15.モモの傷
当時ミリアは妊婦の身体で、移動しながら日銭を稼いでいた。
国境の町に到着した途端陣痛が来て裏路地で出産。
臍の緒がついたままの赤子をゴミの山の上に置いた。
「ふんっ!私に似て良かったね。誰かが直ぐに拾ってくれるさ。」
ミリアの予感があたった。
赤子を拾ったのは最近赤子を失っておかしくなってしまった女性だった。
「マリアこんな所にいたの!帰りましょ!」
その時のモモの名前は、当時女の子の名前でマリアと呼ばれていた。
女性は赤子を無くしたばかりだったのでお乳が出た。
だからモモーーマリアは生きていけた。
女性には旦那がいなかったので母子家庭としてマリアは過ごしていた。
色んな人に何故女の子の名前をつけられのか?何故母親に似てないのか?よく言われたが幼いマリアにはわからなかった。
だがマリアは母が優しくて大好きだった。
そして拾われて3年経ったある日、目の前で母が貴族の馬車に轢かれた。
マリアにはどうすることもなかった。
ただ、ボロボロになった母の遺体をみていた。
何も食べずに2日経つとお腹が減った。
りんご売りの屋台をじーっとみてると屋台のおじさんが手招きをした。
「そこのピンク、お腹空いてるなはおいで。」
マリアーーピンクはトコトコと屋台に近づく。
「お前可愛いから特別にやるよ。」
おじさんはりんごを一つピンクにやると頭を撫でてにっこり笑った。
小さな歯で頑張ってりんごを齧った。
そのりんごは甘くて、今まで食べた中で1番美味しいりんごに感じた。
ピンクは今度は少し離れた所で串焼き屋をみていた。
すると串焼き屋のおじさんと目が合うとにっこりと笑って手招きされた。
「水色目こっちにこい。」
ピンクーー水色目はトコトコと串焼き屋に近づく。
「他のみんなには内緒だぞ。」
ジューシーな肉のついた串焼きを水色目は無料で手に入れた。
そこで水色目は理解した。
自分の容姿が特別優れていることに。
「おじさーん!お腹が減ってるんだ一個頂戴よ!お願い!お願ーい!」
断る人もいたが、大抵は猫撫で声でお願いすると食べ物をくれた。
その度に色んな呼び名前で呼ばれた。
ピンク・水色目・子猫・猫目・チビガキ・桃ほっぺ・女の子みたいなガキ、など・・・飯にありつけるならなんて呼ばれても良かった。
でも、無料でご飯をもらえていることに面白く思ってない連中がいた。
スラムの子ども達だった。
子ども達な幼い水色目を囲って、みんなで蹴ったり殴ったりした。
水色目が泣きながら止めてといってもやめなかった。
リーダー格のスラムの子どもがツバを吐いた。
「調子に乗んな!」
意味がわからなかったが、しばらく考えると嫉妬されていた事が分かった。
自分が食べ物をあっさり手に入れていたことに嫉妬されていたと・・・。
それからスラムの事もわかった。
スラムは親のいない子供達がたくさんいて、リーダ格の男の子を中心に回っていた。
そしてほとんどの子供が毎日食べ物を手にいれるのに苦労していると・・・。
働いてる子供はほんの一部で、ほとんどは盗みをして飯にありついていた。
だから水色目は頭を使った。
リーダ格の次に強い奴を味方につけようと。
「僕と仲良くなったら無料で飯が手に入るよ。」
盗みはしないことに越したことはない少年のライはその言葉に乗った。
それからライは水色目の用心棒になった。
スラムのリーダ格の少年は自分の次か同格の少年と揉めることを望まなかったので、水色目に簡単に手を出せなかった。
「僕に喧嘩のやり方を教えてよ!ライがいない時に狙われたら困るだろ?」
水色目はライに喧嘩の仕方を教わった。
身体は小柄なのに頭もよくセンスもあった為、ライがいない時に喧嘩を吹っ掛けられても、多少の傷は負ったやり返す事ができた。
「うわぁっ、ネコだ。」
ライが顔を顰めた。
ライの視線の先には顔のやけどを髪で半分隠した女の子がたくさんの猫に囲まれて座っていた。
「アイツ何?初めて見た。」
「ネコって名前の奴で、なんか猫に育てられたらしい。それにあの顔だろ気持ち悪いから誰も近づかねーの。それに雰囲気も暗くて気味悪いだろ?早くあっち行こうぜ!辛気臭いのが移る。」
「ふーん。」
これが水色目が初めてネコを見た時だった。
ある日、大通りで水色目が串焼きのおじさんに媚びを売って強請った串焼きをライと半分個にして食べている時だった。
派手な装いの美女数名がヒールをカツカツ音を立てながら歩いていた。
目立つ集団だったので大通りにいる人達は遠巻きに集団を見ていた。
集団の1人が水色目を指差した。
「ねぇ!あの子アンタの子供じゃない!?」
その言葉に1人の女性がこっちを見た。
目がバチリとあった瞬間。
理解した。
この女の人が自分の本当の母親だと。
「・・・・・。」
何もかもがそっくりだった。
目の色、髪の色、顔の作り、パーツの形、その位置も。
もし水色目が女性の大人になったらこんな風に育っていたんだろうなと、水色目が思う程だった。
自分とそっくりの女性は一瞬目を合わせると視線を逸らし、止めていた足を直ぐに動き出した。
「ふん!やっぱ私に似て容姿で得してるわね。串焼き食べてるスラムのガキなんて初めて見たわ。」
「あら、本当ね~!お母さんに似てよかったわね王子様!あははは!」
「ちょっと、余計な事言わないでよ全く。」
「本当の事じゃない王・子・様!」
派手な集団はキャハハと笑って去っていった。
「やっぱりあの噂本当だったんだ!」
珍しくライが興奮していた。
「噂って何だよ?」
「今の娼婦だよ!隣国の娼婦の中に王太子を堕落させて平民に落とした娼婦の噂があるんだ!」
「王太子を堕落させたのが、今のあの・・・俺に似た女?」
「お前今王子様って呼ばれただろ?お前には王族の血が流れてるんだ!すげーぞ!」
ライはすごいと言っていたが水色目は喜べないでいた。
「でも、今はただのスラムのガキじゃん・・・王太子だって言う親父もどこにいるかわんねーし。俺は何も変わらねーよ。」
ライは肩をすくめた。
「ま、そうだな。」




