D級昇格クエスト―――緊急事態発生。
一日、遅れました。
誠心誠意、非礼を詫ます。
どうか、お許しを。
麦粥を食べた後、ケーラさんがさっき言っていた「魔力切れ」に付いて聞いてみた。
「魔法使いでも無いのに、魔力切れになんてなるんですか?」
「ええ。そもそも、闘技は魔力を使って使われるのは知っていますよね?」
これは、勿論。
闘技の説明書きとかでも書いてあったし。
「それは魔力を使い必要な威力を出し、魔力を使いその技を補強するからです。当然、そうすれば自分の中の魔力は外へ行くので...魔力量が極力少なくなったら、体が自動的に魔力を取り入れるがために休息に入るんです。」
「なるほど。理解はしました。...ですが魔力量を気にせずに『飛斬』を連打、とかはできないんですか?」
「あー、『飛斬』って確かあの飛ぶ斬撃の闘技ですよね?上級剣士になり、十分技を熟知すれば、達人なら魔力を使わずに必要な威力と補強ができるそうですよ。あ、でも飛斬の場合は周辺の魔力を使って斬撃を作るんでしたっけ?」
どうもケーラさんの話によると、普通に自分の力で闘技を真似するように技を使う方法と、周辺の――すなわち、自分の魔力は使わずに闘技を使う方法の二種類があるらしい。
これは強いて言えば好みの違いだそうだが、自分の力と技だけで使うほうが世間的に凄いと。
「...もう一つ、夢ができた。」
「ダメだからね!?また突っ走って一週間で上級戦士になろうとかしちゃダメだからね?!」
「は、はい、長期的な夢にします」
圧が凄い。
あれかな?
実はケーラさんも元冒険者だったとか。
「まぁ、いいわ。こんなに早く魔力切れから回復したんだから、むしろ良いほうだし。」
「...ん?普通はどれくらいで回復するんですか?」
窓の外を見ると、帰ってきたときは黄金色だった陽が、今ではすっかり山に隠れている。
ざっと二時間ぐらい、だと思うが...?
俺は嫌な予感を感じていた。
「普通は二日ぐらいね。」
「ファ!?え、じゃあ俺はどれ位...」
「一日と少しよ。」
クッッッッッッッソー!!
ご都合主義めがぁぁぁぁぁ!!
「こうしちゃいられねぇ、早速昇級クエストを!」
「ダァーッ!!ダメだって!まだ安静にしてないと、体の調子だって整ってないんだから!!」
ー✦翌日✧ー
「ご馳走様でしたぁ!」
「まぁ、本当に二人前食べちまったかい!ほんじゃ、行ってらっしゃい」
「行ってきますぅ!」
ー✦五分後✧ー
「昇格クエストぉ!」
「キャー!そんなに急かさなくたって発行するわよ!」
「どうせ止めたって聞かないだろうしね...」
ケーラさんはぶつくさ言いながらもしっかり発行の準備をしてくれていた。
だが、その作業は途中で止められた。
「おい!大変だぞ!」
「ダ、ダンさん!?なんでここに?確か昨日帰ったんじゃ?」
それは、喧騒と共にギルドに入ってきたダン教官だった。
そっか、昨日は丸一日潰れたからその内にダン教官がここに居られる二日が過ぎたのか...
ってか、帰って一日ってところか。
なのに、なんで?
そう思いながらも、俺の胸は高鳴っていた。
何故ならこんなシチュ、絶対あれしか無いっしょ!
「緊急事態だ!C級のアサルトボアが山を越えてきたぞ!」
グッジョブ、ご都合主義!
「え!?そ、そんな...ここには初心者、F級からD級までしか居ないわよ?!」
「ああ、知っている。勿論、俺も出陣する。ここのギルドマスターは...文官系だったな。そうだ、ジェリクが居たか。アイツは連れていきたい。...それくらいか。よし、ならジェリクの準備が整い次第...」
「待ってくださいダン教官!」
俺は、たまらず割って入った。
「なんだ、ゲント...まさか、てめぇも付いて行くだとか言うなよ?」
「実力的には問題ないと思います!」
「ダメだ!!!」
シーンと、場が静まる。
今まで、これまでの罵倒じみた喝よりも遥かに力の篭った喝。
だが、俺は食い下がった。
「で、ですが、俺なら何かの役に立つかもしれません!」
「だとしてもだ!!良いか、よく聞けゲント。お前は、いずれAやS級に上がる逸材だ。だが、だとしても危険な賭けに出てはいかん!冒険者が『冒険』して良いのは守るものがある時だけだ!」
「ッ...」
途端、心が静まり、冷静になる。
確かに、これは危険だ。
ケーラさんによると、俺は精々C級程度の実力しかないそうだ。
そして、この魔物はC級。
確かに、危険な賭けだ。
だが、だけど、だとしても!
冷静になったからこそもっと切実な、もっと沸々と中から湧き出るような思いが!
このイベントを逃したくないと言う思い以上にも...!
「俺は、この街が、守りたいです!!!」
また、水を打ったように静まり返るギルド。
「...本気か?」
「はい!」
「覚悟はできたか!!」
「はい!!!」
「なら、俺はお前を止められねぇ!!勝手に付いてこい、命知らずが!!」
「ッ...はい!!!!」
「俺の準備はできたz...スマン、間が悪かったか?」
他の冒険者も感動して静かになった途端。
漫画なら、そこで一話終わると言うシーンに。
ギルドの奥から出てきたジェリクさんは空気をを読まず、普通のトーンで割り込んだ。
ご都合主義は、想定していない事や考えたことがないことに対しては、対応できないらしい。
ー✦平原にて✧ー
ダン教官と、ジェリクさんと、俺は、一頭の巨体と向き合っていた。
高さ、幅、共に三メートル。
鼻先から尻までは、五メートル。
象ほどデカイコイツが―
〔ブギィーー!!〕
C級【アサルトボア】
戦いの火蓋は、豚が切った。
誤字、脱字、その他諸々の難点をお教えください。
全て読み、善処します。
読んでくれて有難うございます。




