16-3.
「誰かー!わたくしをこの筋肉男から助けて!」
「うるさいっ!そこをどけぇ!!」
斧を振り回しながら前に進む。
騎士達は少しずつ逃げながら後退していく。
「エリックさん!アナベル様の荷物持ってきました!」
カリナが大きなボストンバックを抱えながら現れた。
「カリナ助けて!この筋肉男が離してくれないの!」
「嫌です・・・アナベル様、これからは王太子妃じゃなくて、ただの女として幸せになってください。」
「貴女まで何言ってるのよ!?」
アナベルの高級な髪飾りが廊下に落ちる。
まるでそれが王太子妃から、何でもない女になった様な気がして、アナベルの目から大量の涙が溢れた。
「わたくしは、わたくしは・・・っ!何なのよぉ!」
「悪役王太子妃だろ。そして俺が悪役王太子だ。昔からそうだったろ?だから悪役はここで消えるんだ。物語の悪役のようにな。」
「・・・・・なんて最悪な幕引きなのかしら。最悪よ。最悪。貴方なんかに助けられるなんて。」
「生きて行くのが大変なのは、ここを出てからも変わらないぞ悪役王太子妃!」
「うるさいわよ!悪役王太子の癖に!」
斧を振り回していると城の入り口に到着した。
エリックが城の入り口のドアを蹴り破ると、外には花で飾られた馬車があった。
フレディがエリックの前に出る。
「王太子殿下、我々騎士からのプレゼントして馬車を用意しました。」
エリックの口がポカンと開く。
騎士達はアナベルの処刑に反対派が多数だったので、エリックがアナベルを連れて逃げようとしていると聞いた時喜んだ。
「エリック殿お幸せに!」
「エリック殿・・・アナベル様を頼みますよ!」
ケイとトーマスの声に意識を戻したエリックは馬車にアナベルを乱暴に入れた。
「痛い!」
そしてカリナから渡された荷物も乱暴に入れた。
「アナベル様!忙しかったけど、充実した毎日でした!ありがとうございました!」
馬車の外でカリナが頭を下げる。
その言葉を聞いてアナベルは抵抗を止めた。
馬車に入れられた時点で王太子妃でなくなった気がしたからだ。
ポロリとまた涙が落ちる。
涙を流しながら笑った。
「こちらこそ、ありがとう。カリナ。」
もう、ただの女になったのだと自覚した。
御者台に乗って手綱を持つエリックは、騎士達とカリナに目を向けた。
「ありがとう。」
そして馬車は動き出す。
アナベルを乗せて。
「お幸せにー!」
「お元気でー!」
皆んなに見送られながら城を出た。
3時間程経った時。
馬車は休憩で止まった。
エリックが馬車のドアを開けると、涙と鼻水の跡が顔に付いててこっちを睨むアナベルがいた。
「近くに川がある。顔を洗うといい。」
アナベルは不機嫌を隠さず川へ向かった。
そしてエリックも川へ向かった。
エリックは気を抜いていた。
だから自分達を追う蹄の音に気付かなかったのだろう。
「すっきりはしたわ。でもわたしくし、貴方が勝手に助けた事許してませんから。」
「わかっている。君の面倒は最後まで俺が責任を持つ。」
「ペットみたいに言わないでくださいまし!」
「はいはい。」
「エリック様っ!」
2人は背後に忍び寄る影に気付かなかった。
グサリ!!
「ぐあッ!?」
背後からエリックの脇腹にナイフが刺さる。
「アンタを、アンタ達だけを幸せになんてさせないよ!!」
ミリアだった。
ミリアが2人を追って来たのだ。
エリックの傷口から血が流れる。
「アハッ!アハハハハハハハハハッ!ざまぁないね!早く死んじまいな!」
「えいっ!」
ごんっ!
と音ともにミリアは倒れた。
アナベルが木の棒で思い切りミリアの頭を殴って気を失わせたのだ。
木の棒を捨て、血を流して倒れるエリックの元へ駆けつけるアナベル。
スカートをビリビリと破き応急処置をする。
「わたくしの面倒を見るんでしょ!こんな所で死んだら許しませんから!」
「ハハ、悪役の最期にピッタリだな。」
「何バカな事言ってるのよ!」
「すまな、かった・・・何も、かも・・・。」
「ちょっと止めてください!しっかりして!エリック様!」
「すまなかった・・・・・・。」
エリックは意識を失った。
「エリック様!エリック様ッーーー!!」




