8-2.
「あんなにも愛されて羨ましいですこと。」
アナベルから冷たい視線を向けられるエリック。
反論をしようものならもっと場は酷くなるとエリックは静かに押し黙っていた。
「わたくしなんて皆んなの嫌われ者で悪役で、以前は悪役だった貴方が今は愛されている。人生何が起こるかわかりませんわね。」
アナベルの口から溢れるように嫌味が出てくる。
「つくづく思いますわ。わたくしに婚約破棄を宣言して正解でしたと。」
この馬車にはアナベル、エリック以外にも護衛の騎士にケイとトーマスが2人の隣に座っていた。
そして馬車の中にいる男性陣3人はとても気まずい思いをしていた。
どうやらララがエリックにしたキスはアナベルの触れてはいけない所に触れたみたいで、町からずっとネチネチと攻撃をされていた。
「わたくしの何が足りないのかしら?一生懸命に命をかけてやっているのに何一つ良くならない。エリック様みたいにいっそ木を切って生活すれば何か変わるかしら。」
「(勘弁してくれ。)」
アナベルは止まらない。
「エリック様わたくしに足りないのは何だと思います?やはり可愛げかしら?」
エリックは答えない。
ただ一方的にアナベルがしゃべるだけ。
「こんなわたくしだからエリック様に婚約破棄されたんだわ。」
アナベルがこんな調子で2時間後。
馬車が休憩で止まると、馬車からケイとトーマスが飛び出してきた。
「酸素!酸素をくれーーーっ!!」
「息がァ!交代だ!交代!」
アナベルの嫌味とお小言の空間はそれはそれはとても息苦しかったようで、騎士服が汚れるのも構わず地面に倒れる2人。
馬車からゆっくりと降りてパイプ煙草を吸い始めたエリックも参っていたようで深く煙を吸って吐いた。
「王太子妃殿下が変わったのも俺と弟の・・・いや、俺のせいか。」
少女の時のアナベルをしみじみと思い出すエリック。
「皆様何のんびりしてますの?早くしないといつまでも城に着きませんわよ。」
少しだけの休憩にエリックとケイとトーマスは項垂れた。
そして馬車での護衛を誰も代わる騎士がいなかったのでケイとトーマスは静かに涙を流した。
その後の馬車の中はたまにアナベルの嫌味やお小言はあったが、移動中のほとんどは静かというか無言だった為馬車の中は常に重い空気が張り詰めていた。
1日目に到着した町の宿でエリックはケイとトーマスから
「エリック殿は昔どれ程酷い事を王太子妃殿下にしたんですか!?」
「あのお小言は聞いてられません!!」
と、切羽詰まった表情で言われ、改めて昔の自分のクズ具合に頭を掻きむしるエリック。
そんな感じで少女時代のアナベルを冷遇したツケを少しずつ払わされていた。
嫌味やお小言ぐらい仕方ないと移動中の馬車でエリックは静かに耐えるしかなかった。
「わたくしも平民になりたかったですわ。そうすれば自由に恋愛ができたのに。エリック様みたいに。」
「・・・・・・。」
エリックは何の反応もせずただ静かに黙って座っていた。
アナベルが急いでる事もあり馬で20日かかる所を15日で城に到着する事ができた。
静かに馬車を降りたエリックは城を見上げる。
「来てしまったか。」
久しぶりの実家に嬉しいような嬉しくないようなエリックは複雑な思いを抱いた。




