色々ある

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14/43

田中は山田が気に食わない‐3


    ***



 続く事件は翌日に起こった。


「やだ、教科書がない」

 訴えたのは昨日と同じ女子だった。


「え、また?」

「何してんのよ」

 昨日の出来事があったからか、友人達も笑っている。


 どうせどこかに置き忘れたか、家にでも忘れてきたのだろう。案の定、教科書はロッカーの隅から見つかった。見つけたのは山田だった。

 普段使われていないところだが、そういう事もあるだろう。彼女も納得し、それで騒ぎは収まった。


 三度目は体育の後に起こった。


「どうしよう、靴下がない」

 砂で汚れるのが嫌なため、替えを用意していたという。その替えがなくなっていたらしい。声を上げたのはやはり同じ女子だった。確か、名前は宮園(みやぞの)さんだ。


「ちゃんと入れたのに。体育が始まる前は、確かにあったのに」

「もっとちゃんと確認した?」

「ジャージのポケットは? 鞄の隅も見て」

 友人が口々に言い、少女は泣きそうな顔で探している。その時、田中ははっとした。


(あれは……!)


 ジャージを入れたバッグの隅から、白いものがのぞいていた。考えるより早く、田中は彼女の元へ向かった。


「こっ、こここ、これっ……!」

「え?」

「これ、こっ、これ、く、くつ、靴下じゃ……っ」


 指先でつまみ出したものに、宮園さんは一瞬呆け、それから真っ赤になって叫んだ。


「キャ―――――ッ!!」


 無言でひったくり、涙目でにらみつける。周りの女子もいぶかしげにそれを見ている。


「あたしの下着よ! 汗かいたから着替えたの! なんなのバカ、サイッテー!」

 涙目で叫んだ彼女に、女子が一瞬で状況を悟る。


「うわ、マジで?」

「下着触るとか……」

「ありえない。マジ変態」


 氷のような視線が突き刺さる。違うと言いたくても、声が出ない。嫌な汗がだらだらと流れてくる。どうしようと田中は思った。


 どうしよう、このままでは人生の破滅だ。

 まさかこんな事で足を踏み外すなんて。

 下手に活躍しようなんて考えなければよかった。陰キャは陰キャらしく、日陰で生きていればよかったのだ。

 美少女高校生探偵が成立するのは、あれがアニメの世界だからだ。どこの世界にイケメンエリート刑事を顎で使う女子高生がいるというのだろう?


 やってしまった。

 やらかしてしまった。

 後悔しても後の祭りだ。クラスの全員が自分を見つめている。


 どうしよう、自分は馬鹿だ。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 そう思った時、「違うよ」と澄んだ声がした。


「田中くん、靴下探してくれてたんだよ」

「え……そうなの?」

「この間も探してくれてたよ。私、見てた」


 声を発したのは、クラスでも目立たない女子だった。メガネをかけた地味な顔立ちで、気が強くて美人な友達がいる。彼女はその友達に「ね、(なお)ちゃん」と言った。


「あーうん、あたしも見てたわー」

 一瞬めんどくさそうな顔をした後、仕方なさそうに彼女が言う。美人はメガネ女子に甘い。彼女は田中をちらりと見た後、心底どうでも良さそうな口調で言った。


「それにそいつ、下着触るような度胸ないでしょ。ひとりならともかく、クラスメイトの前だよ?」

「あ……そういえば……」


 はっと宮園さんが胸を押さえる。


「つーか、何度もなくしすぎ。お祓い行きなよ、ミスターと一緒に」

 そこでみんながどっと笑った。


「ミスターは無理だわー」

「行く前に危ないって。尚ひどーい」

「ミスターはねー。顔いいのにねー」


 あははははっと笑う彼女達に、田中は呆然とした。

 え、何これ。なんだこれ。

 よく分からないまま、空気が変わったのを感じる。


「はいはい、んじゃ田中に謝って、これでおしまい。靴下どこだろねー」


 さらっと流れを変えてくれた本人は、そう言うと田中の肩を叩いて去っていった。残された宮園さんは、きまり悪そうに「…ごめんね」と言ってくれる。

「い、いや、ぼ、僕の方こそっ……」


 ほっとした。

 泣きそうだった。

 余計な事をしなきゃよかったと思ったけれど、無事でよかった。


 半分泣きそうになりながら、田中は自分の席に戻った。

 靴下はその後、更衣室脇で見つかった。見つけたのは山田だった。

 ミスターが不幸男こと峯田くんのあだ名だという事を、後になって田中は知った。ちなみに、「ミスター不幸男」の略称らしい。

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