17.やることがある。
1ヶ月後。
「エリックさん!怪我人が煙草吸わないで!何度も言ってるでしょ!」
パイプ煙草を吸っていたら看護師の女性に怒られた。
エリックは生きていた。
さらに。
「エリックさん今日もカッコいいわ~!」
「素敵っ!」
「奥さんがいるみたいよ!奥さんも美人だとか!」
「ショックー!」
怪我で動けない時に不衛生だから髭を勝手に剃られた。
今のエリックはマッチョの美形になっていた。
マッチョな所も男らしいとかセクシーとかで女性に人気だった。
そして、アナベルはと言うと。
エリックの怪我が治るまでじっと出来ず、病院の事務を手伝っていた。
アナベルはワーカーホリック体質だった。
エリックが刺されて気を失ったあと、何があったのかと言うと。
ミリアに刺されたエリックを誰かに助けてもらおうと、アナベルは近くの民家にヒールで走った。
その民家が運良くたまたま医師の家だったのだ。
医師の手を借りてエリックを家に運ぶと治療が始まった。
運がよかったとしか言いようがない。
そしてアナベルは倒れているミリアを縛り上げ、血のついたナイフを近くに置いた。
そしてこの村の憲兵に、変質者に男性が刺されたと通報したことによりミリアは逮捕された。
檻から直ぐに出てこないことを祈るばかりである。
エリックとアナベル2人の容姿や雰囲気から、どこからか逃げてきた貴族ではないかと疑う者が多かった。
特にアナベルは貴族の女性らしい言葉遣いになってしまう為余計怪しまれた。
だから一般的な話し方になるようにアナベルはとても苦労している。
エリックとアナベルは夫婦と誤解されてもいたが、否定しても、何度も聞かれるのでその内2人とも否定するのを止めた。
エリックは新聞を見る。
【少年王就任、モモ様が新たな王様へ】
モモがこの国の王となっていた。
『やる事があるんだ。』
「アイツ王になって何をやるつもりだ?」
エリックは嫌な予感がした。
それは血が繋がってることによる予感なのか、それともただの予感なのか・・・。
次の日には新聞でアナベルの処刑が知らされた。
「あら?わたくし生きているのに処刑されてるわ。」
「モモの命令か?」
これでアナベルを追ってくる可能性は無くなった。
理由は不明だが・・・。
その次の日の新聞にはエリックの事故死が伝えられていた。
「王族に戻る気は無いから助かるが、モモの目的はなんだ?ただの優しさか?」
エリックは首を傾げる。
病院退院の日。
カリナが用意した荷物の中には沢山のお金が入っていた為、そのおかげで入院費とホテル代も余裕で払えた。
「このお金って金庫のお金よね・・・カリナ大丈夫かしら?」
どうやら金庫から盗んだお金らしい。
ちなみに荷物の中身はアナベルの私物の宝石や飾りも入っていたが、城にある金目の物もボストンバッグに入るだけ入っていた。
ある意味よくできた侍女である。
病院を出る時たくさんの女性がエリックを見送った。
「エリックさーんまた来てね!」
「怪我でも病気でもエリックさんなら大歓迎よ!」
「エリックさんまたね!」
「ああ、皆んなありがとう。」
手を振るエリックをアナベルはジト目で見ていた。
「何だその目は?」
「髭剃っただけで調子にのらないでください。」
「はぁ?調子などのってない!」
「ふん!」
早歩きで歩き出すアナベルを追いかけるエリック。
「それでわたくし・・・私をこれから何処に連れて行くのかしら?エリックさんのいた町?」
「いや、隣国に行く。ミリアが娼婦をやっていた方の隣国ではなく・・・反対側の方の隣国ロゼリアだ。」
「それって山脈を超えるって事じゃない!貴方何考えてるの!!?」
ロゼリアに行く者は山脈を越える必要があるので少ない。
「勘だ。」
「私、貴方の勘が優れてるなんて初めて聞いたんですけど!」
「モモは王になって何かをやるつもりだ。俺の予想だが、悪い事な気がする・・・。」
アナベルはため息をついて、真っ直ぐにエリックをみた。
「分かりました。貴方の言う通りにします。」
そしてビシッとエリックを指差す。
「エリックさん!山脈越えがどれ程大変か知っていますか?」
「話ぐらいでしか・・・。」
「私は一回行った事があります。」
アナベルの顔が暗くなる。
「あの方を探しに行った時に・・・。」
あの方とはレーゲンの事だ。
「気候も変わりやすい。足元は常に不安定。落石にだって注意しないといけない。筋肉男の貴方だって、超えられるか分からないんですよ!」
「そんなに大変なのか?」
「はい!だから念入りに準備します!」
こうして山脈の近くの町で2人が山脈越えの準備をするのだった。
その頃、この国の城の玉座の間では。
「隣国、レイラストに戦線布告をする。」
モモはニヤリと笑った。




