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鬼の居ぬ間に洗濯…そういう事ですね!


「では、アリア様の絵がきっかけで出会ったのですか?!」


キャーと頰に手を当ててリリィ様が言う。


先日の写生大会以来私たちの中ではマーガレット様とネイトの話で持ちきりだ。


「あの、私とネイト君はただの先輩後輩として…」


マーガレット様は顔を赤くしている。


「あら、私達二人が先輩後輩だってちゃんとわかっていましてよ?それ以上何かおありなのかしら?」


少し意地悪そうに微笑んでシェーラ様が言う。


「え、あの…別に深い意味は…」


ワタワタとするマーガレット様は本当に可愛い。


「シェーラ様、あんまりからかってはいけませんわ。人の恋路を邪魔する奴はって言うでしょう?」


「だから、恋とかじゃありませんって!」


フォローしたつもりがますますマーガレット様を慌てさせてしまった。


「そこ、あまり廊下で大声を出すなよ」


ポンと頭に重みを感じて振り返ると、リオン様が手にした教科書を私の頭に乗せていた。


「し、失礼しました。」


マーガレット様が慌てて礼をし、シェーラ様とリリィ様もそれに習う。


「いや、怒ってる訳じゃない。ただ周りに聞かれたくない話もあるだろう?」


リオン様の言葉にマーガレット様が顔を赤くする。


「リオン様…頭の上の教科書を退けて下さい。ご挨拶できません」


私の言葉にリオン様は意地悪く笑う。


「これくらい払いのけてみせろ。武闘大会準優勝の名が泣くぞ」


あれはセリに出てもらったからと言いたいけど、もちろん言えない。代わりに黙ってリオン様を見上げるとふいに教科書が退けられた。


「悪い悪い」


ぐしゃぐしゃと私の頭を撫でるリオン様。私は犬じゃないんですけど…


「リオン様、もしかしてお疲れですか?」


どことなくそう見えた私の質問にリオン様は苦笑した。


「いや、別に「リオン様!」


ふいに鈴のような可愛らしい声が廊下に響く。


「…ソフィー、どうかしたか?」


ギギギと音がしそうなくらい不自然に後ろを振り返ったリオン様だけど、声は完璧に甘やかなものになっている。後ろからでも分かるキラキラオーラは最早特殊な力でも使っているのかと思うレベルだ。


「いえ、たまたまお見かけしたので…お話中にすみません」


少しシュンとした様子のソフィーは子犬みたいで可愛らしい。


…けど。


「そう思うなら、初めから声をかけなければ良いのではないかしら?話し中に割り込まれて良い気持ちのする人は少ないわ」


少しムッとして思わず飛び出したセリフに自分でも驚いた。これは、自然に意地悪な事が言えるようになった証拠。私はどうやら悪役として確かに成長しているらしい。


なんだかモヤモヤしながらそんな事を考えていると、私からソフィーを隠すようにリオン様が体をズラした。


「いや、わざわざ話しかけてくれて嬉しいよ」


どこか浮かれた声のリオン様。


やっぱりソフィーはリオン様のルートに入れたのね…!


これで大丈夫。これが一番幸せな道だ。


「アリア、理事長から後で話があるそうだ。放課後に理事長室へ行ってくれ」


理事長室?私何かしたかしら?!


リオン様はそのまま素っ気なく去ってしまった。


***


「実は貴女にシェヘラザードへ1ヶ月程留学して欲しいのです。」


私の前で悠々と微笑む白に近い金髪のおばあさんーといってもまだまだ若々しく見えるけどーがこの学園の理事長、ミス・グレイである。

年齢不詳のこの人はクランベルクの生き字引とも呼ばれ、一を聞いて百を知る驚異的な洞察力の持ち主である。


「留学…ですか?」


「ええ、シェヘラザードは二年前に高等教育の為の学校を新設しました。シェヘラザードは今まで厳しい身分体制の下、庶民はまともな教育を受ける機会すらなかった。それを改善する為に設立されたそうです。」


シェヘラザードとの貿易のために色々調べてたから、その事実は知っていた。


「しかし、まだ出来たばかりの学校。上の者からは分からない改善点もあるでしょう。そこで、この学園の生徒をシェヘラザードの学校に通わせて、率直な感想を聞かせて欲しいと依頼がありました。

私としては勉学にも礼儀作法にも優れた貴女に行ってもらいたいのです。」


「そういう事でしたら、勿論お受け致します。」


シェヘラザードへは一度行ってみたいと思ってたし。これを機に、レイフィールド領との貿易の話も進められたら嬉しい。


「ありがとう、貴女ならそう言ってくれると思っていました。殿下のお咎めが一番の懸念事項でしたが、殿下としてもちょうど良い機会だと思われたのでしょうね。」


そうか!これで邪魔者の悪役令嬢は居なくなる。二人っきりを楽しもうという訳ですね!


でも、二人が仲良くなる様をニヤニヤしながら見守るつもりだった私としては少し残念なような、どこかホッとしたような…


「貴女はとても賢い子です。それこそ、学園始まって以来の天才と呼ばれる程に」


ミス・グレイがゆっくりと口を開いた。


「とんでもございません。」


「ですが、まだまだ若い。外の世界へ見識を広げ、今まで当たり前だと思っていたものを見つめ直す事で本当に大事なものに気づけるでしょう。」


一般的な激励の言葉に聞こえるけど、この全てを見通す淑女の事だからきっと深い意味があるのだろう。


私がミス・グレイの言葉の重さを知るのはもう少し先の話。


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