16-2.
地下牢扉前。
「俺を中に入れろ。」
青い顔の看守の前には、斧を背負って自分を睨む筋肉質の男。
「お、王太子殿下!殿下のご命令でも無理であります!死刑囚には明日の刑の執行まで誰にも会えない決まりになっております!」
「そうか、じゃあ・・・。」
エリックは拳を看守の腹にめがけた。
「寝てろ!」
「ぐはッ!!」
看守は腹を抑えて倒れた。
エリックは地下牢に入り、そのまま奥に進むとアナベルのいる牢を見つけた。
「アナベル・・・さん!ここを出るぞ!」
「・・・・・。」
「アナベルさん、アンタこままじゃ死ぬぞ!俺と逃げるぞ!」
「・・・・・。」
「アナベルさん!」
アナベルはエリックの言葉を無視して、無言で背を向けている。
「答えないのは知らんが、今から鍵を壊す!離れていてくれ!」
「余計なことしないでくださいまし!!」
アナベルは叫んだ。
「やっと死ねるの!死ぬ勇気もなかったのに!やっと死ねる!誰にも愛されず!愛していた人には嫌われ、子どもができにくくなるお茶を飲まされ、王太子2人を廃嫡させた魔女と言われた!皆んなの笑い物!皆んなの嫌われ者!それがわたくし!だから死なせてよッ!!死なせてッ!!」
アナベルの心からの叫びだった。
ずっと心の奥底に隠していた本音。
アナベルの涙が次から次へと流れてくる。
エリックは斧を振り上げると鍵にめがけて振り落とした。
ガキンッ!!
開いた扉からエリックは中へ入り、アナベルの前に立つ。
2人は見つめあった。
「全ての原因は俺だ。悪役の王太子が真面目な公爵令嬢を陥れようとしたのが全ての始まりだ。お前の不幸は俺のせいだ。殺すなら俺を殺せ。」
「・・・殺せる訳ないでしょ。悪役が悪役をなんて・・・。」
アナベルは自嘲するように笑った。
「出てって。私は明日死ぬから。やっと死ねるんだから。」
エリックは眉間に皺を寄せるとアナベルにズンズン近づいた。
「な、何よ!近づかないで!」
そしてアナベルの腰に腕を回すと左肩に背負った。
一瞬でアナベルの視界の天と地が逆転した。
「何するのよ!離して!離しなさい!」
逆さになりながらポカポカとエリックを叩くアナベル。
「死ぬのも、殺すのも、考えるのはこの城から出てからだ。」
「離して!離して!」
地下牢の扉を出て、城の入り口に向かう。
「離して!離して!馬鹿!筋肉!髭もじゃ!」
アナベルのささやかな攻撃や罵倒などエリックは何も効かない。
ズンズンと廊下を歩いていく。
廊下にいる人々がヒソヒソと会話をしながら2人をみている。
「屈辱よ!」
アナベルの目から涙が溢れる。
「ずっと、解放されたいって、ずっと自由になって外に出たいと思っていたのに・・・こんな方法でここを出て行くなんて。」
逆さの涙は絨毯に染みを作っていく。
「屈辱だわ!誰かわたくしを殺して!」
「誰にも殺させん・・・ここを出るまではな。」
騒ぎを聞きつけた騎士達が数名集まっていた。
その中には見知った顔の騎士もいる。
「エリック様、その方を地下牢にお戻しください!」
エリックはニヤリと笑った。
「断る。この女は俺の婚約者だ。婚約者を助けて何が悪い。」
エリックは斧を前に向けた。
「俺は今からこの、ガミガミうるさいのとここを出て行く。」
「何ですって!?」
「腕を切り落とされたくなければ道を開けろ!」
騎士達は剣やサーベルは抜いてはいるが、王太子の相手にどうすればいいか分からずただ廊下の道を塞ぐ事か出来なかった。




