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あっちでもこっちでも決戦です!

なに、あのソルガとか言う男。

チャラいのが気に食わないとかそんなんじゃない。あいつは警戒すべきだって騎士としての経験が、本能がそう言ってる。


「セリは軟派な人が嫌いなのね」


お姉さまは私の不機嫌の原因を勘違いしてるみたいだけど、まあいいや。余計な心配をかけさせる事はない。



私たちがリオンのいた辺りにもどると、リオンとソフィーは2人で仲良く弁当を広げていた。ソフィーが用意してきたであろう弁当は二つ。


やっぱりお姉さまの弁当要らないんじゃん。なのに頼むとかひどくない?


「お待たせいたしました。殿下」


ふて腐れたようになりそうな顔を必死で笑顔にする。ホント、令嬢って大変だよね。早く騎士団に帰りたい…


「いや、わざわざありがとう。弁当は?」


「こちらです」


お姉さまがリオンに弁当を差し出して私に目配せしてくる。


えー…やるの?アレ。私は食べ物を粗末にするのは嫌だから、弁当の悪口を言うだけにして貰ったけど。


「ソフィー様もお弁当を作っていらっしゃったんですね。それにしても…」


私はわざとらしくソフィーの弁当を見て口を開いたんだけど、続きが出てこない。


何だろう…コレ。謎の白い三角の物体には黒いモノが巻いてある。他のものは何となく近い料理があるから分かるんだけど、それの放つ異常な存在感に釘付けになってしまった。


「庶民くさい…あの、その三角の食べ物はなんですか?」


放とうとした罵詈雑言は好奇心に負けてしまった。


「あー…それは私も不自然だと思ったのよ…」


お姉さまが小さく呟いた。もしかしたらこの謎の食べ物はお姉さまの言う『乙女ゲーム』と関係があるのかもしれない。


「気になるのなら食べてみればいい。俺は弁当を二つも食べれないからな」


ちゃっかりお姉さまの手作り玉子サンドを食べながらリオンが言う。


「でも、私もおねっ…自分で作ったものがありますよ」


「それはそこのメイドに食べさせればいいだろう。弁当が4つ、人も4人。丁度いい」


ナイス!殿下!お姉さまと一緒にご飯食べれる!


「そうですね。そうしましょう」


「えっ!あの、私は一介の使用人でしてそんな恐れ多い「命令だ。座って食え」


唖然として事の成り行きを見守っていたお姉さまが慌てて逃げようとしたけど、リオンの一言で逃げられなくなってしまう。


「…はい」


お姉さまがしぶしぶ座ってランチがスタートした。


「相変わらずアリアの玉子サンドは美味しいな」


お姉さまが嬉しそうに破顔する。


「ありがとうございます」


私は口ではそういいつつ、目は今手に持っている謎の食べ物に釘付けだ。さっきから黙々と食べているソフィーの様子を見る限り、手で持ってかぶりつくらしい。


えい!


うん?不思議な食感…でも意外と美味しい…


「どうだ?味は」


「そうですね…今まで食べた何とも違う…あっ中から焼いた魚が出てきました!」


「その黒いのは食べられるのか?」


「はい!一種の海藻ですかね…?」


二人でふむふむと謎の食べ物を分析していると


「あ、あのー」


と遠慮がちに呆れた顔をしたお姉さまが指差すのは涙ぐんでいるソフィー。


「ひどいです…アリア様。いくら公爵でお金持ちだからって、高いお弁当でリオン様の気をひくなんて…!」


えええー。何その言いがかり。殿下は最初っからお姉さまの弁当食べる気満々だったじゃん。あと、たぶんお姉さまの弁当そんな高級食材とか入ってないよ。


「…ところで。ソフィー殿の弁当に入っている食材はこの国では見られない物が多いようだが、どこで手に入れたのだ?」


リオンが露骨に話題を変えた。


「へ?これは、父に頼んで外国から輸入したものです」


ソフィーがキョトンとして答える。

あ、この子バカだ。


「それは、とても金がかかっていそうだな。態々すまない」


殿下の言葉にソフィーは顔を真っ赤にして俯くと、


「リオン様なんか知らないっ!」


そう言って走り出してしまった。


「追いかけなくていいんですか?」


お姉さまがリオンに聞く。


「なんで?」


ですよね。


***


午後の部も私は当然の如く順調に勝ち進んで、とうとう決勝戦になった。


相手はあのソルガだ。


お姉さまは途中でソルガが大会に参加していること、そして勝ち進んでいるのに気づくと「なんでー?」と顔を青くしていたけど、私にとっては好都合。


その化けの皮を剥いでやる。


「お手柔らかに。ソルガ様」


微笑んで私は告げる。


「それはこっちの台詞っすよ。俺が決勝とか運だし」


それはこれから私が確かめる事だ。


「始めっ」


審判の声と共に動き出したのは両者同時。キインと剣がぶつかる甲高い音が響く。


…今までの試合より、速い。やっぱ、手抜いてたのか。


「この試合ではそんな余裕出させないよ?」


私は剣を持つ手に力を込めると、ソルガの剣を弾いてその懐に潜り込む。その胸の辺りに向かって加減しないで一撃を叩き込むとソルガは派手に後ろに吹っ飛んだ。


観客席の方から女子の悲鳴が上がる。男子のざわめき声も。


地面に叩きつけられたソルガが立ち上がったと思ったら、その場から消えていた。


…へ?


ゾワリ、と肌を刺す殺気。

後ろ、だ。


間一髪の所で剣を受け止める。

…速いし、重い。


「さっきの台詞、まんま返すわ」


今までからは想像もつかないような鋭い目で、でも口元は笑ってソルガは言った。


ソルガの力に敵わず、私は後ろに跳んだ。


「アンタ、何者?」


貴族のボンボンがあんな顔する?

しない。アレは命のやり取りを知ってる奴の顔だ。


「それは俺も聞きたいっすね。なんでレイフィールド家のご令嬢が剣術を?」


そう言いながらソルガは更に攻撃を仕掛けてくる。


「嗜みの一つです。私の質問に答えて」


あっちの速度に慣れてきた私も話しながら剣を振る余裕が出てきた。


「じゃあ、俺もそれで」


ギィン!


私は思いっきり剣を振り下ろした。


「おわっ、重!アリア嬢実は男とかないっすよね?!」


「だったらどうします?」


ヘラヘラすんな。ムカつく。


「いやぁ、それは無いっしょ。俺女の子に関しては自信あるから」


「それ、やめて下さる?」


せっかく本気を引き出したと思ったのに。こういう相手は本当にめんどくさい。


しばらく打ち合いを続けるけど、埒があかない。まあ、耐久勝負ならたぶん私の勝ちだろうけど。


「そこまで!」


凛とした声がその場に響いた。殿下だ。


私とソルガは打ち合いを止め、お互いに距離を取ってからリオンの方を見た。


「二人とも、素晴らしい剣技を見せてくれたことに感謝する。が、これ以上続けると一般生徒の魂が抜けそうなんでな」


リオンの言葉に観客席を見ると、たしかに魂でも飛び出ていそうなほどポカンと口を開ける貴族の子息、令嬢たち。


その光景はちょっとオモシロイ。


「二人は引き分けで、優勝者は二人」


リオンがそこまで言った所で、剣に違和感を感じて私は右手の方に目をやった。その瞬間、剣がパキンと音を立てて折れてしまった。


「…嘘」


こんな事、今までなかった。


ソルガの方を見ると、彼は動じた様子もなくニヤリと笑った。


まさか、確信犯?


「殿下」


それでも、結果は結果だと思い、私は進言する。


「見ての通り、私の剣は折れてしまいました。あのまま試合を続けていたら間違いなく私の負けです。よって、優勝はソルガ様に」


私の言葉にリオンは頷いた。


「本人がそういうのなら、俺から言うことは無い。優勝は、ソルガ・ドラクロア!」


リオンの言葉にようやく観客は魂を取り戻し、立ち上がって拍手をした。


舞台は中世ヨーロッパ風なのにお弁当は和風っていう制作側のイタズラ心がヒロインを困らせる 笑


セリアが興味津々で食べたのはおにぎりです。

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