5.廃嫡王子の元婚約者に想う所
「なんて言いましたか?」
再びアナベルの時が動き出す。
若い騎士は2人はお互いの顔を見合い顔を赤くして口をパクパクさせまるでプロポーズのようだと思い興奮していたが、アナベルは違う。
酸いも甘いも(ほぼ酸いを)経験した大人の女性のアナベルは怪訝な顔をしている。
アナベルの貴方は何を言っているんですかという冷たい視線を気にする事なくエリックはずっと真面目な顔のままだ。
「君の事を考えていた………物心つく時から側で王太子妃として学び寄り添い俺を支えようとしていた君を。」
「どういう事ですか。」
アナベルの声のトーンが低くなる。
エリックは目を伏せた。
「王太子の婚約者としてとても優秀だった君に対して俺はずっと不誠実で最低で最悪な奴だった。常に君を傷付ける言動を取って傷付けていた。そして自分が平民になって傷付けられる立場になった時やった解ったんだ。」
エリックは真っ直ぐにアナベルを見つめた。
「人から与えてられる悪意とはこんなに辛く苦しい物だったんだと………。」
アナベルはキュッと唇を噛んだ。
「平民になり悪意ある言葉は刃だという事に気付いた。胸に刺さった言葉の刃の傷は数日で消える物もあったが何年も残る物もあった。それ等を思い出すと夜中に目が覚めて眠れない時もあった………。」
エリックはそのクールな対応から、一部の町民からの悪意に対して何も気にしていないように感じられるが、ちゃんと傷付く所は人並みに心が傷付いていた。
「そしてその悪意ある言葉の刃をたくさんきみに言った自分が憎くて仕方なかった。言葉だけじゃなく行動でも君をたくさん傷付けて苦しめていた自分を憎くて殺したい程に君に対する罪悪感でいっぱいだった。」
「…………。」
「我儘だった俺は婚約者を自分で選びたかったという理由だけで君を冷遇していたんだ。そして平民になりそんな俺に寄り添おうと努力する君をもっと大切にすれば良かったと後悔したよ。」
「………その言葉、15年前に聞きたかったですわ。」
「15年前に、婚約破棄なんぞバカな言葉を吐く前に、気付いて伝えればよかったと何度も思った。」
「一部の町民からの扱いに傷付くよりも、わたくしに対する罪悪感が勝っていたからここでの生活に耐えられたという事かしら?」
「そうだ。だから君に謝っても謝りきれないし死を持って償っても構わないと思っている。」
「ハッ、何ソレ。」




