不完全と未完成
私は今…暇だ…。
なぜかと言えば、体中を痛めてしまって寝たきりになっているからである。あの男…名前を聞きそびれてしまったが、その人が治療をしてくれた。
暇というのは敵であったが、今はこの時間がとても愛おしい。パチパチと不規則に踊る暖炉の火や、外の天気が移り行く様、ほんの少し硬いベッドは、間違いなく私の心に安寧をもたらしていた。
だが同時に、追っ手にいつ足取りを掴まれて、ここを突き止められるかわからない、そんな焦燥感もジリジリと、窓枠に積もる雪の様に心を少し覆っている。男は、外へ行って色んな作業をしているらしい。家の内には彼の集めた薬草なり皮なり干し肉なりが見える。
全て情報という形でのみ認識していたものがそこにはたくさんあった。
1人の人間が、自分のために生きていることを目の当たりにするのは、不思議な感覚だった。
私には、男が強く完成された人間のように思えた。
男は空が緋色になってまもなくして帰ってきた。
そして、回復薬を作ってやるからなといって、火の明かりを頼りに調合を始めた。
「薬ってのは奥が深いんだ…魔力の込め方を少し誤っただけでダメになっちまう。しかも素材だって一つ二つじゃないんだ。」
手を動かしながら、少しずつ言葉を吐く。
「あっ、すこしうんちくがすぎたな…」
急に思い立ったのか、以降静かになってしまった。
「…気になるのか?」
彼は私の方を見た。顔の片側が明るく揺れている。私は無意識でその様子に見入っていたのだろうか。
「…気にしないで」
「ふっ…」
彼はまた手元に視線を落とす。
「…なぁ。傷が癒えたら…どうするつもりなんだ。」
彼は私の心を見えすいたかのように言った。
「ここには、もう、用はない。」
「…ふん、冷たいこと、言ってくれるじゃねえか」
彼は笑いながら答える。
「…怒ったか?」
「いいや…ただ…寂しくてな…」
「そんなものなのか」
「…ああ」
静かにそっと肯定する彼は、やはり、「人」だった。
「…ねぇ、もう少し、見せてよ」
「…いいぞ、もちろんだ」




