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彼にとってのヒロインは

マーガレット様が声をかけた知り合いは攻略対象の一人、私が今ちょうど探していたネイトだった。


なんでもう前髪切ってるの?!もしかして、私の知らないうちにイベントが発生していた?『ゲームはゲーム』いつかセリアに言われた言葉が反芻する。


「アリア様?」


軽くパニックになった私はおもむろに立ち上がってしまう。


「いえ、あのお二人が…なにか木の上を見上げているので」


リリィ様が不思議そうにこちらを見たので慌てて弁解する。


マーガレット様とネイトは何故か挨拶もそこそこに困ったようにを見上げていたのだ。


「あら、どうしたのかしら?見に行って見ましょう」


こういう時シェーラ様の積極的な性格は本当にありがたい。


三人でゾロゾロとマーガレット様の方へ行くと、マーガレット様が困った顔でこちらを見てきた。


「皆さま…あの。あ、その前にこちら一年生のネイト・アーベルト様」


マーガレット様の後ろに体を半分隠したまま、ネイトが小さく頭を下げた。


「ネイト、です。」


礼儀作法的には褒められた挨拶ではないけれど、彼の可愛らしさを前にすると何も気にならない。


「か、かわいい…」


シェーラ様、聞こえてますよ。


「私はアリア・レイフィールドです。」


私の名前を聞いた瞬間、ネイトの目が一瞬大きく見開かれた。続けてシェーラ様とリリィ様が挨拶をしたけれど、ネイトは小さく「よろしくお願いします」と言っただけだった。


「で、どうされたの?」


「あの、猫が」


ネイトが指を指した木の上には白い猫がいた。どうやら木に登って降りられなくなったらしい。この展開って…


「僕はあんまり背が高くないから」


困ったように小首を傾げる仕草は小動物のようで本当に可愛い。


「私でもギリギリ届かなくて」


マーガレット様は私達の中で一番背が高い。


「誰か男性を呼んできましょうか」


シェーラ様が冷静に言ったけど、その言葉を聞いた瞬間ネイトの顔が青くなった。そうよね、人見知りなネイトからしたらこれ以上この場に人が増えたら嫌よね。


ゲームではソフィーをネイトが抱っこしてなんとか猫に届いたんだけど、流石に危ないし。


もう一度猫を見ると赤い首輪が目に止まった。あれ、この子パン屋の『シンディ』だ。目の色も同じだし、たぶん間違いない。

たしか猫って後ろからなら木から上手く降りれるのよね。


「マーガレット様、あの木の真ん中の枝が分かれてる所なら届きますか?」


「え?はい、たぶん…届きますわ」


戸惑うマーガレット様を木のそばに立たせて私は後ろからシンディを呼ぶ。本当は飼い主の方がいいのだろうけど、モノは試しだ。


「シンディ、おいで」


私の言葉にシンディはピクリと反応する。やっぱり合ってる、シンディだわ。


「シンディ、こっちよ。良い子だから、おいで」


そろりと、シンディが足を後ろに動かした。


「そうそう、上手ね」


なだめて褒めてシンディを動かすこと五分。案外アッサリとシンディは木のマーガレット様が待っている場所まで降りてきた。


マーガレット様が少し背伸びをしてシンディを抱き上げる。


「ひゃっ」


抱き上げられたシンディが少し暴れたことで背伸びをしたマーガレット様がバランスを崩した。


「先輩っ」


私達の誰よりも早く、ネイトがマーガレット様を支えようとしたんだけど、ネイトはマーガレット様より背が低い上に運動なんかしたことがない病弱系インドア男子だ。支えきれる訳もなく二人揃って芝生の上に尻餅をつく。


ドンッ


「だ、大丈夫ですか?」


リリィ様が二人の元に駆け寄る。


「私は大丈夫です。ネイト君の方が」


「…僕も大丈夫です。」


支えきれなかったことが恥ずかしかったのか、それともマーガレット様とほぼ密着した状態なのが恥ずかしいのか顔を赤くしてネイトは答える。


なんかデジャヴだ。


「シンディちゃん?も無事で良かったですね」


リリィ様が微笑む。


「アリア様、どうしてこの子の名前を知ってらしたの?」


「2年前にこの子の飼い主のパン屋に寄ったことがあるの。その時はまだ子猫だったけどね」


大きくなったなあと思いながら撫でると目を細めて喉を鳴らす。人懐っこい良い子ね。


「あの…アリア様。皆さん、ありがとうございました」


ふにゃっと笑顔を浮かべるネイトはもう…悶絶するのを必死で堪えなきゃいけないレベルで可愛かった。私の横でシェーラ様とリリィ様もフルフルしている。


それにしても、シンディがイベントで遭遇するはずだった猫ってことは、もしかして妨害完了?でも、ネイトがもうイメチェンしてる理由がまだ分からないから油断はできないわね…


「先輩は、なんの絵を描いてるんですか?」


ネイトがマーガレット様に聞く。


そういえば、猫を助けた後ネイトはソフィーの事を『先輩』って呼んでよく話しかけてくれるようになるのよね。


「私はアリア様を描いているの。去年のお返しね」


マーガレット様の言葉にネイトは納得した様子を見せたから彼も展示されていた私の絵を見たことがあるのかもしれない。


「じゃあ、僕は先輩を描こうかな…」


いたずらっ子のような表情でネイトが言う。


この顔!好感度が満点にならないと拝めないあのレアスチルの表情だわ!


うわぁ、実際に見ると破壊力が半端ない!


「わ、私よりシンディちゃんを描くのはどうかしら?可愛いでしょう」


顔を赤らめてマーガレット様が言う。ハートを撃ち抜かれたんですね。分かります。


「先輩、照れてますか?」


「え!そんな、ことは…」


あらあら、これって…


「なんだかいい感じですわね」


シェーラ様がニヤニヤしながら言う。


「違和感のない程度に距離をとって様子を見ましょう!」


リリィ様、目の輝きはもう少し抑えて!


恋愛ネタの大好きなリリィ様が暴走しないようになだめつつ、私はホッと安堵の息を吐いた。


…どうやら、ネイトのヒロインはもう決まっていたようです。


*猫の救助方法はインターネットの情報を参考にしていますが、本来ならこんなに簡単にはいかないと思います。本当に困ったら専門の人を呼びましょう!

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