一方、裏方は…
王都にほど近い、周りを林と池に囲まれたクラシカルで立派な屋敷。さすが現国王の従兄弟の別荘だ。それにしても、自分の別荘に暗殺計画の経過報告させに来させるとか王家を舐めてるとしか思えないんだけど…
お姉さまの指示を受けたときは半信半疑だったけど、暗殺者との連絡係らしき男をつけるとお姉さまの予想通りメイソン公爵の屋敷にたどり着いた。
お姉さまには確認だけしたら帰っていいって言われたけど…
「私は主人に手出し無用と言われているけど、そっちはどうすんの?」
私が自分の登っている木から後ろを振り返ってそう言うと、木の陰から一人の男が出てきた。
「ありゃ、バレてた?」
首元をスカーフで覆い帽子を目深に被っているけど、赤茶の後ろ髪と僅かに見えるタレ目ですぐ分かった。ソルガだ。
一応瞳の色を変える眼鏡かけといてよかった。目立つ銀髪は三つ編みにしてフードの中。
「騎士なら満点だけど、暗殺なら及第点ってとこかな」
「マジか…結構自信あったんだけど」
ちょっと本気でショックを受けたようにソルガは言う。こいつ子爵子息のくせに何を目指してるんだか…
「私をつけてたんじゃなくて前の男をつけてたんだよね。誰の指示?」
「それは聞かないっつーのが業界ルールじゃありません?」
確かに。私も聞かれても答えないし。
「この後どうするの?見張る?摘発?」
後者の場合は考え直してもらいたい。お姉さまは星爛祭の最中に問題を大きくするのを嫌がっていた。国民の混乱が大きくなるからだ。
「いや、主に報告。祭り中に騒ぎを起こしたくないからね」
どうやらお姉さまと同じ考えらしい。
この時点で主人は絞れてくるけど…
「ふーん」
生返事をすると私は自分の立っていた枝を蹴り上げて元の道ーといっても枝から枝へ飛び移って移動しているので道ではないがーを引き返す。
「えっ、ちょっと待てって」
ソルガは慌てて木に登ると私の後をついて来る。
「なんか用?」
私は速度を緩めず聞く。
「そっちだけ聞きたいこと聞いてくのはズルいだろ」
「聞きたいことなんか無いでしょ」
「あるある、アンタ何者?」
ソルガの声がふいに真面目になった。
確かに、今の私は怪しいもんね。
…さて、どう答えたものか。あ、そうか。
「そっちこそ何者?」
私はソルガからしたら赤の他人だって事を忘れてた。
「俺はドラクロア子爵の次男、まあ養子だけど。名前はソルガ」
え、言っちゃうんだ。
名乗ったんだからそっちも名乗れよという圧を感じる。
「私は王城の騎士…曲者を追うように上司に言われた」
微妙な嘘をついてみる。
正直何処まで言っていいのか分からない。
「へえ…」
うん。信用されてないね。しょうがない。
「ねえ、話は変わるんだけどアンタの髪金髪ウェーブだったりする?」
え?ときき返そうとした時、森を抜けた。
地面に着地をするとそのまま振り返る。私の後に地面に着地したソルガの顔は真剣そのものだ。
「私は、金髪じゃないしストレートヘアだけど」
私が答える間ソルガはじっと私の目を見ていたけど、私の答えを聞き終わるとふいに空を見上げた。
「あー…だよなあ」
困ったように頭をかくとヘラリと笑う。
「ごめんね。変な事聞いて」
先行っていいよとソルガは近くにある倒木の上に座った。
「…変なやつ」
私は遠慮なく先に帰ることにした。




