第七話 今日の宿
さてリミアに習って俺も宿を探さないといけないな。
リミアが言うにはいい宿には泊まれないらしい、あの顔を見たらおそらく平均的な宿にも泊まれなさそうだ、ねらい目はあまり人気のない宿屋だな。
人気がないといえば大きな通りから外れたところだな、実は俺って隠れた名店を探すのが好きだったからこういうのは得意なんだよな。
あー懐かしいなぁあの裏にあったラーメン屋はうまかった・・・、そう隠れたところは自分だけが知っているって感覚がたまらないんだよなぁ。お店側からすればできればいろんな人に宣伝してほしいんだろうけどあの感覚は捨てがたい。
おっとつい物思いにふけってしまった、宿屋を探すのが今の目標なんだった。立ち止まってたらだめだ歩こう、目的地は裏道だな。
~一時間後~
裏道に入ったのはいいんだけど、もうどれが店なのかよくわからないんだが。
あれはたぶん家だろうし、これは恐らく店・・・かな?
どれが宿屋なんだよ・・・ん?
あれはお店じゃないか?うんなんか看板も出してるし店だよな?
とりあえず入ってみるのが一番だ。
「失礼しまーす」
店の中に入ってみると正面にはカウンターがありカウンターの前には椅子が並んでいる、見た感じで言えば恐らくここはバーもしくはカフェってところかな、でもカウンターには誰もいないし。
とりあえずカウンター席に座って声をかけてみることにした。
「すみませーん、誰かいますかー?」
声をかけて少しすると店の奥から見た目70ぐらいの男性が出てきた。年をとっているような顔をしているのに背は曲がっておらず、その上高身長だ。
そしてその老人の雰囲気はマスターをやるのにふさわしい何かを感じさせる
「おや、こんな寂れた店に若いのが来るとは珍しいこともあるものだ」
老人は朗らかに笑いながら水を出してくれた。
「さてお若いの何をご注文かね」
「ああ、えっと・・・すみませんいまあまり持ち合わせがなくて」
なぜ店に入ったのか疑問に思うような返答をしてしまったが老人は特にどうとでもいいように笑ってくれた。
「おお、そうかなら少し待っているといい」
老人は一度店の奥に引っ込むとすぐに出てきた、手には何かを持っておりそれを俺の前に出してきた。
「作り置きですまない、だが味の保障はするぞ?少し待ってくれればあと一品だせるが」
「いえそんな、それよりもこれ食べてもいいんですか?」
「ああかまわんよ、一度作ってしまったものだ腐らせてしまうのも気が引けるだろう?」
その言葉に俺は料理に目を向け一口食べてみる、老人は作り置きといっていたが本当においてあったのか疑いたくなるほどに完璧な味だった。
「そんなに驚いた顔をして何かあったのか?」
どうやら顔に出ていたらしい、だが勘違いしないでいただきたいあまりにもおいしすぎて驚いているだけであって何らかの異物が混入しているわけでもなくまずすぎて絶句しているわけではないのだ。
「いえ美味しすぎて少し驚いていたんですよ」
「ああ、そうなのかい?そう言ってもらえるととても嬉しいよ」
老人は嬉しそうにまた笑っていた。
「でもこれ本当においしいですね、どういう料理なんですか?」
「これはなんてことはないただのマッスルボアの煮込みだ」
マッスルボアがよくわからない、さすがファンタジーって思えばいいんだろうか?
おっとせっかく優しい人に合えたんだ宿屋の場所を尋ねといたほうが良いな。
「ちょっと聞きたいんですが、ここらへんに宿ってありますかね?できればあまり高くないのが良いんですけど」
「ふむ、若いのは宿を探してたのか、残念だがここら辺に宿はないぞ、宿を探すならここからは反対方向に歩かなければならない」
うわーまさか反対に歩いていたとは予想外だ、やっぱり前情報なしで歩き回るのはうかつだったか。
「ふむ、そんなに落ち込むんじゃない泊まる場所を探しているのならここに止めてやっても良いが?なにお金の心配ならば気にしなくて良いさ、私がやりたくてすることだと思ってくれたら良い」
朗らかに笑う老人、なんだかこの人には人を安心させる何かがあるのだろうか?
まぁ悪い人ではなさそうだし泊めてもらうことにしよう。
「それでは、一晩だけお願いします」
俺の返答を聞くと老人はにっこりと笑って
「一晩といわずにもっと長くても良いんだがな」
快く迎え入れてくれた。
「ああ、ついでに私の名前はシェパーだ君は?」
「俺はライオって名前です、世間知らずのライオです」
「ははっ、『世間知らずか』面白いな、なら私は『ただの店主シェパー』だ」
そうして俺は一先ず今日の宿を見つけたのだった




