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15年後、“悪役”二人の望まぬ再婚約  作者: 鈴木べにこ


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番外編1.兄弟


「お前、もしかしてレーゲンか?」



 道端に座りボロ布を纏った髭を長く生やした男は顔を上げた。



「もし・・・ゴホッ。」 



 男はしばらく話していない為、声がカサカサで上手く声が出なかった。



「ゴホッ、ゴホッ。」


「大丈夫か?」


「・・・もしやエリックの兄上?」 


「やはりレーゲンか。」 



 次の瞬間、レーゲンが怯えたように周囲を見渡す。



「あの女はッ!?」


「あの女とは?」


「アナベルだよ!僕あいつから逃げてるんだ!見つかったら暗殺されちゃうよ!」


「待て待て、話がわからん。何故逃げてるんだ。」


「それは僕が・・・・・。」


  

 レーゲンは言いづらそうに下を向いた。


 その様子にエリックは肩をすくめる。



「もっと人通りの少ない場所に行こう。」



 エリックはレーゲンと2人、人通り少ない道へ行く。



「お前一体アナベルと何があったんだ?」


「兄上が嫌いになる理由をもっと考えればよかったよ・・・アナベルは僕を助ける振りをして僕を操ろうとしてたんだ!」

 

「俺はただ婚約者を勝手に決められたのなら嫌だっただけ・・・俺のことは何でもない。彼女なりに頑張ってお前に寄り添おうとしたんじゃないのか?」


「違うんだよ!彼女は何でも僕の上を行かないと気が済まないんだ!」



 レーゲンは必死にアナベルがどんなに嫌だったのかを熱弁する。



「仕事や所作の一つ一つに声を出してくるんだ!うるさいったらないよ!もう我慢出来なくなった時に、あのお茶を飲まされてる事を知ったんだ。」


「・・・なんのお茶だ。」


「子どもが出来にくくなる茶だよ。あの女、他の令嬢から妬まれてたみたいでお茶を密かに飲まされてたんだ。それを知った後、僕が直接お茶を飲ませる事にしたんだ。」


「何故だ?」


「あの女との子どもなんて死んでもお断りだったからね。」


「・・・嫌いなら普通に離縁すればよかっただろ。」



 レーゲンは首を激しく振った。



「無理だよ!だって両親はあの女の味方だし、兄上が廃嫡になったんだよ!?僕なんてどうなるか想像もつかないよ!それに子が出来にくくなる茶を飲ませた後だったし・・・。」


「子が出来にくくなる茶はやりすぎだろ。」


「それは・・・やり過ぎたと反省してる。でも、兄上は凄いよ。」


「いきなり何を言い出すんだ。」


「当時皆んなが、兄上よりも僕の方が賢いって言ったり、僕の方が王太子に向いているって言ってたけどそうじゃなかった。ほとんどあの女に操られてたけど。采配とか決定とか時に人に恨まれる事もあったのに、兄上は嫌われても好きにやっていただろ?」


「あれはただ俺が傲慢だっただけだ。」


「僕には人に恨まれるなんて無理だったよ。」


「アナベルには恨まれてよかったのか?」


「あの女は別。大嫌いだ。兄上が婚約破棄するのも当然だよ。」


「・・・・・・メイドと逃げたと聞いたが、メイドは何処言ったんだ?」


「荷物とお金を全部盗んで消えたよ・・・兄上ぇ、もうやだよ!昔みたいに、兄上がいた頃の城に戻りたいよ!あの女が僕を探してるって聞いて、逃げ回るのもう嫌だよ!兄上助けてくれよぉ!」



 レーゲンは涙をボロボロ流す。



「レーゲン、もう大丈夫だ。俺がなんとかする。」


「うん・・・ありがとう兄上。」



 エリックとレーゲンは抱き合った。



「そうだ、レーゲン。今美味しいと評判のワインを買って来たんだ飲むか?」


「ワイン!久しぶりだ!飲むよ!」



 エリックはワインボトルのコルクを抜くとボトルのままレーゲンに渡した。


 レーゲンはまるで喉が渇いて水を飲む様にゴクゴクとワインを飲んでいく。


 半分くらい飲んだところで、一度止まり口を拭う。



「兄上ごめんね!美味しくて止まらなかったよ!」


「いいさ、再会記念だ。残りも飲めばいい。」


「本当!!ありがとう兄上!!」



 残りもゴクゴクと飲んでいくレーゲン。


 あと残り少しの所でレーゲンは止まる。



「あれ?・・・兄上、なんか、おかしいんだ。」



 ワインボトルが手から落ちて地面に当たると割れた。


 割れたボトルから残りのワインが地面に広がり吸われる。



「なんか、胸が熱いんだ。お腹が1番熱い。それになんか、ゴホッ!・・・ガボッ!・・・ぐるじいよぉ。」



 レーゲンの口からワインなのか血なのかわからない色の液体が咳をする度に口から溢れる。


 ガクンとレーゲンが倒れる瞬間、エリックが抱き止めた。



「すまない、レーゲン。」


「あに、上・・・ゲボッ!・・・ぐる、じぃ。」


「全て俺が悪い。だから恨むなら俺を恨んでくれ。」


「あに、う、え?」


「お前のやった事が許せなかったんだ。」


「な・・・に?」


「全ての元凶である俺を恨んでくれ。」


「あ、に・・・・・・・・。」


「レーゲン。」


「・・・・・・・・・・・。」


「すまなかった。」



 レーゲンは息を引き取り亡くなった。


 エリックな涙を静かに流しながらレーゲンの亡骸を抱きしめた。


 エリックがレーゲンを見つけたのはたまたまだった。


 仕事でいつもより遠い初めて行く街に来た時、痩せ細っていたが髭を生やしていた時の自分に似ている男を見かけた。


 その男がレーゲンだと直ぐにわかった。


 レーゲンだと分かると怒りが湧いてきた。


 過去にアナベルに子が出来にくくなる茶を飲ませていたからだ。


 そしてエリックは秘密のルートで毒を購入した。


 その毒をワインに入れ・・・・・。



「地獄で俺に復讐してくれ。」



 エリックは思った。


 死んだ後はアナベルと同じ天国にはいけないだろうと。


 その後、お金を払って墓地に埋葬してもらえる場所にレーゲンの亡骸を預けるとその街を後にした。


 深夜になるとようやく家に着いた。



「お帰りなさいエリック。」



 アナベルが寝ずにエリックを待っていた。



「ただいま・・・先に寝ててもよかったのに。」


「なんだか、アナタの様子がいつもと違ったから。」



 エリックはアナベルを抱きしめた。



「ありがとう・・・俺は大丈夫だ。」


「・・・そう。辛い事があったらいつでも言ってくださいね。」


「ああ。」



 静かに涙を流すエリックをアナベルは何も言わず、その背中を優しく叩くのだった。




END

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