11-3
「何とお呼びすればいいのか困りましたね・・・ネコ様はこのお方の事をなんとお呼びしているのですか?」
アナベルが優しくネコに問いかける。
「モモ・・・って呼んでる・・・。」
「モモ様いい名前ですね!モモ様って呼ぶことにしますね!」
「別にいいけど。」
アナベルに照れたようにそっぽ向くモモ。
「思ったのだが、このモモがいるなら俺は用なしで帰れるのではないか?」
手を挙げて発言するエリック。
アナベルは真剣な目でエリックに向き合う。
「エリック様には酷な事かと思いますが、率直に申し上げます。王太子として貴族達に宣言された今、エリック様は帰れません。」
「はぁ!?」
「オッサンうるさい。」
「何故帰れないんだ!?」
「エリック様が王太子になったからです。エリック様は陛下を説得する前に公の場で宣言されてしまいました。だからエリック様は今《《王太子》》なのです。」
「それは困るっ!俺には帰る場所があるんだ!」
「エリックさん!これ以上アナベル様に近付かないで!」
アナベルに詰め寄るエリックから守るように2人の間に立つカリナ。
「陛下と王妃様はエリック様を離すことはないと思います。だってやっと再会できた息子ですもの・・・孫まで出来て今が1番幸せなんだと思いますわ。」
「父上と母上の気持ちなど知らん!俺は帰りたいんだ!」
「エリック様・・・もう昔とは違うんです。今のエリック様には価値がつきました。ですから誘拐・利用・暗殺の危険があります。今のエリック様があの町に戻ったら、貴方を待っている家族に迷惑がかかってしまいますよ。」
「・・・・・煙草が吸いたい。」
エリックはその場に座り込んだ。
エリックの運命はこの城に戻ってきた時点で決まっていたようだ。
「そしてわたくしは名ばかりですがエリック様の婚約者です。何なりと申し付けてください。」
「君はそれでいいのか?」
「陛下の命令とあらば。」
エリックは自分の婚約者になってしまたアナベルを何とも言えない複雑な思いで見た。
沈黙。
そんな沈黙した空気を破ったのはモモだった。
「俺はいつか親父だと語る奴がいたら言ってやろうと思ってたんだ。」
モモはエリックを鋭い目つきで睨んだ。
「お前のせいで俺は《《地獄を見た》》。だからお前も地獄に落ちろってね。」
モモの言葉にエリックは立ち上がる。
「俺が地獄を見ていないとでも?」
「ハッ!たかが知れてるだろ!」
こうして冒頭の2時間の睨み合いになった。
無言での睨み合い。
おろおろとしているネコとは反対にアナベルとカリナは冷静に呆れていた。
「アナベル様は2人は実の親子だと思いますか?」
「どうでしょうね。」
「いつまで睨み合ってるんだろ(似た者親子め)。」
「ふぅー・・・そろそろ止めないとですわね。」
アナベルは睨み合っている2人の間に立つ。
「はいはい2人とも睨み合いはもうお終いです。思う所があるならまた話し合いの場をもうけます。」
「こんなオッサンと二度と話し合いなんかしない!顔も見たくないね!早く俺とネコの部屋に案内してくれ!」
「分かりましたわ。カリナお願いね。」
「はい。モモ様とネコ様はこちらへ。」
モモとネコはカリナに連れて行かれ、部屋にはエリックとアナベルの2人だけになった。
「君は俺がこうなることを知っていたのか?王太子に戻される事を。」
アナベルは長い沈黙の中、口を開いた。
「ええ。こうなるだろうとは思ってましたわ。」
「・・・・・そうか。」
エリックはそれだけ言うと応接室を出て行った。
「はぁ・・・また嫌われてしまいましたわ。」
アナベルは大きなため息を吐いて静かに目を伏せた。




