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彼女が騎士になった日 2


「天使…?」


庇った男の子が後ろで変な事を言っている。吹っ飛ばされた時頭でも打ったのかもしれない。


「お嬢ちゃん、なかなか腕が立つみてえだが、退いた方が身のためだぜ」


ニヤリと男が笑う。受け止めた棍棒はなかなかの重さで短剣がギリギリと音を立てる。


「無理。国民を守るのは騎士の務めだから」


私の言葉に男はヒューと口笛を吹く。


「かっこいいねえ、お嬢ちゃん見習い騎士か?だったら尚更手出し無用だ。コレは裏の問題だからな」


「裏?」


「知らねーのか?騎士は裏同士の問題には手出し無用っつーのか王都の暗黙のルールだぜ?」


男っていうかオッサンのドヤ顔に何だかイラっとした。


「知らない。王都の人間じゃないから」


「そうだとしてもココは王都だ。こっちのルールに従ってもらう…それにそのガキは騎士様が助けてやるような立派な人間じゃないぜ」


私はチラリと後ろの男の子を見たけどまだ惚けた顔をしている。確かに立派な奴じゃなさそうだ。


「立派じゃないから助けてるんだけど。弱い者を捨て置くのは騎士の名折れ」


私の言葉にオッサンはガハハと笑った。


「そいつは別に弱くなんかないさ。裏業界じゃちょっと有名人だぜ。諜報、暗殺、窃盗、どんな仕事でも請け負う末恐ろしいガキがいるってな」


少し驚いて後ろを見る。男の子はバツが悪そうに顔を逸らした。


やってる事はさておき、私と同じ年くらいなのにひとり立ちしているのはすごいなと素直に感心した。


「おい!大丈夫か?!」


男の子が吹っ飛ばされて来た方から第三者の声がして、そちらを向くと異国の服を身に纏う男の子が駆け寄って来た。


「大丈夫な訳…って何引き連れてきてんだよ!」


異国風の男の子の後ろから5,6人のオッサンの仲間だと思われる男達はがすごい形相で追いかけてきた。


「勝手についてきたんだ。ホラ」


そう言って異国風の男の子は私の後ろにいる男の子に短剣を放った。


「こりゃどーも」


そう言って男の子はパッと飛び上がり、異国風の子と男達の間に降り立つと短剣を振るう。


どうやらオッサンの言っていた事は本当らしい。男の子の動きは明らかに戦闘に慣れている人間のものだった。でも、動きがどこかぎこちない。


「武器が合ってないのかな…?」


私の言葉にオッサンが驚いたような顔をする。


「よく分かったな。カレハは二刀流だ」


「あの子カレハって言うの?」


「ああ。渾名だけどな」


なるほど。


そこまで聞ければ十分。私は短剣を傾けてオッサンの棍棒をいなす。


「カレハ!コレも使って」


びっくりしたようにこっちを振り返るカレハに短剣を投げる。

綺麗に弧を描いた短剣を受け取るとカレハは黙って頷いた。


ズガン!


私の脇スレスレにオッサンの棍棒が振り下ろされる。地面にクレーターが出来た。


「わお」


「ナメてくれたもんだな。武器無しで俺に勝てると?」


今度は横薙ぎに繰り出された棍棒を伏せて避けるとそのまま地面に手をつき下からオッサンの顎に蹴りを入れた。


「ガァッ!」


オッサンは尻餅をつくとその場で頭を抱えて蹲る。おそらく脳震盪を起こしたんだろう。


カレハの方を見るといつものスタイルで戦えているせいか先程より動きが俊敏になっていて、四対一(もう既に二人倒していた)にも関わらず善戦していた。


異国の男の子はどこに行ったんだろう…?


加勢しようかと迷っていると後ろから不穏な気配を感じる。そこから飛び退いた瞬間、私が立っていた場所には棍棒が叩きつけられていた。


「…オッサン、頑丈だね」


ちょっと侮ってたかもしれない。


オッサンはかなり怒っているらしく、さっきまで子供相手だからと見せていた余裕も引っ込んでいる。


「いやいや、こんなに痛えのは久しぶりだ。あー頭ぐらぐらする…」


まずいなあ…あの棍棒はかなり威力がある。さっきの蹴りが効かないとなるとやっぱり武器は必要かも。


「お嬢ちゃんは本気で相手しなきゃいけない相手だって気づいたよっ!」


振り下ろされる棍棒はさっきより早い。私が避けると地面に叩きつける前に軌道を変えて横薙ぎにこっにに迫ってきた。咄嗟に攻撃と同じ方向に飛んで衝撃を殺したけど、それでも痛いもんは痛い。


思い切り相手を睨みつけるとオッサンは愉快そうに笑った。


「おい!そこの仮面!」


声の方を振り向くと何かが投げられてきた。慌ててキャッチして愕然とする。


「こ…これ…」


「使え。お前は騎士なんだろ?」


いつの間にか戻ってきた異国の少年が投げて寄越したのは、私がさっきまで見惚れていた『タイニー二の聖剣』だったのだ。


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