15-3.
「俺に、あんな、こと!殺す!殺してやる!」
「はぁ?子供のアンタに何ができんのさ!」
ピンクはミリアに体当たりし後ろに転ばせると、ミリアに馬乗りになって何度も小さい拳を振り下ろした。
ミリアも抵抗する。
抵抗した時にピンクの顔に爪で引っ掻いた跡が3本も出来た。
周囲でぼっーと見ていた娼婦達は止めに入る。
「このクソババア!」
「よくも商品である顔を殴ったね!」
「それでも母親かよ!」
「はっ!母になった覚えなんてないよ!」
「ああああああああ!!この野郎!!」
ピンクは暴れた。
悔しさ虚しさ怒り全ての負の感情がぐちゃぐちゃになって泣きながら暴れた。
「チッ!そいつはもう使い物にならないね。外に放り出しきな。」
ミリアの言葉で娼婦達は女の子のドレスのままピンクは外に出された。
「可哀想だとは思うよ。今日のことは犬に噛まれたと思う事だね。せめて取り分は持ってきな。」
娼婦が目の前に何枚の札を落とした。
「もう来るんじゃないよ。来ないだろうけど。」
ピンクは涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔でお札を拾った。
情けなかった。
買われたことを認めたことになるから。
それでもスラムの習性で金や金になるものは拾わずにはいられなかった。
「あああああああああ!!!」
靴をはかされずドレス姿で追い出されたピンクは、叫びながら走り出す。
人々は振り返る。
何処に向かっているのかは分からなかった。
足の裏がボロボロになろうが叫びながら走っていた。
何時間経ったのだろう。
涙と鼻水が止まった代わりに、大量の汗が流れていた。
そしていつもの知ってるスラムに着いていた。
スラムの子ども達はピンクの格好を笑った。
知らぬ間に握ってたお札はなくなっていたが、どうでもよかった。
全てがどうでもよかった。
あの経験の後、全てがどうでもよかった。
死んでしまいたい気分だった。
スラムの路地裏の一つ、その奥に三角に座って膝に顔を埋める。
雨が降ってきた。
雨の冷たさなんか感じなかった。
「足、大丈夫?」
頭上から声がしたが顔は上げなかった。
「治そ、う。」
腕を引っ張られ、なすがままに目の前の人物に連れて行かれた。
「お前、ネコ?」
「う、ん。」
ネコは自分の隠れ家に連れて行くと、綺麗なカーテンを裂いて、ピンクの足に巻いた。
「この布どこで手に入れた。」
「たま、たま、貴族の・・・ゴミで。」
「そか。」
ネコはピンクをじーっとみて首を傾げた。
「女、の子?」
「違う。」
「服・・・。」
ピンクは俯きながら小さな声で答える。
「娼館で着させられた。」
ネコの片目が大きく広く。
何があったか分かってしまったのだろう。
ネコはピンクを静かに抱きしめた。
「獣くせぇ。」
「う、ん。」
ピンクはネコに抱きしめられながら、静かに涙を流した。
ネコはその涙が止まるまでずっと優しくピンクを抱きしめていた。
ずっと、ずっと。
その後、泣き止んだピンクは自分の服をどうにかすべく、質屋に行った。
「親父、この服と俺のサイズに合う服と交換してくれ。あと靴も。」
「お前その服どうしたんだ?」
「・・・・娼館で着させられた。」
「!!・・・わかった待っててくれ。」
全てを察した質屋の店主は、男の子用の服と靴を持ってきた。
そしてお釣りだと銅貨を握らせてきた。
「いいか、お前の身に起きた事は絶対忘れるんだ!いいな!」
ピンクは店主がいい人だとわかった。
自嘲気味に笑った。
「忘れられたらな。」
店の外に出ると猫を抱いているネコがいた。
「ネコ何食いたい?」
「お腹、空いてない・・・。」
「嘘つけ。串焼きでも食うか。」
それからのピンクは媚を売るのは止めて、盗みを働くようになった。
容姿を使って媚びを売る事は娼婦と同じだと思ったからだ。
それが嫌なピンクは盗みを働き、盗んだ食べ物はネコと分け合った。
「あなたの、名前、何?色んな・・・呼び方、ある。」
「なんでもいい。好きに呼べよ。」
「・・・桃色の髪、モモが、いい。」
「モモか・・・いいじゃん。」
久しぶりにモモは笑った。
モモはネコとつるむ様になり、ネコをいじめようとする輩には制裁を加え、とうとうスラムで1番強いといわれていた少年を喧嘩で倒した。
そして王太子の息子という噂も交じり、みんなから【スラムの王子様】とも呼ばれていた。
それでも夜になるとあの時を思い出してうなされた。
「なんで俺が・・・何が王太子の息子だよ!なんで俺は捨てられたんだよ!なんで俺は!俺は!・・・親父がいたら違ったのかなぁ・・・。」
涙を袖で無理矢理拭った。
噂の父親が憎くて仕方なかった。
全ての不幸の元凶な気がした。
「モモ、大丈夫?」
「大丈夫。」
モモはネコを抱きしめた。
ネコの独特な臭いを嗅ぐと安心して寝れた。
それから2年後迎えにきたのは父親ではなく、騎士達だった。
「お迎えに上がりました。王子殿下。」
「は?」




