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彼女が騎士になった日 3


私は受け取った剣を手にしばらく固まってしまった。なんで、私が、あの剣を、今持って…


ガキン!


もちろん相手が待っていてくれるはずもなく、振り下ろされた棍棒と私の持つ剣がかち合った。聖剣は驚くほどしっくりと手に馴染んだ。まるで、私に使われるのを待ってたみたいに。


「うわぁ…すごい」


思わず声を漏らした私に少し引いたような目をオッサンが向けてきた。まあ、そんなのどうでも良いんだけど。


私はオッサンの棍棒を弾くと飛び上がり、上から剣を振り下ろす。オッサンは棍棒で受け止める。


「甘いよ」


ミシッと音を立てて棍棒がへし折れた。驚愕に顔を染めるオッサンの懐に潜り込み、文字通り剣を叩きつける。


2メートルくらい吹っ飛んだと思われるオッサンはそのまま意識を失った。…肋骨にヒビくらいは入ってるかもしれない。


パチパチパチー


後ろから乾いた拍手が聞こえて、振り返ると満足そうな顔の異国の男の子と驚いたようなカレハがいた。


「文字通りの瞬殺だな。ショーケース壊した甲斐があった」


異国の男の子は平然と言ってのけるけど、それ器物損壊だから。


「お前…もうちょっと殊勝な態度取れよ」


呆れたようにカレハが言う。


「子供3人でこれだけ打ち負かしたんだ。誇っていいだろ」


男の子の言葉に後ろを見遣ると、さっきカレハが戦っていた4人は全員気絶して、縛り上げられていた。


「カレハが全員倒したの?すごいね」


この子はもしかしたら、私と同じくらい強いかもしれない。


「えっ、いや、一人はコイツが…」


顔を赤くしながらカレハは男の子方に目を向ける。…もしかして、カレハはあっちの趣味があるのかな?まあ、ビックリするくらい綺麗な男の子だから気持ちは分かるけど。


「お前はこの国の騎士なんだよな?」


「うん。まだ見習いだけどね」


ふーん、と楽しそうに男の子は笑う。


「その剣と相性良いみたいだな。欲しいか?」


欲しいってこの剣のコト?そりゃ欲しいけど…


体は正直なようでコクリと頷いていた。


「じゃあ、やるよ」


「はあぁぁぁ?!馬鹿かお前!コレ王族への貢物だぞ!」


私より先にカレハがつっこむ。


「貢物じゃなくて、友好の印だ。こっちだって向こうの記念日には送ってる」


この言い方的に男の子はこの国の人間…?ってかどっかで見た事ある顔なんだよね。


私がジーッと見つめていると、男の子と目があった。黒い目は子供にしては鋭い。


『リオン様の目は本当に綺麗なのよ!あの黒い目に見つめられた女の子はみんな心臓を射抜かれちゃうんだから!』


何故かお姉様の声がよぎる。そうだ、数時間前、そんなにすごい目なのかと見たリオン殿下の目…


「あの…もしかして、貴方はリオン殿下であらせられますか?」


私の言葉に男の子はキョトンとする。


「ああ、忘れてた」


そう言って合点がいったような顔をして頭に巻いたターバンを外すと青みがかった黒髪が見えた。そのターバンで顔を拭うと何かを塗って顔の色を変えていたらしく、白い肌が覗く。


…式典で見たのと同じ顔。


「間違いなく、俺はリオンだ」


私は慌ててその場に跪き頭を下げた。


「殿下って事はどっかの国の王子か?」


カレハが驚いたような、でもどこか間延びした声で言う。


「カレハって新聞とか読んでる?じゃなきゃ昨日の式典とか見てない?」


私の言葉にカレハは首をひねる。しかし、何かに気がついたようで急に真っ青になった。


「…クランベルク王国第一王子の、リオン殿下?」


カレハの呟きに少年ーリオンは頷いた。


「さて、この剣の話に戻るか。その剣、お前にやるよ」


「…は?」


あまりに驚いたので不敬な言葉遣いになってしまった。


「この武器はお前に合ってるみたいだしな。王宮に飾られるよりも誰かの役にたった方がこの剣も本望だろう」


ニヤリと笑ってリオンは言う。


「それに、俺はお前が気に入った。騎士になったらその剣を使って俺とこの国の為に働いてくれ」


私は跪いたままもう一度頭を下げた。


「身に余る幸せに存じます。必ず、期待に応えてみせます」


私の言葉に満足したようにリオンは頷いた。


「あ、お前も逃げんなよ」


リオンはそろりとその場を後にしようとしていたカレハの襟首を掴んだ。


「いや、逃げるだなんて、そんな…」


ハハハと乾いた笑いを浮かべるカレハだけど、泣きそうな顔をしている。


バタバタと入り口の方から騒がしい足音がした。


「リオン殿下ー!」


先頭きって駆け込んで来たのは長身で長いの薄茶色の髪を緩く一つに縛っている男の人。ライムグリーンの目は周りの惨状ー主に縛り上げられた男達を見ると大きく見開かれた。


ん?茶髪に、緑色の目?


「ああ、遅かったなサナリ。」


「遅かったじゃないですよ!殿下が勝手に先に出てしまうから、死ぬほど探したんですよ」


サナリ…?


「お前の準備に時間がかかったせいだろ?まあ、だから半分はアリアのせいか。というか、お前結局いつもの恰好なのか?」


「殿下探すのにあの服じゃ動きづらいですからね。妹には後で着直しすって約束しました」


…アリア、妹、サナリ…


この人、お姉様が言ってたお姉様のお兄様じゃん!つまり、生物学上は私の兄!


やっば…!


私はひっそりと、でも脱兎の如くその場から逃げ出したのだった。




ちなみに、この後一ヶ月と置かず私は正式に騎士になった。

星爛祭を見せて騎士としての在り方を問うというのは見習い卒業の時に皆んながやってるらしい。…私が女とか、本当は公爵令嬢とかそういうの関係なく。


タイニー二の聖剣については、団長に話したら「おう貰っとけ貰っとけ!」と豪快な返事をされたので、今でも私のものとして使っている。これが凄い優れもので、私の馬鹿力にも負けずに、今まで折れたことがない。もっというと、私の成長に合わせて剣も大きくなってる気がするんだけど…さすがに気のせいか。


「懐かしいなぁ…」


そう呟いて、りんご飴を齧る。おいしい…


そう言えばあのカレハって子、あれからどうなったんだろう?



だいぶ長くなってしまいました…!

次で過去編終了です!

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