2.木こりの元王太子と不安定な王太子妃
高級な馬車から降りたった高貴な身分の美しい女性の言葉に不敬にも「は?」と言ってしまったブロンドの髭もじゃ男。
目元だけでも相当な男前と分かる髭もじゃ男は不快な感情を露わにした後に、一先ず目を伏せてふーっと深いため息を吐いた。
「外ではなんですから中で話をしましょう。」
髭もじゃ男は小さな小屋の中に美しい女性と護衛の2人の騎士を招き入れた。
部屋の中央にある小さなテーブルを挟んで向かい合って座っている髭もじゃ男と女性。
女性の後ろには端正な顔の騎士が2人いた。
「先程、私の聞き間違いでなければ私を迎えに上がったと・・・私のような者を殿下、とお呼びしたように聞こえましたが。」
「聞き間違いではございません。貴方様をお迎えに上がりました。エリック王太子殿下。」
髭もじゃ男ことエリックは不快感を隠す事なく眉間の皺を深く刻んだ。
そしてエリックは深々と頭を下げた、テーブルに頭が付きそうになるくらいに。
「お断り致します。」
「っ!!!」
女性はショックを受けたように息を飲んだ。
「申し訳ありませんが私のような者には過ぎた話です。そして、あの時は若く未熟な私によって王太子妃殿下に死を承っても罪を消す事が出来ない程の罪を犯しました。ですから私にはとてもその様な事を引き受ける資格はありません。長い事謝罪する事できず申し訳ありませんでした。」
髭もじゃ男の名はエリック。
その昔、この国の王太子であった。
そしてエリックの目の前に座る美しいの女性の名はアナベル。
アナベルはこの国の王太子妃という尊い立場にある。
今何が起こっているかというと、エリックは昔王太子だった時の過ちをアナベルに謝罪していた。
エリックは最低な事に婚約者だったアナベルを散々冷遇した後に、たくさんの人がいる卒業パーティーの場で婚約破棄を宣言したのだった。
その当時の事についてエリックは頭を深く下げて謝罪する。
「あの時の愚かな私の数々の行為は謝っても謝りきれません。死を持って償っても構わないと思っております。」
予想外のエリックの行動にアナベルは震えた。
アナベルの顔には驚き、悲しみ、焦り、怒りと色んな感情が混ざり震えながら下唇を噛んでいた。
「や、止めてください・・・貴方様は王太子殿下なのです謝らないでください。死ぬなんて絶対言わないでください・・・あの時も・・・あの時も悪かったのは、わたくしなんです。わたくしが、悪かったのです。結局、全てわたくしが。」
アナベルほテーブルに置いていた手を強く握った。
「全てわたくしの・・・。」
アナベルの目からポロポロと涙が溢れ落ちる。
涙を流すアナベルにエリックはギョッとして目を見開いた。
直ぐ様騎士の1人が綺麗なハンカチを差し出しアナベルはそれを受け取り目元に当てた。
「ふっ、ぐっ、うぅ。ごめんなさいっ、最近涙脆くて・・・・・。」
涙を流すアナベルの様子にエリックは静かに立ち上がり、棚からコップ4つを出すと台所の釜に置いてあるポットを温めコップにお茶を注いだ。
「野草で作った茶です。落ち着きます。お飲みください。」
「えぇ、いただくわ。」
「ちょ!王太子妃様っ!?」
エリックからの得たいの知れないお茶を躊躇なく飲もうとするアナベルに失礼にも騎士は止めに入ったがアナベルは構わず飲んだ。
「あら、美味しい。泣いてた勢いで《《久しぶりに》》飲んだけど、お茶ってこんなに美味しかったのね・・・。」
涙の跡を残しながら穏やかな顔で小さく笑うアナベルに、騎士2人は顔を見合わせると一気に飲み干した。
「ホ、ホントだ!美味しい!」
「野草ってあんがい美味しいですねっ!」
騎士2人の若い反応にエリックはふと笑った。
エリックのお茶のおかげでアナベルは落ち着き場の雰囲気も多少は和んできた。




