9-2.
「1人で出来る!」
現在エリックは浴室におり、エリックの前にはエリックの入浴を手伝おうと3人のメイドが泣きそうな顔をしている。
「お願いです殿下!」
「入浴の手伝いをさせてください!」
「でなければ怒られてしまいます!」
「断る!それと殿下と呼ぶな!」
15年前は入浴の手伝いをさせていたが、大人になり平民が板についた現在のエリックにとっては他人に入浴の手伝いをさせるなんて恥ずかしいと感じていた。
「お願いです殿下・・・怒られたくないんです私達。」
メイド達からうるうるとした目で訴えられ内心揺れるエリック。
そしてエリックはため息をつくとシャツを脱いだ。
「ひっ!」
メイドの一人から小さな悲鳴が上がった。
メイドが見たものとはエリックの背中の大小様々な酷い傷跡だった。
メイド達は傷跡を直視したくなくて視線を彷徨わせた。
「出来ないだろ?手伝ったことにするから一人にしてくれ。この背中を安易に人に見られたくない。」
エリックのその言葉にメイドはそそくさと浴室から出て行った。
「はぁ・・・・・。」
しばらくして風呂から上がりタオルで身体を拭くと衣服が置いてある台に手を伸ばしたが・・・。
「俺の服を何処へやった!」
自分の家から持ってきた平民が基本的に着ている木綿のシャツが、シルクのふりふりのフリルの付いたシャツに変わっていた。
もちろんズボンも高級素材にチェンジ。
エリックは自分のシャツとズボンを取り返す為に仕方なくふりふりのシャツに手を通したが、サイズが合わず筋肉でパツパツにシャツが伸びきって予想通り似合わなかった。
むしろ面白くなっていた。
「服を取り戻したら父上に養子を勧めてこんな所すぐに出てってやる!」
その後、なんとか服を取り戻したエリック。
廊下にいた通行人達の笑いを堪えている顔は最悪の思い出となった。
そして服を変えると王様に謁見した。
「何故お前はまだ平民の服を着ている?」
「平民ですので。」
「お前はもう王子だ!平民ではない!」
「平民です。」
「いや、お前が頑なになるのは分かる。お前を追い出して簡単に許してもらおうとしたワシが悪い・・・どうしたらワシを許してくれる?」
「養子を取ってください。」
「何ィ!!?」
王様は椅子から勢い良く腰を上げた。
傍らで二人の話を聞いていた王妃も腰を上げる。
「わたくし達に対してエリックが怒るのも無理はないわ!でも、そんな事を言うんじゃありません!」
「そうだぞエリック!ワシの愚かな判断で15年間もお前を苦しめた!その報復がこれか!?」
「私は怒ってなどいません!あの時、私を平民にした事は正しかったと思っています!あの事がなければ何も知らなず傲慢に他人を虐げる人間になっていたでしょう!そして私は平民として静かに暮らしたいのです!陛下、どうか養子を取ってください!そしてその養子を王太子にしてください!」
王様はエリックの言葉に呆気に取られていたが、次の瞬間には怒りに満ちた顔をになった。
「あの女の入れ知恵か?」
「は?」
「あの女にそう言えと言われたのだろう!」
あの女とはアナベルを指している事がわかりエリックは眉間に皺を寄せる。
「違う!養子は私の意思だ!」
「エリック、無理しなくていいのよ。レーゲンもそうやってあの子に気を使って、その所為で何処かへ消えてしまったわ。今度こそわたくし達は間違えないと誓ったの。」
「王太子妃殿下は関係ありません!私の意思です!」
「あの女に誑かされたのだろう!お前がいるなら養子など必要ないだろ!一旦頭を冷やせ!養子などと言う言葉が出なくなるまで部屋で反省してろ!」
王様の言葉でエリックは騎士により昔使っていた部屋に連れていれて行かれると部屋に閉じ込められた。
「どうすればいい・・・俺の考えが甘かった。」
長期戦になりそうな予感にエリックは頭を抱えた。




