空のうつわ
俺はその日、いつもみたく、に山へ狩猟とか、薬草を集めに行ってた。
それで、罠を張った場所に確認へ行く道中で、森の中で光るものを見たんだ。いや、光るものは森でも色々あるが、その鋭さは、その限りじゃなかった。
少し警戒しながら木を挟んでのぞいてみたら、人型のものが転がってた。
くっやなもん思い出すな…。
そう思って、すぐ近づいてみると、不思議なものがそこにあった。
「ん〜…?なんだこれ…」
それは、角の生えた人だった。
よく見ると色んな箇所に怪我をしているし、マントで隠れてわかりにくいが弱々しい見た目だった。
「死んでる…?」
興味半分怖さ半分でそっと触れてみると、指先から血管の脈動を感じた。
「生きてる…」
どうしようか、助けようか。
いや、もしかするとモンスターかもしれない。
助けない…?
…いいや、そんなこと、俺にはできない。
俺が考えている間に、俺の体はその子を、自分の家に運んでいた。
その子は、治療をした後、割とすぐに目を覚ました。
普通に会話ができたから、内心モンスターではないことに安心した。
だが、急に泣き出したかと思えば、真剣な目つきで変な事を聞いてきた。
「あなたは、神を信じる?」
俺は、ちょっとうつむいて答えた。
「そうだな…すこし、自語りでもしていいか?」
「話を、逸らすのか?」
その子の顔が少しこわばる。
「いいや、そう言う訳じゃないよ。だから少しだけ、話を聞いて欲しい。」
顔はそのままだったが、その子は頷いた。
「俺はもともと、軍医だったんだ。
そう、戦争の兵隊の1人だよ。戦況は常に熾烈を極めた…昨日仲良く飯を食べた仲間が、次の日には帰ってこないなんて日常だったさ。前線の様子なんてわからない。でも、俺は特にそのことを実感したと思う。
だってよ、怪我するならよ…治してやれるのに…帰ってこねんだ、あいつらはな。
…だからな、俺は、神なんていないと思うんだよ。神なんてもんがいるなら、きっとあいつらは救われてた。
正義を疑わないあいつらに、罪なんてない。」
…その子は、じっと俺の方を見ていたと思う。俺は顔を上げて微笑んで言ったよ。
「まぁ、軍医なんてもうとっくにやめてやったし、昔のことさ。」
窓から風がすっと吹く。
そしてその子は
「そう…よかった」
ぽつりとそう言って、
渡した白湯を一気に飲み干した。




