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婚約破棄宣言


「はあ…」


「アリア様、ため息をつくと幸せが逃げてしまいますよ?」


マーガレット様が労るように私に言ってくれる。


「ごめんなさい。少し疲れが溜まっているみたいで」


あの日、教室で最後にリオン様が告げた『ごめん』は明らかな拒絶だった。私は、告白して振られたのだ。


「そういえば、殿下の誕生日パーティーを学校でやるって知ってました?」


リリィ様が不思議そうに言う。


「ええ。学生たちの交流を深めるためですって」


「ソフィー様が提案されたって本当なんでしょうか?」


「まあ、王宮での従来のパーティーだったらあの方は来れないものね」


リリィ様とシェーラ様の会話を聞きながらあることに思い至る。


原作では婚約破棄は星爛祭のパーティーで行われたが、冷静になって考えると星爛祭という大舞台でそんな個人的なことをしたら貴族たちから批判が殺到するに決まっている。


学内の、そして王子が主役のパーティーなら婚約破棄にうってつけなのでは…?


***


「今日のパーティーにはこのネックレスをつけてくれないか?」


リオンの言葉にソフィーは微笑む。


「綺麗!これを私が付けていいんですか?」


葡萄の葉をモチーフにした金のネックレス。真ん中には美しくカットされた紫色の宝石が輝いている。


「ああ、君のために特別に作らせたんだ」


リオンの言葉に嘘はなかった。


***


王子の誕生日を祝うパーティーが学内で催されることは異例中の異例だったが、流石に生徒の大半を貴族が締める学校だけあって、装飾も料理も相応しいものが並んでいた。


着飾った若者たちが談笑しながら主役を待つ中、明らかに浮いている人物がひとり。本来なら王子にエスコートされて入場してくるはずのアリア・レイフィールド公爵令嬢である。


美しい銀髪が若草色のドレスに映え、スッと伸びた背筋とアクアマリンの瞳が清廉な印象を与える。


「やはり、殿下とご一緒ではないのですね」


「あの噂は本当だったのか」


噂ーリオン殿下が男爵令嬢であるソフィーに心変わりし、それに嫉妬したアリアがソフィーを虐めているーという内容のそれは、学園中の生徒の注目の的であった。


ガチャンと講堂の2階の扉が開き、生徒たちは一斉にそにらに注目する。

扉から出てきたのは、白を基調としたタキシード姿のリオンと同じく白を基調としたドレス姿のソフィーである。側には、ルース、イザーク、ソルガも控えている。


主役の登場を生徒たちは拍手で迎える。


「皆の者、本日は私の誕生日のためにこうして集まってくれたことに感謝する。」


堂々と話し出すリオン。


「そして、この場でどうしても伝えなければならないことがある。それは、この学園で起こっている穏やかでは無い事件についてだ。」


リオンの言葉に少し怯えた様子のソフィーが縋り付く。


「先日、ソフィーが階段から突き落とされた。そして、その犯人をイザークが目撃している」


リオンがイザークに目で合図すると、イザークは一歩前に出て話し始めた。


「私は、ソフィーを階段から突き落とした犯人をこの目で目撃致しました。それは、アリア・レイフィールド嬢です!」


イザークの言葉に全員の視線が集まる。


「殿下、発言する許可を頂けますか?」


アリアの言葉にリオンは頷く。


「まず、私は男爵令嬢を階段から突き落としてなどいません。それに、動機もありません」


「それは、貴方の婚約者であるリオン殿下とソフィーが仲良くしていることに嫉妬したからでは?」


ルースの冷静な言葉に、アリアは小さく笑う。


「嫉妬?その程度のことで私がわざわざ犯罪を犯すというのですか。イザーク殿、貴方は本当に現場で私の姿を見たのですか?」


「もちろんだ。貴女の姿だけではなく、貴女がソフィーの背中を押している所も目撃した。」


ふむ、と考え込む素振りを見せたアリアは周りにいた生徒に目をやる。


「この中で、イザーク殿の他に私の姿を見た者は?」


すると、ひとりの生徒が手を挙げた。


「私も見ました。レイフィールド公爵令嬢がソフィーさんを階段から突き落とすところを」


その言葉にリオンは鷹揚に頷く。


「アリア・レイフィールド公爵令嬢。貴女を殺人未遂の容疑で拘束する」


リオンが片手を上げると控えていた騎士たちがアリアを取り押さえる。


「リオン殿下!私は無実です!私の言うことを信じてくださらないのですか?」


その場に跪かされたアリアがリオンを睨みつけて叫ぶ。

婚約者の言葉にたじろぐリオン。しかし、すぐに険しい表情に戻ると言葉を続けた。


「アリア・レイフィールド公爵令嬢、君との婚約を破棄する!他人を簡単に傷つけるような人間に王太子妃は務まらない」


そこで、また言葉が止まるリオン。

だがすぐにソフィーに向かって跪いた。


「そして、ソフィー。私は君と出会って人を愛しいと思う気持ちに気づいた。どうか私と婚約してくれ」


まるで一枚の絵のように麗しい光景。ソフィーの目に涙が溜まる。


「はい」







ガシャン!


ソフィーが嬉しそうに頷いた瞬間、彼女の付けていたネックレスの宝石が砕け散った。


「ーえ?」


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