19.2人の関係とは
山脈を超えてロゼリアに来てからエリックとアナベルの関係は少し変わった。
山脈越えは2人で協力しなければ越えられなかった。
だからかもしれない。
2人の間に絆が出来ていた。
山脈を越えると大きな街が広がっていた。
そしてロゼリアに着くと直ぐに小さな家を借りた。
旅暮らしより、住む場所を決めた方がいいとエリックは考えた。
美男美女が山脈を越えてきた事に街中で噂になった。
駆け落ちだの、借金取りから逃げてきただの、誰もが理由を好き勝手に噂をした。
誰もが山脈越えの聞きたがったが、エリックもアナベルも『ただこの街に住みたかった。』としか言いわなかった。
そしてエリックとアナベルも、病院で学んだことは夫婦じゃないと否定するのは面倒だということ。
2人とも誰かに夫婦かどうか聞かれたら【夫婦】と答えるようにした。
山脈越えから半年が経ち、新聞でガンベールや両親そしてモモのことを知った。
しばらく何日かして両親が処刑されたことを新聞で知ったエリック。
その日は珍しく酒場で浴びる程酒を飲んだ。
次の日、目を開けると。
「何でだ・・・。」
ベッドで隣に裸のアナベルが寝ていた。
「やって、しまったのか?」
エリックは片手で頭を抱えた。
アナベルは胸元をシーツで隠しながらゆっくり起きた。
「エリックさん・・・覚えてますか?」
「・・・・・すまない。」
全く覚えていないエリック。
「でしょうね。泣きながらベロンベロンでしたし。」
「その、すまなかった。」
「情け無いからこんな事で謝らないでください。私も生娘じゃないんです。私達もいい大人です。これぐらい事、犬に噛まれたと思う事にします。では、私は仕事に行きますので。」
アナベルはシーツを身体に巻くとスタスタと部屋を出て行った。
何事もなかったかのように。
「・・・・・夢か?」
何事もないと思いたかったエリックだった。
だが、そうはいかなかった。
数週間後。
アナベルは体調が悪かったので病院にいた。
「え?妊娠?わたくしの聞き間違えかしら?今妊娠と聞こえましたわ。」
動揺して昔の口調に戻ってしまう。
「もう30過ぎですよ?ずっと出来なかったんです。できる訳ありません。」
「少ないだけで出来ない訳じゃないよ。おめでとう旦那さんも喜ぶだろうね。」
先生、あの男は旦那じゃないんです。
そう口に出したかった。
「酔った勢いで子ども作ったって、大人のやる事?」
アナベルは街を歩きながら項垂れた。
「どうしよ。」
あの男の事だ。
言えば責任を取るだろう。
だけどアナベルはそれが嫌だった。
本当の夫婦でもなければ、お互い恋愛感情もないあの男に責任を取らせたくなかった。
「逃げよう。」
責任を取らせるよりプライドが勝った瞬間だった。




