お祭りデート! 前編
遅くなってしまいすみません!
最初ちょっと第三者視点です。
星爛祭二日目。王族による式典が少ないこの日は城下のいたる所に様々な露店が並び露店は一番盛り上がっていると言えるだろう。
いつもは近所の子供くらいしか来ないこの公園も、クレープ屋さんやアイスクリーム屋さんが出店していてとても賑やかだ。
公園の中央にある噴水の淵に一人の少女が腰掛けている。美しい銀髪をシニヨンに結い、今年流行の胸の部分がふっくらして、そこから下は真っ直ぐなラインの赤いワンピースを着てどこか浮かれた様子は周りの人々に『これからデートだな』と悟らせる。
「…待ったか?」
人々の予想通り、デート相手らしき男子が現れた。
「ふふ、待ってませんよ。まだ待ち合わせの30分前じゃないですか。リオン様はどうして待ち合わせをする度に少しずつ早く来るんですか?」
少女の浮かべたふんわりとした笑顔に周りの者は釘付けになる。
「一回くらいお前より早く来たいと思ってるんだけどな。今度から一時間前にくるか」
「それなら私は1時間10分前に来ます」
二人の仲睦まじいやり取りを大概の者は微笑ましく、残り一部はがっかりして聞いている。
そんな外野の様子を他所に二人は楽しそうに公園を出て行った。
***
「リオン様、何か見たいお店はありますか?」
公園を出た私は尋ねる。街の構図、今回出店している店の配置、内容は完璧に覚えてる。私の特技はこういう機会じゃないと役に立たないものね。
「そうだな…とりあえず腹減った」
「リオン様、朝ごはんは?」
リオン様は気まずそうに私から目を逸らした。
「…食べてない」
「またですか?!」
リオン様は昔から朝に弱い。その上偏食だから朝ごはんをしょっちゅう抜くのだ。なのに無駄に体力があって我慢強いから倒れるギリギリまで周りはリオン様の体調が悪くても気づけない。だから、規則正しい生活習慣を送ってくださいと何回も言ってるのに!
「もう、じゃあちゃんと栄養のある物じゃないとダメですね」
私達が向かったのは東方の国の軽食を扱ったお店。小麦粉で出来た生地に野菜や肉を挟んでいて歩きながらでも食べれるし、とっても美味しいのだ。
「ん…イケるな」
リオン様もお気に召した様子でパクパク食べてる。
それにしても…
「ふふっ」
「なんだ?」
思わず漏れた笑いに怪訝そうな顔をされてしまった。
「いえ、そうしていると王子様には見えないなって」
少しくたびれた庶民的な服装をして、こんな道の端でご飯を食べている人が王子だなんて誰も思わないだろう。一応、顔を隠すための帽子は被っているけど。
「昔はお前に妙な格好ばかりさせられて逆に目立ったけどな」
「妙って!変装ですよ!」
リオン様は昔から街に行くのが好きで、私は心配だったので変装を勧めたのだ。色々な国の民族衣装とか、執事服とか、騎士の服とか…決してリオン様をコスプレさせて遊んでいた訳ではありません。変装よ、変装。
「まあ、アイツに言われるまで気づかなかった俺も悪いんだが…」
リオン様がどこか苦々しい顔で言った。
「?どなたの話ですか?」
「いや、何でもない。それよりアリアは行きたい所はないのか?」
「いえ、今日はリオン様の行きたい所に…」
行きたい所はあるんだけど。リオン様と回れるのは今日しかないもの。
「俺はどんな店があるのか碌に調べてないからな。アリアの行きたい店に行くついでに見たいところがあったら入る」
リオン様がそう言うならと、私の行きたかったシェヘラザードの工芸品を売っている店に向かった。
シェヘラザードの伝統工芸は前から有名だったけど、最近はそれをアレンジした雑貨やアクセサリーを国内で販売した所反響が出たと聞いたので今年はその店を招いたのだ。
「うわぁ。華やかですね!」
露店の天幕は色とりどりの布で出来ていて人目をひく。中にはキラキラ光るアクセサリーや美しい布地。アクセサリーの形や付け方も独特で周りの女の子も目を輝かせている。
「ふうん。よく出来ているな」
リオン様も関心した様子だ。
…やっぱり早めに商談を纏めるべきね。
今レイフィールド領の商家がこのシェヘラザードの雑貨の中継貿易を計画しているのだ。その件には私も一枚噛んでいる。以前セリアがつけていた剣のホルダーを見てその布地を輸入できないかと商家に提案したのだ。まさかシェヘラザードが雑貨を販売しだすなんて思ってなかったけど、渡りに船。この機会を逃すわけにはいかない。
「アリア、どうした?」
つい思考に耽ってしまっていた。
「すみません。ちょっと考え事を…」
「また領地のことだろ。お前らしいな」
リオン様はポンポンと私の頭を軽く叩いた。
「リオン様は人の事をよく見てらっしゃいますよね。さすがです!」
王には必要な資質だ。
何故かリオン様には微妙な顔をされた。
「あ!」
私の目に留まったのは赤い髪紐。
細い紐の両端に金色の小さな金具が付いているシンプルなものだが、紐の上質な滑らかさと色合いが魅力的だ。
「あの髪紐か?」
「はい!」
あの色ならセリの剣とも合うし、シンプルだから邪魔にもならない。何よりきっとあの子に似合う!
「すみませーん!あの髪紐下さい」
「…即決かよ」
お店の人が丁寧に包んでくれている間に他の品物も見る。林檎の飾り玉が付いた栞は特に可愛い。栞にああいう工夫をするのは新鮮で見入ってしまった。
「ふふふ」
お店を出た後も自然に笑いが溢れた。
「ご機嫌だな」
「はい!とっても良い買い物ができました」
その後はリオン様が興味を示した古書店に行ったり、面白い品を扱う文具店に行ったりした。
「あ!リオン様ちょっと急ぎましょう」
実は今日のメインイベントはこの後なのだ。
デートなのに糖分が足りないような…
後編はリオン視点です!




